【岡山理科大学】宮崎・都農町の陸上養殖、成果報告会で「世界初の成功」発表 ――生残率94%、成長率3倍の「タマカイ」を量産化・ビジネス化へ

成長したタマカイを前に笑顔の(左から)小林担当部長、坂田町長、南副学長、大友副支店長

宮崎県都農町で、岡山理科大学と同町、NTT東日本・西日本が連携して進めている好適環境水®によるハタ科の「タマカイ」と交雑種「クエタマ」の陸上養殖がスタートして10カ月余が経過した2月13日、プロジェクトの中間成果報告会が同町役場で開かれました。完全閉鎖循環式陸上養殖で両魚種の養殖が成功したのは「世界初」とし、今後は特に高い生残率(約94.2%)と、海面養殖に比べて成長速度約3倍という高成長率が確認できたタマカイに絞って、量産化・ビジネス化に取り組んでいく方針が示されました。

同町での陸上養殖は、「水産業夢未来プロジェクト」として、試験養殖施設(7.4トン水槽2基)に、成長すると最大3メートルにもなる「タマカイ」の体長7~8センチの稚魚224匹と、体長35センチほどにまで育ったクエとタマカイの交雑種「クエタマ」53匹を収容して、2023年4月から始まりました。

この日の報告会に出席したのは都農町の坂田広亮町長、岡山理科大学の南善子副学長、津村誠一招聘教授、NTT東日本ビジネス開発本部の小林弘高担当部長、NTT西日本宮崎支店の大友健一郎副支店長らで、陸上養殖を研究する理大工学部の山本俊政准教授はオンライン出席。報道関係者や同町議会議員が参加しました。

報告会では坂田町長に続いて、南副学長が「2022年12月に本学と都農町、NTT東日本・西日本と4者で多分野連携に関する協定を締結して以来、進めてきたプロジェクトで非常に大きな成果が得られたことをうれしく思う。今後も都農町のさらなる活性化を進めていくためにしっかりと取り組んでいきたい」とあいさつ。続いて、小林担当部長は「これからの未来につながるきっかけになる日だと思う」と成果を強調しました。

成果報告では、まず坂田町長が「今回の成果をもとに水産業夢未来プロジェクトの推進と実現に向けて、都農町漁協、地域水産関係者と連携を図り、タマカイの本格的な量産体制を検討していく」と説明。実際に飼育を担当している「つの水産振興・加工品開発協議会」の三輪将也さんは「水槽内の掃除、水温、水質の調整も機械化されていて人の手がかからないので、素人でも日々の点検さえ怠らなければ、簡単に飼育できると感じた。特に重要なのは生き物への興味・関心、細かい変化や小さな違和感に気づける感性だと思う」と述べました。

山本准教授は「クエタマの生残率は88.7%、平均魚体重が2,852グラム。これに対してタマカイは生残率94.2%、平均体重1,149グラムと成長が非常にいい。タマカイは海面養殖との成長比較で約3倍という驚くべき結果だった」とし、「ICTを活用して遠隔指導させていただいたことで、トラブルの未然防止につながったことも大きい」と技術的な成果を指摘しました。

今回の陸上養殖をICTで支えたNTT東日本は、「養殖経験のない飼育員でも現地で不安なく養殖作業に取り組めるように、魚の生育に対して影響を与える水質項目等の環境状況・魚の生育状況をデータ化・見える化して管理することや、岡山理科大学から的確な遠隔指導を受けるようにしたことで、手技・ノウハウを積み上げながら過去に事例がない高いレベルの養殖を実施することができた」としています。

報告会終了後の試食会では、タマカイの刺身とすしがふるまわれ、試食した報道関係者らからは「しっかりとした食感があって食べ応えがある」「コリコリしていて、かめばかむほどうま味が出てくる」との声が聞かれました。

今回の試験養殖施設はプロジェクトの第1段階であり、第2段階(下図の「量産体制①」)は40トン水槽規模での養殖を計画・検討しています。順次、生産規模を広げていき、将来の本格生産に向けて、ステップアップしていくことをめざします。

「本格的な量産体制を検討していく」と語る坂田町長
「町のさらなる発展に向けてしっかり取り組む」とあいさつする南副学長
大勢の報道関係者や町議会議員の皆さんが集まった中間成果報告会
飼育に取り組んできた感想を述べる三輪さん
タマカイを試食する町議会議員の皆さん
地元の報道関係者の皆さんにも試食していただきました
7.4トン水槽2基が並ぶ試験養殖施設
試験養殖施設のタマカイ。最大で体長45センチ、1800グラムにまで成長しています

岡山理科大学

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