「地元で安心して出産を」 紀南病院、東大から産科医2人派遣で6人体制に・和歌山

地域周産期母子医療センターに指定されている紀南病院(和歌山県田辺市新庄町で)

 全国で産科医が不足する中、紀南病院(和歌山県田辺市新庄町)は来年度、産科医を現行の5人から6人に増員する。東京大学から医師2人の派遣受け入れが決まった。15日に発表があった。阪越信雄院長は「戦力的にさらに充実する。地元で安心して出産してもらいたい」と話している。

 紀南病院は、高度な医療が必要な妊婦や新生児に対応する「地域周産期母子医療センター」に指定されている。新生児の急患に24時間体制で対応する紀南で唯一の医療機関。分娩(ぶんべん)は年間約500件ある。5人での対応は「ギリギリ」だったという。

 これまで県立医大と徳島大学から産婦人科専門医を目指す専攻医(医師免許取得後に義務づけられた2年間の初期臨床研修を修了した医師)の派遣を受けており、5人体制を維持してきた。しかし、地方の産科医不足は深刻。来年度は減員の恐れもあり、新たな派遣先を模索していた。

 そんな中、東大産婦人科学講座の大須賀穣教授の協力で、東大の産婦人科専門研修連携施設として専攻医と、指導的な立場の専門医の受け入れが決まった。大須賀教授は「国内最高水準の研修を受けた医師を地方に派遣し、最先端医療と地域医療の融合を図り、活性化に貢献したい」とコメントしている。

 病院管理者の真砂充敏田辺市長は「各大学の協力で、地域の産科医療体制を確保できたのは喜ばしい。少子化が社会問題となる中、今後も安心して出産できる体制の維持に尽力したい」、阪越院長は「地域医療への理解に感謝したい。地域の産科医療にますます貢献したい」と話している。

 紀南病院の22年度の分娩は482件。17年度は742件だった。

■厳しい勤務体制

 産科医の勤務は通常の日勤週5日に加え、病院近くの宿舎などで夜間待機する「宅直」がある。分娩は365日24時間体制。宅直の翌日に朝から外来診療に対応する場合もある。

 紀南病院では毎日2人が待機する。毎週火曜と月2回の土、日曜に外部から1人の応援勤務があるものの、その場合でも1人は待機する。

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