欧州委、今年のユーロ圏GDP予測を下方修正 物価予測も引き下げ

Jan Strupczewski

[ブリュッセル 15日 ロイター] - 欧州連合(EU)欧州委員会は15日、今年のユーロ圏の域内総生産(GDP)予測を下方修正した。インフレで購買力が低下したことや高金利で融資が抑制されたことが背景。

一方、今年のインフレ予測も下方修正した。

欧州委は今年のユーロ圏のGDPを0.8%増と予測。昨年11月時点の予測は1.2%増だった。昨年の0.5%増からは加速することになる。

来年のGDP予測は1.5%増。従来予測は1.6%増だった。

欧州委のジェンティローニ委員(経済担当)は記者会見で、「EU経済は2023年を通じてほとんど拡大せず、24年第1・四半期の見通しは依然として暗いままだ」と指摘。「物価圧力は以前の想定より迅速に緩和され、エネルギー価格は現在大幅に下落している。その結果、信用状況は依然として厳しいものの、市場は緩和サイクルが早期に始まると期待している」と述べた。

欧州委は「今年第1・四半期のEU経済の見通しは引き続き弱い。ただ、今年の経済活動は依然として緩やかに加速する見通しだ」と表明。「インフレ率が引き続き低下する中、実質賃金の増加と底堅い労働市場が消費の回復を支えるだろう」とした。

国別では、ドイツの今年のGDP予測を0.8%増から0.3%増に下方修正した。来年の予測は1.2%増。昨年は0.3%減だった。

フランスの今年のGDP予測も1.2%増から0.9%増に下方修正。イタリアのGDP予測は0.9%増から0.6%増に下方修正した。

経済活動の縮小を受け、今年の消費者物価上昇率は2.7%に鈍化する見通し。昨年11月時点の予測は3.2%だった。

来年のインフレ率の予測は2.2%。欧州中央銀行(ECB)の中期的な目標である2.0%に近づくとみられている。

欧州委は「予想を下回るここ数カ月のインフレ率、エネルギー商品価格の下落、経済の失速を背景にインフレ率は秋季見通しで見込まれていたよりも急激な下降線をたどる」としている。

ただ、インフレの鈍化は続くものの、鈍化ペースは緩やかになる見通し。EU加盟国政府がエネルギー補助金を段階的に廃止することや紅海の貿易の混乱で輸送費が上昇していることが背景。

一方、ジェンティローニ委員は地政学的緊張と中東危機がさらに拡大するリスクにより、不確実性が極めて高いと警告した。

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