鹿沼「ニューサンピア」休業へ 5月末、事実上の撤退 新型コロナ打撃、赤字解消せず

5月末で全館休業するニューサンピア栃木

 栃木県鹿沼市内最大規模の宿泊施設「ニューサンピア栃木」(栃窪)は14日までに、5月末での全館休業を公表した。新型コロナウイルス禍以後の赤字を解消できず、主要設備の更新時期が迫っていた。運営する食品加工卸売業「KB(ケービー)食品」(鹿児島市)による事実上の撤退となり、同社は現状の従業員の雇用を前提に土地・建物の売却を検討している。

 1983年、主に厚生年金加入者のための国有の福祉施設「栃木厚生年金休暇センター」(ウェルサンピア栃木)として開業。2009年、行政改革の整理売却でKB食品が落札し、従業員や設備などを、ほぼそのまま引き継いだ。

 宿泊室50室(収容人数計163人)のほか、温泉や宴会場、会議室、テニスコート、体育館、プールなどを備え、企業の懇親会やスポーツ団体の合宿など、県外の団体客の受け入れ先として重宝されてきた。

 施設全体で年間約30万人の利用があったが、コロナ禍で宴会を控える動きが加速し、客足は半減。20年以降赤字が続き、5類移行後も回復しなかった。昨年、施設の老朽化で敷地内の老人ホームを廃止した。

 同社は休業の理由を「施設修繕にかかる費用と収益の見込みなどを考慮した経営的な判断」と説明。パートタイマーを含めて従業員計44人を抱えており、地元住民も多く働く。井村和彦(いむらかずひこ)総支配人(63)は「従業員には1月末に『このままだと解雇となる』と伝えた。買い手が現れるのを待つしかない」と語った。

 同ホテルは市内七つのホテルの収容定員のうち4分の1を占め、休業は市の観光面にとっても痛手となる。市観光交流課は「イベントや会議の会場としても多くの市民が使った老舗。このままでは惜しい施設をなくすことになる」と話している。

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