小学生兄弟死亡 兵庫・稲美町放火殺人事件 伯父に懲役30年判決「死刑やむを得ずとはいえない」

判決公判開廷前の神戸地裁姫路支部・法廷<2024年2月15日 13時18分 ※代表撮影>

2021年11月、兵庫県稲美町の住宅が全焼し、小学生兄弟が死亡した放火殺人事件で、兄弟と同居していた伯父で、殺人と現住建造物放火罪に問われた男(53)の裁判員裁判で、神戸地裁姫路支部は15日、懲役30年(求刑・死刑)を言い渡した。
男は2021年11月19日深夜、妹夫婦らと同居していた兵庫県稲美町の木造2階建ての自宅で、押し入れに収納していた布団にガソリンをまいて火を放ち、家を全焼させ、就寝中の兄(当時12歳・小学6年)と弟(同7歳・小学1年)を殺害したとされる。

死刑求刑に「言うことはありません」

被告人質問で男は「両親に精神的な苦痛を与えたくて、大切な子どもを狙った。直接的に殺したのは自分だが、間接的にやったのは妹夫婦らだ。謝罪はできない。死刑にしてもらってもかまわない」などと述べていた。

判決で神戸地裁姫路支部は、「妹夫婦への憎しみから2人の子どもを殺害するという罪質は残虐で、生命軽視も甚だしい」としたが、「男への度重なる嫌がらせに対する逆恨みという親族間トラブルに起因しており、軽度の知的障がいがあったことも一定程度考慮した」と、死刑を回避し、有期懲役刑とした理由を述べた。

裁判長は最後に男に向けて、「命の重みをしっかり考え、重大なことをしてしまったことを一生忘れてはならない。恨みを晴らすためだったとしても、単なる一時的な満足に過ぎず、虚しさが残るだけ。何も得られず、何も生まれてこない」と諭した。

男は実家だったこの住宅を出て職を転々とし、10年ほど前に戻り、兄弟と、その父親と母親、母親の兄に当たる男の5人で暮らしていた。男は当初、妹家族と一緒に出掛けるなど交流はあったが、しだいに会話することもなくなっていた。さらに妹夫婦から食事や住宅内の移動、入浴など生活を制約され、室内にカメラを設置されて監視されていると思い込んだとされる。

男は犯行5日後の2021年11月24日に逃亡先の大阪市北区の公園で逮捕された。その後、犯行時の精神状態などを調べるため 、同年12月10日から7か月間、鑑定留置されていた。
神戸地検姫路支部は2022年7月8日、この結果を踏まえて責任能力は問えると判断し、起訴した。

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