THE SUPER FRUITと世が世なら!!!、成長した姿でまた揃う日まで 情熱の火花散らしたラスト2マン振り返る

つばさレコーズの男子部門・つばさ男子プロダクションから誕生したグループ、THE SUPER FRUIT(通称:スパフル)と世が世なら!!!(通称:世が世)。2021年に結成して以来、良きライバルとして切磋琢磨してきた2組は、2023年12月20日に1stアルバムを同時リリース。今年1月、“一旦最後”となるツーマンライブ『お別れラスト2MAN SHOW~僕らの24冬 スパ世が成長物語一旦さよなら~』を大阪と東京で開催した。リアルサウンドでは、2024年1月13日に大阪・ゴリラホールにて行われた公演に続き、1月27日に恵比寿ザ・ガーデンホールにて行われた東京公演の模様をお届けする。

トップバッターを務めたのは、中山清太郎がミュージカル『テニスの王子様 4thシーズン 青学vs 立海』に出演中のため、5人(大谷篤行・橋爪優真・添田陵輔・笠松正斗・内藤五胤)での出演となった世が世なら!!!。赤い照明と重低音の効いたロックなSEが興奮を煽る中、登場するやいなや「東京、調子どうよ!?」と吼えるように呼びかけたのは、最年長のムードメーカー内藤。彼らの気迫に負けじと、ifif(世が世なら!!!のファン)も熱いメンバーコールで迎え入れた。早くも観客との一体感を見せつけた世が世が、この日の1曲目に選んだのは「メダチタガリアン」。ド派手な紫の新衣装に身を包みながら、コミカルかつキャッチーな振付を全身全霊で踊るメンバーの姿に触発されたのか、はたまた少人数でステージに臨む彼らを勇気づけたいという健気なファン心からか、〈ワ・レ・ワ・レ・ハ メダチタガリアン〉という定番のコール&レスポンスもいつも以上の熱量と声量で響く。大声担当の橋爪が「みんな、まだまだこんなもんじゃねぇよな!?」とシャウトすると、豪快なギターリフとボーカル添田の歌声に誘われ、「ウオー!サオー!」へ。“下剋上”を掲げる世が世らしいロックチューンが続く一方で、「Mo-Mo-No-Rock」では、ヒラヒラと桜が舞うような手振りや繊細な落ちメロにスパフルとの別れが重なる場面もあり、勢い頼りではないライブ展開が彼らの進化を伝えていた。

貪欲に笑いを追求したMCも、世が世の魅力の一つだ。自己紹介を兼ねた一度目のMCでは、「ツーマンなので、いつもの2万倍の声をください!」と煽った“欲しがり”の大谷が、スパフル田倉暉久の自己紹介をマネしたり、“滑舌の悪さもご愛嬌”という笠松のコール中に客電が落とされ、内藤が「みんなの声の大きさで電気がちっちゃくなるの!」と喝を入れたりと、小技を効かせたMCで、ififはもちろん、フルファミ(THE SUPER FRUITのファン)や初見の観客さえも巻き込んで笑顔を生み出していく。だが、彼らのキャッチコピーは“真面目型おふざけ集団”。勇ましく歌い上げたデビューシングル曲「鼓動のFighters」、躍動感溢れるフォーメーションダンスで魅せた新曲「EGUI」が続けば、その真剣な眼差しに観客は釘付けとなった。また、いつもは中山が歌い出しを担当しているミディアムバラード「いとしき世界」では、添田と橋爪を筆頭に5人が丁寧に歌い繋ぎ、温かな雰囲気が場内に充満。1stアルバム収録曲「たりないぶんはキスをして」も、セットリストに新たな彩りを加えた。いつもは友達のような距離感でififに接している世が世だからこそ、不意に〈もう離さないからね〉とはにかんだ彼らの甘いギャップに、心を奪われた人も多いだろう。

長めのMCでは、中山が出演している舞台の話題から派生して、即興コント「テニス大会」が始まった。橋爪VS笠松のエアテニスバトルをレフェリー添田とボールボーイ大谷がサポートし、その試合の模様をTV越しに観ているというカオスな設定だ。しかも、内藤の無茶ぶりでチャンネルは次々に切り替わり、「お笑い番組」「アニメ番組」といったお題でクセの強いコントが繰り広げられる。そんな中、橋爪が「続いてはこちらのチャンネルをご覧ください」と紹介し、スパフルとの日替わり曲交換企画として「サマー☆★げっちゅー」を披露。小田惟真の歌い出しを橋爪が担うという歌割に“ゆましん”(橋爪・小田コンビ)ファンがざわつく一幕もありつつ、筋肉自慢の添田がマッチョポーズをしたり、客席を半分に分けてコーレス対決をしたりと、世が世ならではのアレンジでヒートアップ! メンバー達はハジけるように客席に降り立ち、「Happy Birthday!!!」を歌いながら観客とハイタッチを交わすと、1stアルバムリード曲の「俺ならやれそうじゃん?」でエネルギッシュに畳みかけ、“2024年こそ下剋上をする”という覚悟を込めた「下剋上、はじめました。」で締め括った。

後攻のTHE SUPER FRUIT(阿部隼大、小田惟真、鈴木志音、田倉暉久、星野晴海、堀内結流、松本勇輝)は、香り立つような華やかなSEと、赤で統一された新衣装を纏い、フラッグをはためかせながらステージに登場。1曲目に備えてマイクを握る小田(メンバーカラーのアップル担当)・松本(ピーチ担当)・田倉(オレンジ担当)の個性豊かな呼びかけも、まるでテーマパークのショーを見ているようだ。そして、スパフルにとって初のオリジナル曲「Seven Fruits」でライブスタート。洗練されたフォーメーションダンスと、フルファミとの息の合ったコール&レスポンスが、身長も雰囲気もバラバラな7人なのに、間違いなくこの7人で1つであることを実感させた。続いて、鈴木(グレープ担当)が「もっと!いいね!」と陽気に手拍子を煽ったのは、小田・田倉・鈴木がボーカルを務める「パノラマ」。しっかり者の最年少・小田が「僕達の後に続いて、一緒に声出してください!」とリードし、コーレスを楽しんだ後は、くしゃっとした笑顔がキュートな堀内(メロン担当)の決め台詞「大好きだよ!」から「君はリアコ製造機」へ。スパフルの王道サウンドと言えるシンセピアノの軽やかな音色が、声変わりを経て、リリース時よりも幅広い音域を出せるようになったという小田の歌声を際立たせる。田倉のクールな決め台詞「幸せにしてやるよ」も、昨年末に20歳を迎え、少し大人になった彼ならではの説得力が光っていた。

最初のMCでは、最年長の阿部(ココナッツ担当)から順に自己紹介。全力で爆笑を狙いにいく世が世に対して、何気なく言った一言で笑いが起こってしまうのがスパフルの面白いところで、この日も「しゅんしゅんしゅしゅしゅん!」「\阿部隼大!/」という大音量のコーレスで会場の天井に“無事に”ヒビが入ったり、ギャル口調の松本がボソッと言った「それなー」(先輩であるCUBERSの末吉9太郎の台詞)が笑いを誘ったりと絶好調だ。逆に新衣装を紹介するコーナーでは、「ちょっと待ったー!」と威勢よく現れた鈴木が「全身真っ赤で小田惟真って感じだね! そうだよね?」「\そうだよねー!/」とコーレスを煽る場面もあり、ファッションやバラエティに力を入れていきたい! という彼の意気込みが伝わってきた。

前半は、インディーズ時代のアルバム『THE SUPER FRUIT』から3曲を届けたが、MCの後は最新アルバム『青い果実』の新曲が続く。ムーディーなサウンドと阿部の甘い歌声が誘ったのは、〈ふたり最後のさよなら〉というフレーズが“スパ世が”を連想させる「叫べない僕らの」。一夜の魔法のような歌声にとろける「愛の仕組み」では、小田のオーセンティックなラップに惹きつけられ、レトロなメロディが心地よく沁み入る「Juicy Smile」では、星野(レモン担当)が告げた「ハル、ゆまてん(世が世なら!!!の橋爪優真)のこと、好き!」にレモン色の歓声が上がった。松本が「僕達と一緒に、にゃおにゃおしよ!」と呼びかけた「I My Me Meow」もアルバムからの1曲で、「ピース、猫、肉球!」というキャッチーなダンスが会場を1つに。毛づくろいするような動きや、メンバー同士で撫で合う様子など、可愛らしいメンバーの姿を存分に満喫できる仕上がりとなっていた。

長めのMCでは「つば男新春マラソン2024」の話題で盛り上がりつつ、星野が「フルファミとififの絆を試す時です!」と言い放つと、星野が掲げるフラッグに合わせて観客全員でウェーブを作ることに。そのままコーレスを練習し、日替わり曲交換企画として世が世なら!!!の「メダチタガリアン」を披露した。本日二度目の「メダチタガリアン」だったが、〈ワ・レ・ワ・レ・ハ メダチタガリアン〉という堀内の歌声に、観客は世が世の時と同じくらいの声量で応戦!田倉が振付したダンスと笑顔がハジけた新曲「ポップコーンフィーバー」も、ソロダンスパートなど見どころ満載で、春にピッタリのエールソング「サクラフレフレ」と合わせて、終幕へと続く花道を鮮やかに彩った。そんなラストを飾るのは、「2組が別々の道に行っても、ここから成熟してまた会えるように。そして、僕達はアリーナに向けて新しいスタートを切れるように」という願いを込めた、アルバムリード曲「青い果実」。細かなニュアンスを揃えたハイクオリティなダンスと、7人で声を揃えたサビの甘酸っぱいバランスが、スパフルの現在地を表していた。

そして、再び2組がステージに集まり、豪華なフィナーレへ。頑張りすぎた内藤が足を怪我してエンディングに参加できないというハプニングもありながら、“スパ世が”は「また成長して“おかえりツーマン”をやりたい」と希望を語ると、清々しい笑顔を輝かせて、それぞれの道へと歩みを進めたのだった。

(文=斉藤碧)

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