元レスキュー隊員として「助かる命を助けるために」をテーマに、防災YouTubeチャンネル「RESCUE HOUSE」を運営するタイチョー氏。本連載では、同氏の著書『消防レスキュー隊員が教える だれでもできる防災事典』(2022年刊行、KADOKAWA)より一部を抜粋し、自分や大切な人の命を守る知識やテクニックを紹介します。今回解説するのは「災害が起きたとき、だれもが逃げ遅れる理由」。「いざ、そのとき」のあらゆる災害から命を守るために、知っておきましょう。
運動神経が良くても、災害に気づいていても「逃げ遅れる」ワケ
災害から逃げ遅れる理由は、「災害に気づいていないから」「運動神経がよくないから」ではありません。
「自分は大丈夫」「まだ大丈夫」といったように、異常なことが起こった際に心を落ち着かせようとする安定機能(正常性バイアス)が働いたり、突然の出来事にショックを受け、何もできない状態(凍りつき症候群)になったりすることが理由です。
緊急時でも冷静に判断して行動できるように普段から訓練することが大切です。
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【参考】落ち着いて行動できる人は10人中1人
予期せぬ災害にあったとき、次の3つの行動をとる人がいるとする研究結果があります。
●落ち着いて行動できる人…10~15%
●我を失って泣き叫ぶ人…15%以下
●ショックでぼう然となる人…70~75%
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消防レスキューがやっている訓練方法
災害が発生したときに冷静に行動できるように、普段からできる訓練方法を紹介します。
①だれかの「大丈夫」は信じないこと。
⇒自分の違和感に敏感になり、安全を自分の目と災害のプロ(ニュースや消防士など)の目で確認できるまでは、安全な場所に逃げる癖をつけることが大切です。
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【参考】他人の行動に影響を受けない!
災害時には周囲の様子をうかがって避難が遅れ、他人が間違った行動をしていることに気づかず、安全を確認しないまま同じ行動をとってしまう危険があります。自分の目で安全を確認する意識を持つことが大切です。
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②防災イベントや防災センターに行ったり消防訓練に参加したりして、危機管理能力をあげること。
⇒過去に起きた大災害の被害を知り、地震体験や煙の恐怖体験などを通じて、被災したことがなくても災害の危険を知ることで、正常性バイアスをコントロールできるようになります。
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【ワンポイント】助かる命を助けるために…
「あれ、いつもと違う?」と感じたら、安全を確かめつつ、避難行動をとる。
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タイチョー
株式会社VITA 代表取締役
元大阪市消防局職員/防災アドバイザー
元レスキュー隊員として「助かる命を助けるために」をテーマに、防災YouTubeチャンネル「RESCUE HOUSE」を運営。災害現場のリアルな声とともに、災害大国ニッポンならではの「気づき」を日々発信している。YouTube登録者29.5万人(2024年2月時点)。