「すし店」倒産増と「回転ずし」の微妙な関係 出前で稼げず家族客を取り込めない小規模店の未来

すし店の倒産が、コロナ禍の収まりと同時に増えている。一方、大手回転すしチェーンの客足は回復している。東京商工リサーチが2024年2月8日に発表した調査結果には、一見矛盾するような動向が見て取れた。

何が起きているのか。J-CASTニュースBiz編集部は、回転寿司評論家・米川伸生氏に詳しい話を聞いた。

「お父さんが一人で行く」スタイル

先述の東京商工リサーチの調査結果によれば、1000万円以上を負債するすし店の倒産が24年1月に5件あった。月間5件以上の倒産は、20年8月以来3年5か月ぶりだ。

東京商工リサーチによると、客入りがコロナ禍以前の状況に戻らない飲食店は少なくない。大手チェーン店との競合や、物価や光熱費などの高騰で、すし店の経営維持が難しくなっていると指摘。なお、すし店の倒産は、個人経営や小・零細規模が大半を占めると説明する。

米川氏は2月12日、すし店について「新規客の獲得が極めて困難にある」との見解を示す。元々、常連客と出前によって支えられたビジネスモデルだった。「店には家族で訪れることは少なく、お父さんが一人で行く、というスタイルの店が圧倒的に多かったように思います」。

しかし、若者が都会に就職するなどの理由で、地方のすし店では新規客の流入が減ってしまった。そのため、高齢の常連客に支えられるケースが多くなったという。

すし店では「出前」でもうけていた部分も大きかったと、米川氏は述べる。しかし、宅配すし店やスーパー、回転ずし店が折り込みチラシなどでアピールする戦略とは対照的に、資本がない小規模すし店は広告宣伝を打てなかったとも説明した。

「家族ですし=回転ずし」になった

すし店に行く場合は個人、出前を呼ぶ場合は家族での利用が定番だった中、2000年代に回転ずしの「ボックス席」が家族団らんの場所として機能するようになったと米川氏。

「『家族ですしを食べに行くときは回転ずし』という文化が醸成され、町のすし店を利用していたお父さんも家族と共に回転ずし店に移ってしまった」

これが、個人経営の小さな「回らないすし店」には打撃になったようだ。

今後、すし店が経営を続けるためには、「これまでの待ちの姿勢を撤廃し、積極的に認知度を上げていくこと」を米山氏は勧める。SNSを通じた広報戦略や店頭のポスター掲示など、どんな店なのか知ってもらうことが必須だとする。

「潜在的に回転ずしに飽きている客を取り込みにいくことが一番の近道なので、彼らのニーズを知ること。それに向けた施策を打てれば、まだまだ再生できると思います」

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