応援割「遅らせる」で波紋 馳知事、石川は避難者優先 観光関係者、賛否

 石川県の馳浩知事は14日、能登半島地震の被災地に対する国の観光支援策「北陸応援割」の開始時期を富山、福井両県より遅らせる考えを明らかにした。補助対象となる宿泊施設のうち、金沢以南のホテル・旅館に依然として数多くの2次避難者が身を寄せており、滞在期間の延長を各施設に要請している中、三県で足並みをそろえるのは不可能と判断した。知事の考えに理解を示す事業者がみられた一方、観光需要の回復に期待していた経営者からは「断固反対」と憤りの声も上がり、県内に波紋が広がった。

 北陸応援割は北陸三県と新潟県を対象に1泊2万円を上限に旅行代金の50%を割り引く。政府は実施時期を3~4月としており、状況に応じて地域ごとに対応する。

 馳知事は14日の記者会見で開始時期を問われ「石川は被害が大きい。富山県、福井県と一緒に始めたかったが、それはできない。両県に先に進めてほしいと伝えた」と述べた。

 馳知事は2次避難者に対し、今後の住まいに関する意向調査を始めているとし「ホテル・旅館経営者とも意見交換している。しかるべき時期に応援割をスタートしたい」と述べた。

 こうした知事の発言に、山代、片山津、山中温泉でつくる加賀温泉郷協議会の和田守弘会長は「延期は混乱を生むだけ。断固反対だ」と異議を唱える。

 和田会長が経営する旅館にも「北陸応援割はいつからか」との問い合わせが毎日数十件あるとし、「全国から北陸に行って応援してあげようという空気ができているのに、ブレーキを踏むのはあり得ない」と批判した。

 県によると、14日時点の2次避難者数は242施設で5209人。これに対し、仮設住宅の着工は2227戸にとどまり、避難の長期化は避けられない。宿泊施設側には3月16日の北陸新幹線延伸を見据え、単価が高い旅行客を受け入れたいとの思いがあり、加賀市の宮元陸市長は2次避難を受け入れた宿泊施設に触れ「苦労した人が報われない知事の判断はおかしい」と対応を疑問視した。

 一方、粟津温泉観光協会(小松市)の桂木実会長は「ぜひ開始時期を延ばしてほしい」と歓迎した。同協会加盟の3旅館は避難者の受け入れを7月中旬まで延長する。「被災者の行き先が見つかるにはまだ時間がかかる。今は早い」と指摘した。金沢市内のホテル経営者は「開始が遅れた分だけ期限を延ばしてほしい」と求めた。

  ●2次避難者は感謝

 南加賀の宿泊施設に避難する人からは、知事の判断に感謝が聞かれた。輪島市輪島崎町の宮木みえ子さん(74)は「滞在期限が延長となるならぜひいたい」と語った。

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