学生納付特例制度なんて利用しなければよかった…「月収32万円」の30代大卒サラリーマン、後悔の理由【年金制度の落とし穴】

日本の公的年金制度。細かな決まりごとが多く、知っていると知らないでは、大きな差となることも珍しくはありません。今回は「学生納付特例制度」について、知っておいたほうがいい注意事項をみていきます。

20歳になったら国民年金の保険料を払わないといけませんか?

2022年4月から成年年齢が18歳に引き下げられ、親の同意なしに1人暮らしの部屋を借りたり、クレジットカードを作ったり、ローンを組んだりできるようになりました。一方で、20歳のままというものも。たとえば、飲酒や喫煙。公共ギャンブルに投票できるのも20歳から。また国民年金の加入も20歳のままです。

日本国内に住所がある20歳以上60歳未満であれば、国民年金に加入する必要があり、保険料を納めなければなりません。その保険料は毎年度見直しが行われ、令和5年度(令和5年4月~令和6年3月まで)は月額1万6,520円、令和6年度は月額1万6,980円です。

20歳になってから、おおよそ2週間以内に日本年金機構から「基礎年金番号通知書」「国民年金加入のお知らせ」「国民年金保険料納付書」「国民年金の加入と保険料のご案内(パンフレット)」のほか、保険料の免除・納付猶予制度と学生納付特例制度の申請書、返信用封筒が送付されます。 必要事項を記入のうえ、返信用封筒で返信したらOK。保険料は金融機関のほか、コンビニ納付や電子納付、クレジット納付、口座振込も可能。

国民年金保険料は、まとめて前払い(前納)すると割引が適用されます。令和5年度では、2年前納で総額38万7,170円、割引額は1万4,830円。1年前納では総額194,720円、割引額は3,520円。6カ月前納で総額98,310円、割引額は810円でした。

保険料は毎年変わりますが、仮に月額1万6,520円を40年払ったとしたら、納付額は800万円ほどになります。それに対し年金(老齢基礎年金)は満額支給で月6万6,250円。120ヵ月、10年間年金を受け取ることができれば、納付した保険料を上回る年金がもらえることになります。75歳までの生存率、つまり生きている確率は男性で69.49%、女性で85.04%。圧倒的多数が、保険料を払ったほうがお得だといえるでしょう。

「学生納付特例制度」を利用した30代サラリーマン…保険料を追納した時に気づく後悔

国民年金の保険料については、こんな疑問。

――学生ですが、国民年金に加入して、保険料を払わないといけませんか?

これに対する答えは「学生でも保険料を払わないといけない」が正解。日本年金機構は保険料を払う意味として「年金が世代と世代の支え合いとして加入が義務とされていること、学生の方の年金を受ける権利を確保することや、学生期間中の病気やケガによる障害について保障が必要と考えられるためです。」と回答しています。

しかし学生の場合、月1.6万円程度の納付でも経済的に厳しいものがあります。そこで学生かつ本人の前年所得が一定額以下の場合、保険料の納付が猶予される制度「国民年金保険料の学生納付特例制度」があります。

所得の基準は「128万円(令和2年度以前は118万円)+扶養親族等の数×38万円+社会保険料控除等」。大学・大学院のほか、短期大学、高等学校、高等専門学校、特別支援学校、専修学校および各種学校、一部の海外大学の日本分校に在学する学生で、夜間・定時制課程や通信課程の学生も含まれます。

ただ気をつけたいポイントが2つ。まず、この制度はあくまでも「保険料の納付を猶予」するものであって、免除される制度ではないということ。つまり「あとで保険料は払ってね」という制度です。学生納付特例の承認を受けた期間は、10年以内であれば保険料をさかのぼって納める=追納が可能。制度を利用しても、あとで保険料を納めることで、将来の年金額を満額にできるわけです。

たとえば大卒のサラリーマン。20代前半の月収は平均で23.5万円、20代後半で27.2万円。手取りにするとそれぞれ17万円、21万円といったところ。1人暮らしだと、追納するのはちょっとツライ台所事情。30代前半になると平均月収は31.9万円、手取りにすると25万円ほど。やっと追納が考えられる給与といえるでしょうか。

――10年以内……ギリギリセーフ

念願かなって、国民年金の保険料を追納。喉に引っかかっていた魚の骨が取れた感じ……そんな気分も束の間、少々残念なことを知ることになります。

――えっ、保険料、余計に払っているの?

気をつけたいポイント、2つめ。実は保険料の免除、または納付猶予の承認を受けた期間の翌年度から起算し、3年度目以降に保険料を追納する場合には、承認を受けた当時の保険料額に経過期間に応じた加算額が上乗せされます。国民年金の保険料の追納に関する注意事項として記載されているものの、見落としがち。

たとえば令和5年度中に追納する際の追納保険料額。10年前の平成25年度分を払おうと思ったら、月額1万5,220円。当時の保険料は月1万5,040円だったので、月180円余分に払うことになります。

――学生納付特例制度なんて利用しなきゃよかった

月180円、1年で2,160円。大した金額ではないかもしれませんが、あとで知るとちょっと嫌な気分になり、悔やむ結果になるかも。学生納付特例制度を利用するなら、追納の時期によって加算額が上乗せされることを納得したうえで、可能な限り3年以内に追納するのがベストです。

[参考資料]

日本年金機構『国民年金保険料の学生納付特例制度』

日本年金機構『国民年金保険料の追納制度』

厚生労働省『令和4年賃金構造基本統計調査』

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