「押してはいけない心のスイッチ」を押して妻にキレられた!食い違いあるある…失言挽回のポイントは「誠意」

夫婦間には「押してはいけないスイッチ」があるという。夫が「よかれ」と思った言動でも、妻にとっては「不用意」で、その瞬間、内なる「スイッチ」が押され、無自覚な夫に向けた怒りから不機嫌になってしまうことがある。そんな時、どう対処すればいいのか。「大人研究」のパイオニアとして知られ、このテーマを取り上げた新刊『押してはいけない 妻のスイッチ』(青春新書プレイブックス)の著者であるコラムニストの石原壮一郎氏がその対応策を伝授する。

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【今回のピンチ】

妻が仕事の愚痴をこぼしている。「そんなに大変なんだったら無理して働かなくていいよ」と慰めたら、「私の仕事を軽く見てるのね!」とキレられた……。

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こちらとしては、夫としての「やさしさ」を示したつもりでした。妻は最近、とても忙しそうです。部署が変わったばかりで、慣れていない仕事をやりつつ、きっと人間関係にも気を使っているに違いありません。

そんな状況を踏まえての「無理して働かなくていいよ」でしたが、押してはいけない妻のスイッチを押してしまったようです。

当たり前ですが、妻は遊び半分で仕事をしているわけではありません。収入を得るという大切な目的だけでなく、仕事のやりがいも社会に参加している喜びも感じているはず。「妻にとっては仕事をしないほうが幸せ」と決めつけるのは、妻の人格や仕事をあまりにもバカにしています。

また、男女の会話で発生する食い違いアルアルですが、そもそも妻は「大変だね」と言って欲しかった可能性が大。たぶん「こうすればいい」というアドバイスを求めていたわけではありません。

ここで最悪なのは、妻に真意が伝わっていないと焦って、「働き続けるメリットとデメリット」「仕事を辞めるメリットとデメリット」の比較を始めたりすること。理詰めの説得は間違いなく火に油を注ぎます。「なぜそういう意味に取るのか」と聞くのも、事態を悪化させることにしかならないでしょう。

とはいえ、唐突に「愛してるよ」とか「いつもキレイだね」と言ったりしたら、呆れられるか気持ち悪がられるかのどちらか。すでにキレている妻が、即座に機嫌を直してくれる魔法の言葉は、残念ながらありません。

ここは「ごめん。決してそうじゃないよ」と、謝罪とともにきちんと否定した上で、いったん引き下がりましょう。妻も、こっちが本気で「軽く見てる」とは思っていないはず。八つ当たりや「売り言葉に買い言葉」的な状況で飛び出した強い言葉は、スルーするに限ります。

「コーヒーでも淹(い)れようか」でもいいし、いきなり「あっ、そうだ」と立ち上がって、コンビニで妻が好きなスイーツを買ってくるのもいいでしょう。インターバルを置くことでお互いに冷静さを取り戻しつつ、悪かったという気持ちを行動で示します。

そのタイミングで「いつも仕事を頑張っているキミを尊敬している」といった言葉も伝えておきたいところ。言いづらいとは思いますが、言いづらいことを頑張って言うのが、失言をしてしまった側の責任の取り方であり、最も分かりやすい誠意の伝え方です。

そういえば2月16日に、まさに『押してはいけない 妻のスイッチ』という本が出るという噂を小耳にはさみました。著書は石原壮一郎……あっ、私ですね。末永く夫婦円満であるための必読書。日々スイッチを押しまくってくる夫へのプレゼントにもどうぞ!

(コラムニスト・石原 壮一郎)

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