ルネサス、米アルティウムを約9000億円で買収へ 半導体ソフトに軸足

Miho Uranaka Nobuhiro Kubo

[東京 15日 ロイター] - ルネサスエレクトロニクスは15日、米カリフォルニア州に本社を置く半導体ソフトウエア開発のアルティウムを約8879億円で買収すると発表した。自動車などの分野でデジタル化が進む中、重要度の増すソフトウエアの拡充に軸足を置く。

アルティウムはクラウド上でプリント基板の設計ソフトを提供する。柴田英利社長は「どんなソリューションが使いやすいのか、半導体ユーザーの視点をより強く取り入れたプレイヤーが最終的に選好される。それをいち早くやっていく」と買収の意義を説明した。

ルネサスはこれまで米インターシルや英ダイアログ・セミコンダクターなど半導体企業を買収して品ぞろえを充実させてきたが、ソフトウエアなどの分野を拡充したい考え。柴田社長は、これまでの買収とは性質が異なる「重要なファーストステップ」とした。

アルティウムの2023年6月期売上高は、日本円で約396億円、営業利益は約130億円だった。

買収価格は、1株当たり68.50豪ドルで、14日のアルティウム株の終値に対して約34%のプレミアムとなっている。企業価値は88億豪ドルと試算。柴田氏は会見で、20%前後の高い成長率、高い利益率を維持していることが、今回のバリエーションを構成する一つの大きな要因と説明した。

買収資金は主要取引銀行から新たに調達する予定の借入金と手元資金で充当することを想定しており、エクイティファイナンスは考えていない。EBITDA(利払い・税引き・償却前利益)に対する純有利子負債額の倍率は買収後には2.1倍まで拡大するが、柴田氏は、今後2―3年前後で1倍以下に抑えることができるとの考えを示した。

電子機器やシステムの設計は複数の段階に多くの関係者が携わるなど複雑化している。両社が連携して効率的かつ短い開発サイクルで設計できる環境を提供する狙いがある。

コスト面と収益面でのシナジーを見込んでいるが、最初は投資を加速しアルティウムの売り上げを伸ばしたい考えで、4―5年後にトップラインを大きく伸ばす想定となっている。

アルティウムはオーストラリアで創業し、同国で上場している。豪裁判所や規制当局の承認などを経て、2024年下半期に買収を完了する予定。

柴田氏は、1000―2000億円強のM&A(合併・買収)については今後も検討すると述べたが、5000億円超のM&Aは「今のところは全く考えていない」とした。

ルネサスは8日、約19年ぶりの復配を発表。会見した柴田社長は今後の配当方針について、株主還元とM&Aの両にらみで進めていく意向を示していた。

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