石油大手が資産再編、価格30ドルでも黒字の新油田に照準

Sabrina Valle

[ヒューストン 14日 ロイター] - 石油大手各社は業界の将来が不透明な中、石油価格が1バレル当たり30ドルに下落しても利益を生み出せる新油田に照準を合わせ、生産拠点などの再編を進めている。

背景には、再生可能エネルギーへの移行が進む中で、決算が好調でも投資家が石油株に戻らないという事情や、現在の高い油価が続かないかもしれないとの警戒感がある。コンサルタント会社ウッド・マッケンジーの企業調査ディレクター、アレックス・ビーカー氏は「15年間で3度の石油価格暴落を受け、また暴落が起きる公算が大きいとの見方が広がっている」と述べた。

米国ではエクソンモービル、シェブロン、オキシデンタル・ペトロリアムは最近、総額1250億ドル規模の合併・買収(M&A)を決めた。買収したのは、石油生産コストを1バレル当たり25―30ドルに抑えるのに寄与する企業だ。

欧州ではシェルとエクイノールが、損益分岐点が1バレル当たり25―30ドルとなるプロジェクトを推進中。フランスのトタルエナジーズは生産コストを25ドル未満に抑えることを目指している。

これらは10年前の石油プロジェクトの損益分岐点の半分程度であり、現在の北海ブレント価格の約40%の水準だ。

こうしたコスト抑制策は、大規模な資産再編や、より少ない地域への事業の集中につながっている。

撤退の対象となるのは、米国の一部地域やアフリカ、カナダのコストが高く古い生産拠点だ。シェルとエクソンは昨年、100年ほど前から使われてきたカリフォルニア州の生産拠点を売却。両社はまたトタルエナジーズとともに、ナイジェリア事業の撤退や売却を検討している。シェブロンはインドネシアから撤退し、BPはカナダ、アラスカ、北海の資産を売却した。

新たな生産拠点は生産量の多い深海油田やシェール層となる傾向がある。深海油田はいったん初期投資を回収すれば、その後は利益を生み出し続ける。シェール層は小型で掘削しやすい油田が集まっているため、価格の変動に応じた生産量の調節が可能だ。

石油大手各社は多額の資金を株主に還元するため、高いリターンを生み出すプロジェクトを必要としている。各社の株主還元は昨年、合計で1110億ドルとなった。

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