「もう1度、結婚しようかなぁ?」…58歳女性、オトナ再婚にまつわる「年金」「相続」の注意点【FPが解説】

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人生100年時代、シニア世代の再婚が増えています。しかし、若い世代の結婚と異なり、注意すべきポイントがあるのです。FP資格も持つ公認会計士・税理士の岸田康雄氏が解説します。

増加するシニア再婚、女性側の注意点とは?

55歳で夫を亡くして3年。子どももなく、生涯「おひとりさま」を覚悟していましたが、最近、再婚したい方ができました。シニアになってからの再婚の注意点を教えてください。

58歳パート・女性(神奈川県・厚木市)

厚生労働省によれば、結婚した夫婦の4組に1組は再婚で、とくに近年はシニア層の再婚件数が増えています。世代別の再婚件数を見ると、50代以上の比率は夫が約3割、妻が約2割に上ります。

[図表1]50代以上の再婚者の割合 (出所)厚生労働省「令和4年 人口動態統計」

しかし一方で、注意点もあります。シニア+再婚となると、年金や相続についてもよく考えておく必要があるのです。

年金・医療保険・介護についての確認事項

年代にかかわらず、結婚前のお相手の財産の状況のチェックは必須です。貯蓄・収入・借金・生命保険の加入状況・自宅保有の有無等について、しっかり確認しておくことが、のちのちのトラブル予防に有益です。

◆再婚相手の年金加入状況をチェック…厚生年金? 国民年金?

プラス、シニアの場合は年金の確認も重要です。国民年金と厚生年金では大違いですし、厚生年金も現役時代の収入で額が変わってきます。

お相手がすでに公的年金を受け取っているなら、受給額を直接聞くしかありません。受給開始前なら「ねんきん定期便」を見せてもらい、おおよその金額を把握しましょう。

また、夫と死別して遺族厚生年金を受け取っている女性は、再婚時に注意が必要です。毎月5万~10万円程度を受給している遺族厚生年金も、再婚すれば受給権が消滅するからです。

さらに、40~65歳なら、中高齢寡婦加算として毎月5万円が上乗せされていますが、これも受給できなくなります。

ほかにも、夫が厚生年金に加入しており、女性が65歳になるまでに再婚すれば、夫の老齢厚生年金に加給年金が上乗せされる可能性があります。加給年金は、厚生年金に加入していた人に、65歳未満の配偶者がいれば、年間約40万円を加算する制度です。

◆前妻との年金分割…ある? ない?

再婚相手が、前配偶者と離別している場合、年金分割をしているかどうかの確認も行います。

年金分割とは、婚姻期間の厚生年金を離婚後に夫婦で分け合う制度で、一般的には夫が妻に渡すことが多く、金額としては平均月3万円程度です。この額の分、離婚した夫の年金の受給額は減ることになります。その一方で、年金分割を受けていた妻は、ほかの男性と再婚しても受け取ることができます。

[図表2]年金分割の件数と分割による年金減少額

◆会社員男性の被扶養者になれば、健康保険は「保険料ゼロ」

女性が国民健康保険加入で、再婚相手が会社勤めなら、配偶者として健康保険の被扶養者となり、健康保険料はゼロになります。

年齢が上がると不安が大きくなるのが、病気や介護の問題です。持病がある場合は、事前に相手に伝えておきましょう。介護についても、いざというときどのような介護を望むか、事前に話し合って決めておきます。

介護費用は、在宅介護で毎月5万円、有料老人ホームなどの施設介護となれば、毎月15万円くらいかかるため、財産の状況も併せて、よく検討しましょう。

再婚相手が亡くなったときの「相続問題」の乗り切り方

再婚相手が先に他界した場合、遺産相続の問題が発生します。

再婚相手に前配偶者との子どもがいれば、現配偶者と子どもが法定相続人となり、それぞれ2分の1ずつ財産を引き継ぐのが基本です。

子どもの側からすると、父親が「おひとりさま」のままでいれば、父親亡きあとには子どもたちがすべてを相続することになりますが、再婚して他界すれば、相続財産の半分が現配偶者に引き継がれてしまいます。もし子どもが、親の財産すべてを相続するつもりでいた場合は、トラブルの原因になりかねません。

そのため、どの財産を、誰に、いくら継がせるか、再婚する前に決めておく必要があるのです。

遺産をどのように分割するかを決めたら、被相続人の意思を尊重し、相続を円滑に進めるためにも、遺言書の作成が必須となります。

◆不動産を相続する場合の注意点

相続財産に不動産がある場合は、遺産分割にはとくに注意が必要です。

もし再婚した夫の資産構成が、都心の一等地の自宅とわずかな預貯金だったとしましょう。もし再婚した妻が自宅を相続してしまうと、遺産分割のバランスが悪くなり、相続争いが起きる可能性が高くなります。そうなると、子どもに代償金の支払いを求められる可能性も高くなります。

そのようなトラブルを回避するには、配偶者が無償で自宅に住み続けられる「配偶者居住権」の取得が必要であり、そのためにも遺言書が不可欠なのです。

◆夫亡きあとの生活資金が不安なら…

もし、老後資金が不安で、多くの財産を受け取りたいなら、生命保険への加入を検討しましょう。夫を契約者・被保険者、妻を受取人にした終身保険に加入すれば、死亡保険金は遺産分割に関係なく、妻は確実にお金を受け取ることができます。

岸田 康雄
公認会計士/税理士/行政書士/宅地建物取引士/中小企業診断士/1級ファイナンシャル・プランニング技能士/国際公認投資アナリスト(日本証券アナリスト協会認定)

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