アラカン世代「いまの住まいが広すぎて…」子ども独立&定年退職後の〈住み替え問題〉をどうする?【FPが解説】

50代半ばになれば、子どもたちも独立し、夫婦2人の生活に戻ったという方も多いのではないでしょうか。その後は60歳の定年退職のタイミングで、一度環境をリセットし、より暮らしやすい形へと住み替えを検討する方も増えています。ここでは、アラカン世代の住み替えのタイミングや費用について見ていきましょう。FP資格も持つ公認会計士・税理士の岸田康雄氏が解説します。

定年退職のタイミングで「住み替え」を検討する人が急増

生徒:先生、うちも子どもたちも大学進学や就職で家を離れ、基本、夫婦2人の生活に戻りました。そうしたら、いまの家は広すぎて…。

先生:定年を機会に、一度住み替えを検討したいという方は増えていますよ。

生徒:うちと同じような方々が多いのですね!

先生:現在の住まいを〈終の棲家〉と考えている人は、2人に1人くらいでしょうか。生活環境のダウンサイジングの必要性を感じ、いまの住まいから、コンパクトな住まいへ住み替える、もしくは、老人ホームなどに住み替える可能性があると考えるシニア世代が多いようです。

生徒:みなさん、住み替えを決断するタイミングはいつごろなのでしょう?

先生:アラカン世代よりさらに年齢が上の高齢者の場合は、子どもの独立がきっかけになることが多いようです。同居していた子どもが就職や結婚で家を出て夫婦2人暮らしになると、広い住空間が不要になります。そのため、さらにコンパクトで管理がしやすい住まい、コストパフォーマンスのよい住まいへの住み替えをする人が増えるのです。長年住んでいた家が老朽化し、快適に暮らせなくなったことを理由に住み替えを検討する人も少なくありません。

生徒:高齢になると体力が衰えますから、買い物や通院などの移動が億劫ですよね。郊外の広い一軒家よりも、都心部のマンションに住むほうがよさそうですね?

先生:そのように考える方も多いですが、故郷へのUターン、海外へ移住する方もたくさんいらっしゃいますよ。現役時代は通勤に便利な場所に暮らしていても、定年退職してこれまでのような通勤形態でなくなると、住むエリアの選択肢が広がります。

生徒:いろいろな考え方がありますね!

住み替えするなら…なにから着手すべき?

生徒:住み替えを決めたら、まずなにから着手すべきでしょうか?

先生:住み替え先のエリアを決め、地元の不動産業者に相談しながら物件を探します。海外移住を検討している場合は、インターネットで情報を集めるのもよいですが、エリア内のウィークリーマンションなどに1週間程度滞在して、住み替え後の生活を疑似体験してみるのがお勧めですよ。

生徒:私はハワイに住んでみたいなぁ…!

先生:次に引っ越し準備ですが、新しい住まいをコンパクトにするなら、いまの家財道具をそのまま持ち込んでも収まらないかもしれませんね。引っ越しまでの間に、少しずつ不用品を整理しておきましょう。

生徒:ヤフオクやメルカリで売るのもアリですね。

先生:そして重要なのが「現在の住まいをどうするのか」という点です。売却して住み替えの費用や老後資金に充てるのか、人に貸すのか、子どもや親族に譲渡するのか…。さまざまな選択肢がありますよ。

住み替えに伴う「費用面」の注意点

生徒:住み替えの費用面の注意点を教えてください。

先生:住み替えには、新しい住まいを賃借する方法と、購入する方法が考えられますが、高齢になってから家を借りるのは大変です。そのため、購入するケースがほとんどになると思います。マンションか、戸建てか、あるいは新築か中古かなど、不動産の種類によって費用は大きく異なりますが、東京都の都心部だと中古マンションでも1億円くらいしますし、ハワイになると10億円くらいになるでしょうね…。

生徒:なかなかの金額ですね。

先生:そうなると、現在の住まいを売却したお金で、新たな住まいを購入することになります。先に不動産業者に売却額を査定してもらい、査定額の範囲内で新たな住まいを探すようにするとよいでしょう。

生徒:それ以外にかかってくる費用はありますか?

先生:不動産業者の仲介手数料が大きいですね。売買の場合は、売買代金の3%プラス6万円プラス消費税です。それに加えて、国内の不動産であれば、印紙税、登録免許税、不動産取得税を納めなければなりません。あとは、引越し費用でしょう。

生徒:わかりました! 私も老後の住み替え先を、今からしっかり探したいと思います。

岸田 康雄
公認会計士/税理士/行政書士/宅地建物取引士/中小企業診断士/1級ファイナンシャル・プランニング技能士/国際公認投資アナリスト(日本証券アナリスト協会認定)

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