「検察は赤みの論点から逃げている」証人尋問前の最大のヤマ場に 5点の衣類の血痕 検察の新たな主張に弁護団が反論【袴田事件再審公判ドキュメント⑨】

1966年、旧静岡県清水市(現静岡市清水区)で一家4人が殺害されたいわゆる「袴田事件」で死刑が確定している袴田巖(87)の 再審=やり直し裁判は2月15日、9回目を迎えました。検察は、犯行着衣とされる「5点の衣類」についての新たな主張を展開しました。
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袴田巖さんの再審公判は、前日の2月14日に続き行われました。焦点となる検察側の主張について、14日の公判後の記者会見で弁護団は、次のように話していました。

<袴田事件弁護団 笹森学弁護士>
「このまま行くとですね、検察は負けることになってるんです。皆さんが説得されれば(検察は)成功かもしれないけれど、説得されるはずはないので」

弁護団も注目する「5点の衣類」に関する検察側の主張。「証人尋問」前の最大のヤマ場となります。検察は、事件から1年2か月後にみそタンク内からみそに漬かった状態で発見された「5点の衣類」を袴田さんの犯行着衣としています。

袴田巖さんの9回目の再審公判は、15日午前11時から開かれました。

検察は、新証拠となる法医学者7人の共同鑑定書などをもとに「血痕に赤みが残る可能性はある」ことを主張。2021年9月から1年2か月にわたり実際にみそに漬ける実験を行い、15日の法廷では1か月ごとの経過をモニターに映しました。

<伊豆川洋輔記者>
「検察は、赤みが残る可能性を示した上で、弁護側の「血痕が黒くなる」とするメカニズムについても、酸素濃度が低い状況を考慮していないなど、条件設定などが不十分であると否定しました」

また、5点の衣類が見つかった当時の従業員の感想について「どす黒い血がべったりついていた」、「素人がみても血が変色したものとわかる」、「茶色っぽいしみ」などと供述調書に残っていたと説明。見た人の表現や捉え方が異なるのは光源や明るさが影響すると主張しました。

検察側の立証を受けて、弁護団は反論しました。

弁護団は、血痕の赤みが消えるのに十分な酸素量がみそタンク内にはあったと訴え、その上で、検察側が示した写真については「黒く」見えたと検察と違うとらえ方を示しました。

<袴田事件弁護団 間光洋弁護士>
「最高裁は、5点の衣類に赤みが残っているかという論点は巖さんの犯人性に直結すると差し戻し決定で言って、それに基づいて高裁が再審開始とした。これが基本的な判断の枠組みと考えていいはず。けれど検察官は独自の判断基準を設定して、赤みの問題の論点の重要性としては低く設定して、ほかのところで立証できるから可能性の立証で足りるという論理を展開している。これは間違っていると言っていい。赤みの論点から逃げている。検察官がきょう言った程度の話であれば、巖さんの無罪は揺るがない」

<袴田事件弁護団 小川秀世弁護士>
「端的に言えば、赤みが残る可能性があれば、5点の衣類が1年2か月みそに入っていたことと矛盾はしないんだという、そのぐらいの意味しかない。色は矛盾しなければいいんだという、そういう言い方で(検察は5点の衣類の立証から)逃げたんですね。そこが一番重要だと思っています」

次回の袴田巖さんの再審公判は、3月25日から3日間で、証人尋問が予定されています。

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