女子バスケ日本代表がパリ五輪切符を確定した裏で…地獄→天国を味わったカナダ記者が“大会日程”に不満「非常識なレギュレーションだった」

パリ切符を懸けた激闘は劇的な形で幕を閉じた。だが一方で、大会日程に疑問を呈す声も少なくない。

現地2月11日、パリ五輪の出場権を懸けた女子バスケットボールの「FIBA女子オリンピック世界最終予選(WOQT)」のハンガリー大会は全日程を終え、今夏のパリ五輪の出場権を獲得したのは日本、スペイン、カナダの3か国。ホスト国のハンガリーは44年ぶりのオリンピック出場を逃した。

大会前に「死の組」と言われた熾烈なパリ切符争奪戦は最終戦を残し、なんと全チームが1勝1敗で並ぶ史上空前の大混戦となった。運命の第3戦は世界ランク9位の日本が同5位のカナダと対戦。もう1試合はスペイン(同4位)が地元ハンガリー(同19位)と激突した。
結果は、日本が格上と言われたカナダ相手に一進一退の攻防を制し、86-82で撃破。3大会連続の五輪出場権を獲得した。敗れたカナダは1勝2敗となり、スペインが勝利しない限りパリへの道は閉ざされる。しかも日本が勝利を手にしたことにより、スペインはハンガリーに敗れても、当該成績でカナダを上回ることになるため、試合前にパリ行きの切符が確定した。

一方、ハンガリーは直接対決でカナダに敗れていたため負ければ予選敗退。勝利が絶対条件のため死に物狂いでスペインを倒しにくることが予想され、カナダにとっては厳しい状況だった。

だが、試合は白熱の展開を見せる。終盤までもつれ込む大熱戦の末、スペインが73-72でゲームを制し、風前の灯火だったカナダの五輪出場が決定。地獄から数時間後、一気に天国へと運命が変わったカナダの選手たちは宿舎で狂喜乱舞。対して、勝利を終了寸前まで掴みかけていたハンガリーは敗北を受け入れられず茫然自失。母国の勝利を信じ、熱烈な声援を送ったファンも沈黙し、選手の目からは涙が頬を伝った。 無論、奇跡の五輪切符を掴んだカナダの母国メディアは喜びを隠し切れなかったが、この劇的な1日をいま冷静に振り返っている。

カナダ国内のニュース、スポーツを中心に配信している『Globalnews』でスポーツレポーターを務めるスコット・ロブリン氏は「女子バスケットボールのカナダ代表は、予選で日本に敗れるもパリ五輪の出場権を獲得した。スペインがハンガリーを73-72で破り、その恩恵をカナダが受けた。スペインが信じられない逆転劇を見せてくれたからだ」と綴り、スペインの猛攻がなければ、カナダのオリンピックの道は途絶えていたと説いた。

他にも、カナダ放送局『CBC』やニュースメディア『Toronto Star Sports』などで記事を執筆するベン・スタイナー記者は、スペインの逆転勝利によって母国に五輪切符が転がり込んだことを前置きしたうえで、「オリンピックの出場権を勝ち取るためとはいえ、なんとも非常識なレギュレーションだ」と自身のX(旧ツイッター)に綴り、五輪切符がかかる重要な試合で同時刻開催でないスケジュールに不満を示した。
一方で、米スポーツメディア『Bleacher Report』などにバスケ記事を寄稿するクリス・ウォルダー記者は「ハンガリー対スペインの女子バスケットボール世界最終予選の結末は、とてもワイルドだった」と絶賛。最大22点差まであったリードを詰め、残り55秒で大逆転。バスケットボールの醍醐味を表現するかのようなゲームを「ベストだ!」と高く評価している。

勝てば五輪出場権獲得、負ければパリ行きの道が断たれるという大事な一戦で、なぜ同時刻開催が実現されなかったのか。今回のバスケットボールの大会日程を不公平と指摘する声は決して小さくない。

構成●THE DIGEST編集部

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