[社説]知事所信表明 自衛隊強化に向き合え

 政府の南西防衛強化に懸念と不安を示す一方で、県の対応策は見えてこなかった。

 玉城デニー知事が、県議会で2024年度県政運営の所信を表明した。

 就任以来6度目で、昨年に続き、県内への自衛隊配備や大規模な日米共同演習の実施を取り上げ、「抑止力の強化がかえって地域の緊張を高める可能性がある」と懸念を示した。

 さらに「沖縄が攻撃目標になることは決してあってはならない」と、地元で感じる不安を代弁した。

 ただ対応は、「自衛隊配備は米軍基地の整理縮小と併せて検討することなどを政府に求めた。引き続き軍転協と連携する」にとどまった。

 政府は与那国、宮古に次いで昨年3月に陸自石垣駐屯地を開設した。動きは緩むどころか、加速している。

 第15旅団の師団への改編のほか、勝連分屯地にミサイル連隊本部、北大東島に移動式レーダー、うるま市のゴルフ場跡地に訓練場などを新たに配備、整備する計画だ。反対の声が広がる地域もある。

 知事はこうした具体的な計画についての是非を言及しなかった。一つ一つを検証せず、全体を包含するように「米軍基地の整理縮小と併せて検討してほしい」と求める対応や姿勢は鈍く、弱いと言わざるを得ない。

 政府が総合的な防衛体制強化で公共インフラを整備する「特定利用空港・港湾」でも予算計上方法や整備後の運用などに「県民に強い不安の声がある」と強調する一方で、「しっかり説明を求める」との対応を示すだけだった。

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 玉城知事は所信表明で、昨年12月の辺野古新基地建設に関する国の代執行について「県の処分権限を奪い、自主性、自立性を侵害した」と強く非難した。

 沖縄の過重な基地負担を「永久化、固定化しようとしている」とも訴えた。そして民意に応えるため、普天間飛行場の一日も早い危険性の除去や、新基地建設阻止の実現に「全身全霊で取り組む」と決意を見せた。

 米軍基地から流出した可能性が高い有機フッ素化合物PFAS(ピーファス)による水道水汚染では「県民の健康に関わる極めて重要な問題」と認識を示した。その上で、県の基地内立ち入り調査、国と米軍による原因究明と対策の実施を促している。

 米軍基地問題については、県の態度を明確に示し、具体的な対応を求めている。

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 いくつもの課題が山積する県政で、歴代知事が「仕事の大部分」と語るように米軍基地への対応は大きなウエートを占めてきた。

 それは、県民の命と暮らしに関わるからだ。

 であれば、自衛隊問題も同じではないか。

 地域に住む自衛隊員が増えたり、これまでなかった訓練が始まったりすれば、地方自治や生活に影響が出てくるのは当然である。

 玉城知事が専守防衛の範囲で自衛隊を容認する立場であったとしても、それぞれの計画に向き合い、態度を明確に示す必要がある。

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