『大奥』亀梨和也と小芝風花が交わした初めてのキス “束の間の幸せ”で幕を閉じた第一章

「宿直の者が聞いておるぞ」という家治(亀梨和也)の制止も聞かず、「好きです」と思いの丈を打ち明ける倫子(小芝風花)。2人は初めてのキスを交わす。この時、きっと誰もが宿直になりたいと願ったに違いない。

『大奥』(フジテレビ系)第5話では、倫子と家治が名実ともに夫婦となり、物語の第一章が幕を閉じた。だが、それは束の間の幸せだった。

家治が側室のお知保(森川葵)へ御渡りしたことに、つらい思いを募らせる倫子。そんな中、思わぬ形で幼なじみの信通(鈴木仁)と再会を果たす。信通は田沼(安田顕)によって武家伝奏に任じられたのだ。

その際、倫子が不遇な状況に置かれていることを知り、かつて彼女を救えなかったことを後悔している信通は一緒に京へ帰ろうと提案する。生き地獄から抜け出せる、またとないチャンスに心が揺れる倫子。しかし、そこには倫子に不届者の汚名を着せ、家治から遠ざけようという田沼と松島(栗山千明)の目論見があった。

お品(西野七瀬)は倫子があまりに不憫で憤りを隠せずにいたところ、貞之助(小関裕太)から”暗黙のしきたり”について聞かされる。威厳や格式のために公家から正室を迎えたきた将軍家。しかし、公家の血を引く子が将軍となれば朝廷が政にまで口をはさみかねないため、大奥では公家の正室が身籠もらぬように裏で手を回してきたという。

大奥に来てからこれまで受けてきた嫌がらせの数々、家治が無用な争いから自分を守るために側室であるお知保と子をなそうとしていることも、倫子はようやく理解する。だが、家治自身はどう思っているのか。倫子は本音を聞こうとするも、「心などとうに捨てた」と家治は遠い目をするばかり。

だけど、倫子はこれまで何度もその心に触れてきた。景気が悪化し、格差が広がる中で国をもっと豊かにするために心血をそそぐ家治は、苦しい状況に置かれた人を見て心を痛めることができる人間だ。倫子に方位磁石をあげたのも、彼女が信通からもらった方位磁石を壊してしまったことを知っていたからである。そんな優しい家治が何に苦しめられているのか、倫子は知らない。だが、放っておくことなどできなかった。倫子はこの先、どんな茨の道が待ち受けていようと家治の妻として生きていくことを心に誓う。

信通に別れを告げ、家治のもとへ戻る倫子。倫子を信じて待っていた家治の足元にはリンドウの花が咲いていた。リンドウの花には、その根が生薬に使われていたことから病に勝つ=勝利という花言葉を持つ。倫子の母親が病に伏せっていることを知った家治が願掛けに植えさせたのだ。

「そなたの母上は、わしにとっても大事な母であろう」と家治。それは、夫に幽閉された挙句に亡くなったお幸の方(紺野まひる)に手を合わせた倫子の姿とも重なる。一度も会ったことのない他人にも心を痛めることができる優しさ。それが二人の共通点であり、互いに惹かれた理由である。「この城で誰よりも寂しそうな貴方様を幸せにしたい」という倫子の思いが家治の心に張った氷を溶かし、その目からは一筋の涙が流れた。ようやく心と心が通じ合った二人。だが、その矢先にお知保の方が家治との子を身ごもる。新たな倫子の生き地獄の始まりだった。

一方で、将軍生母となる可能性が生まれたお知保も、松島のライバルである高岳(田中道子)から何をされるか分かったものではない。思いを寄せる家治に抱かれても心から愛されているわけではないお知保。事が終わった後、寝床に一人取り残される彼女の姿はあまりに不憫で、心から信頼できる人がいる分、倫子の方が置かれた状況はまだいくらかましに思えてくる。そんなお知保を倫子が助ける場面では、二人が正室と側室という壁を超えて手と手を取り合う未来が見えた。第二章は悪しきしきたりに染まらぬ倫子の存在が、ますます大奥に影響を与えていくのではないだろうか。

(文=苫とり子)

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