定年退職後の仕事やお金、どうしよう…アラカン世代におすすめの「リスキリング」ってなんだ?

(画像はイメージです/PIXTA)

みんな不安を感じている、将来のお金の話。定年退職後、年金だけでは心細いし、かといって未経験の仕事へいきなり飛び込むのは大変そう…。そこで注目されているのが、自身のお金にまつわる問題解決や、再就職、開業を目的とした「学び直し=リスキリング」です。人気の資格や、役立つ公的制度と合わせて見ていきましょう。

相続、老後のお金…中高年世代に降りかかる「問題」

そろそろ定年が近づいてきた50代後半の会社員です。勤務先は大手なので給料も年金もそれなりですし、退職金もまあまあです。これまでは、60歳の定年後は嘱託社員になり、65歳を過ぎたら年金生活に…と、漠然と考えていました。ところが、周囲の先輩や同世代の話を聞くと、ちょっと自分の見通しは甘すぎるのかなと…。老後資金の管理も必要ですし、いずれは相続の問題もあります。いまからできる、将来の生活に役立つ勉強はありますか?(57歳・会社員・世田谷区在住)

いまのアラフィフ、アラカンの親世代は、サラリーマン生活を終えると、それなりの退職金を得て、夫婦2人で生活できるだけの年金を受給し…というライフスタイルが一般的でした。しかし、いまの時代は、親世代と同じ人生設計では不安です。

そこで、中高年の皆さんにお勧めしたいのが「学び直し=リスキリング」です。これまでのキャリアにプラス、学び直しによって新しい知識や技術を習得すれば、定年退職後の就労や収入の確保に、大いに役立つといえます。

ご相談者の方の場合は、まず「ファイナンシャル・プランニング技能士3級」の受験をお勧めしたいと思います。

個人の老後の生き方を考えるには、ファイナンシャル・プランニング技能士の勉強が適しています。最近、この資格取得を目指す人が増えていますが、年金などの社会保険、金融資産や不動産の投資、生命保険、税金、相続など幅広い分野を学べることが理由だと思われます。

自分の人生のために「資格の勉強をする」選択肢

ファイナンシャル・プランニング技能士とは、本来は金融機関に勤める人の技能向上や、ファイナンシャル・プランナーとして独立開業を目指す人のための資格なのですが、ここ数年は「お金について正しく学びたい」との意識から、シニア層を中心に受験する人が増えています。

ご自分の家計管理や資産運用のためなら、3級で十分知識を得らます。実際に、受験者の9割以上が自己啓発目的であり、50代を中心とした定年退職前後の世代が学び始めるケースが多く見られます。

資格取得のため、独学で勉強を頑張る人もいますが、会社員なら、専門学校の受験対策講座の受講がお勧めです。コストはかかりますが、無駄なく効率的に学習することができます。

さらに高度な勉強にチャレンジするなら?

●株取引に関心があるなら、日本商工会議所の「日商簿記」がお勧め

ここ数年で、株式投資に関心を持つ人も増えてきました。個別株投資に関心のある方なら、上場企業の決算書等が読めると非常に役に立つでしょう。

その場合は、ファイナンシャル・プランニング技能士より、会計知識に係る資格がおすすめです。最も人気があるのは日本商工会議所の「日商簿記」です。企業の日々の取引から、決算日に作成する貸借対照表や損益計算書などの財務諸表を作る方法を学ぶ試験ですが、3級の合格率は5割程度と、ハードルは高くありません。

●起業を目指すなら「社会保険労務士や中小企業診断士」…FP資格との合わせ技がお勧め

起業を目指すなら、社会保険労務士や中小企業診断士をお勧めします。社会保険労務士は、中小企業と顧問契約を結び、社会保険の書類作成や申請手続きを担う資格です。中小企業診断士は、経営コンサルタントの資格です。これらの資格とファイナンシャル・プランニング技能士の資格をあわせ持てばかなり強力です。

リスキリングを支援する「教育訓練給付制度」

資格取得となれば、費用面が心配な人もいると思います。その場合は、リスキリングを支援する「教育訓練給付制度」を活用しましょう。雇用保険に一定期間加入しているなどの条件を満たせば利用可能です。

受験講座を修了したあとにハローワークへ申請すれば費用がもらえます。「一般教育訓練給付」は幅広い資格が対象となっており、受講費用の20%で上限10万円です。「特定一般教育訓練給付」は、社会保険労務士や税理士など難しい資格が対象で、受講費用の40%で上限20万円です。

また、キャリアコンサルタントや専門職大学院などの取得がむずかしい資格が対象となる「専門実践教育訓練給付」の場合は、さらにサポートが手厚く、受講費用の50%となっており、年間上限40万円が最長4年にわたって支給されます。資格取得後1年以内に就職した場合は、受講費用70%、上限56万円がもらえます。

十分な貯蓄がない人が開業の費用を準備する場合は、日本政策金融公庫の新規開業資金、女性・若者・シニア起業家支援関連の融資を活用しましょう。これは55歳以上も対象で、技術やノウハウに新規性が認められると、特別に低い金利が適用されます。

ほかにも、東京都中小企業振興公社が指定するインキュベーション施設の利用などを条件に、最大300万円をもらえる助成金の制度があります。

とはいえ、資格やスキル以外に、人脈も重要です。定年退職後の開業を目指すなら、できれば50代のうちに、会社以外の人脈を広げておきましょう。

岸田 康雄
公認会計士/税理士/行政書士/宅地建物取引士/中小企業診断士/1級ファイナンシャル・プランニング技能士/国際公認投資アナリスト(日本証券アナリスト協会認定)

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