うつ病経験者のオーナーがつくったうつCAFE 「ひとりじゃないを伝えたい」原価ぎりぎりで提供するオーナーの思いに迫る

うつ病は、気分が落ち込む、何をしても楽しめないといった精神症状とともに、眠れない、食欲がない、疲れやすいなどの身体症状が現れます。症状や程度は人によって異なりますが、多くの方がうつ病で苦しんでいます。

うつ病経験者のバーテンダー佐藤康平さんは『ひとりぼっちにならない場所』というコンセプトのもと「うつCAFE」をオープンさせました。

オープンしたのは2021年11月。オープンしてから現在まで、多くの方がうつCAFEを訪れています。

Instagramでは、Non-Alcohol Bar「うつCAFE」(@utsucafe_tokyo)のアカウント名で、うつ病についてやCAFEの開店レポートなどを公開しています。

今回は、うつCAFEのオーナーの佐藤さんに話を聞きました。

『ひとりぼっちにならない場所』

完全予約制で月に数回開催される「うつCAFE」。
“うつ病になると仕事ができず、経済的に不安定になる”という不安をできる限り払拭するため、学生、仕事をしていない方は200円と、ほぼ原価でドリンクを提供しています。

ー『ひとりぼっちにならない場所』とプロフィール欄に記載がありますが、どういった思いをもってつくられたカフェなのでしょうか?
精神疾患を抱えた方が共通に思う感情が「孤独」だと考えています。病気が理解されない、働いていないから社会から孤立している、友達がいない…など。
この感情をどうにかすれば病気がよくなるのでは?という疑問からスタートしています。

ーカフェでは集まった方たちと主にどのようなことをされているのでしょうか?
うつCAFEに集まったお客様たちは、1グループ4名を3つほど作るように分かれて雑談をします。
特にテーマなどは決めていません。1グループには必ずボランティアスタッフがおり、会話の流れをつくったりサポートしたりします。
雑談の中でも病気に触れることがあるので、そこで自然な共感が生まれます。病気をテーマに話してしまうと、精神疾患の病名ごとに若干違った経験などがあるため、共感どころか「自分は少し違うのでは」という疑惑を生みかねません。
そこで、雑談というテーマでゆるく参加できるようにしています。

ー今までどのような方が参加されましたか?また、参加された方々からどういった感想をもらいましたか?
比較的多いのは20代女性、それ以外の方も多く来られます。診断された方、病院にも行っていない方、仕事をしている方、寛解された方、生活保護の方など、とにかくさまざまです。
感想としては「本物の共感をもらえる」「晴れ晴れとした気持ちになれた」などをいただきました。

みんなで撮った集合写真(@utsucafe_tokyoさん提供)

誰かを助ける仕事がしたい

佐藤さん自身もうつ病の経験者です。うつ病のきっかけとなったのは、就職でした。

新卒で官公庁へいったものの、公務員特有の世界観や閉鎖的な空気が合わなかったという佐藤さん。
就職から3ヶ月で食べ物が喉を通らなくなり、適応障害と診断されました。
その後退職し、再び就職活動を始めるもうまくいきませんでした。

そんなときに勧められたのが沖縄でのリゾートバイトだったそうです。リゾートバイトを経て、本当にやりたかった「誰かを助けたい」という思いに気づかされたといいます。

ーうつを経験されたあと、どのようにしてこのカフェを開催するに至ったのでしょうか?きっかけや経緯を教えてください。
沖縄で感じた人の温かさをどうにか自分と同じようなうつ病の方に感じてもらいたい!と思いましたが、方法が思いつかずにいました。
そんななか、自分がたまたま得意だった飲食店での接客業とかけ合わせることを思いつき、カフェやバーといった人とのコミュニケーションが生まれる場所に「うつ病のコンセプトを入れよう!」と考えました。

「ひとりじゃない」を伝えたい

ー今後うつCAFEの活動を通して、伝えていきたいことはありますか?
活動を通して伝えたいことは、やはり「ひとりじゃない」ということでしょうか。
つらくて世界中に誰も味方はいないと思っていても手を差し伸べてくれる人はいるので、焦らずゆっくり生きてほしいですね。

ー今後やってみたい活動はありますか?
やってみたい活動は「うつCAFEの拡大」ですね。いまはとにかく需要が多くすべての声に手を差し伸べられていない現状があります。
寄付やスポンサーがつけば、もともとお客様だったボランティアスタッフを正式に雇用できますし、もっと多くのお客様と触れ合えます。
もう一つは福祉の「オシャレ化」です。ユーザー目線だとどうしても足が重くなったりしがちなので、お客様自ら「行きたい…!体験したい…!」と思えるような仕掛けがあるサービスや商品を作りたいです。

今のうつCAFEの運営は月額サポーターからの寄付金と、カフェの売上で賄っているといいます。
多くの人が集まり、心を癒す場になっているうつCAFE。今後の活動や新たな挑戦にも期待したいですね。

【参考資料】
こころの情報サイト

ほ・とせなNEWS編集部

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