【光る君へ】紫式部(吉高由里子)と清少納言(ファーストサマーウイカ)との出会い。二人は女流文学者としてどう歩んでいくのか?

大河ドラマ「光る君へ」第5回より ©️NHK

2024年のNHK大河ドラマ「光る君へ」の放送がスタートしました。『源氏物語』の作者・紫式部のベールに包まれた生涯を、人気脚本家・大石静がどう描くのか? ここでは、ストーリー展開が楽しみな本ドラマのレビューを隔週でお届けします。今回は、第5回「告白」と第6回「二人の才女」です。

前回はこちら。

面白いドラマというのは、あっという間に進行していく。先月から始まった「光る君へ」ももう第6回まで進んだと気づいて驚いた。いつの間にか、平安の都を舞台にしたこの人間ドラマに心奪われて、日曜の夜が楽しみで仕方なくなってきている。周りの友人には、地上波での夜8時の放送が待ちきれなくて、6時のBSから見てしまうという者もいる。ストーリーテラー大石静の手にかかると、登場人物がみんな躍動して見えてくるのが不思議だ。

さて、今回振り返るのは、第5回「告白」と第6回「二人の才女」である。物語がいよいよ動き始めた、そんな予感に満ちた展開の2回だ。ひとつはまひろ(吉高由里子)の恋において、もうひとつは紫式部として歩んでいく文学の道において。

第5回の見どころは、なんと言ってもそのタイトル「告白」が表すように、ついにまひろが、自身の母・ちやは(国仲涼子)を殺めたのがあなたの兄であると、愛する藤原道長(柄本佑)に告げる場面である。

前回「五節(ごせち)の舞」の場で、道長が母を殺めた藤原道兼(玉置玲央)の弟だと知って倒れたまひろに、父である藤原為時(岸谷五朗)は、改めて、道兼が咎人(とがにん)であるということは胸にしまって生きてほしいと頼む。

「お前が男であれば、大学で立派な成果を残し、自分の力で地位を得たであろう。だが惟規(のぶのり/高杉真宙)はそうは行かぬ。誰かの引き立てなくば真っ当な官職を得ることもできない」。可愛い弟のため、ここは忍んでくれ、と言う父に、しかし聡明であるからこそまひろは反発する。

そんなある日、道長から文が届く。「五節の舞の日、倒れられたと聞いた。胸を痛めておる。ぜひ会って話がしたい。次の満月の夜、藤原為時殿の屋敷を訪ねる」。父の目を避けるため、まひろは散楽一座の直秀(毎熊克哉)に、屋敷でない場所で会えるように手引きをしてほしいと頼む。

そしてクライマックス、満月の夜、廃屋でのまひろと道長の再会の場面である。月明かりだけに照らされたほの暗い廃屋にやってきた道長は、身分を隠していたことをわびる。まひろは「三郎が道長様だったから、倒れたのではありません」と告げる。「あなたの隣に座っていた男の顔を見たからなのです」「6年前、母はあなたの兄に殺されました。私の目の前で」。

ことの顛末を涙ながらに畳み掛けるように訴えるまひろに、道長はただ茫然自失のまま、「すまない。謝ってすむことではないが一族の罪をわびる。許してくれ」と頭を垂れる。そしてこう言うのだ。「俺はまひろの言うことを信じる。すまない」。

それを聞いて堪えてきたものが一気にこみ上げてきたまひろは、しゃくりあげながら「三郎に謝ってほしかったわけじゃない。ただ、道兼のことは生涯呪う」と告げる。「恨めばよい」と言う道長。

しかし、それでも違う。本当のところはそうじゃないのだ。まひろは「あの日、私が三郎に会いたいと思わなければ。あのとき、私が走り出さなければ、道兼が馬で落ちなければ、母は殺されなかったの。だから、母上が死んだのは私のせいなの」と泣きじゃくるのだ。

そう、まひろが誰を憎む、恨むといっても、心の奥底で本当に責めていたのはあの日の自分自身だったのだ。何年経っても拭えない苦しさは、その悔いであったのだ。道長への恋が母を殺し、手をかけた咎人は恋する人の兄だった。もうこれは二重三重に苦しい。

大河ドラマ「光る君へ」第5回より ©️NHK

去る2月10日放送の「土スタ」(NHK)に吉高由里子が出演していたときに、ビデオ出演した柄本佑が、このときの吉高を「ゾーンに入っていた」と評していたが、この場面の演技はとにかく圧巻。

思い出したのが、やはり吉高が主演を務めた2014年のNHK連続テレビ小説「花子とアン」だ。あの中で、吉高演じる村岡花子が長男を亡くして号泣する場面があったのだが、そのときの演技も素晴らしかった。耐えに耐えてきたものが一気に堰を切ったように流れ出す。そうした感情表現が、非常にうまい役者さんだなと、今回そんなことも思い出しながら改めて感じ入った場面だった。コップの縁ギリギリの繊細な感情の揺れを演じさせたら、やはりこの人はすごい。

道長は東三条殿へ取って返し、道兼を問い詰めるが「(あの日)お前が俺を苛立たせなかったら、あんなことは起きなかったんだ」と言われて愕然とする。ここにも己を責める人間が苦しみを抱えることになるのだった。

第6回は「二人の才女」。ついにまひろが、後の清少納言・ききょう(ファーストサマーウイカ)と出会うことになる。

まひろに真実を告げられた後、道長は、父・藤原兼家(段田安則)にこう諭される。「道兼には道兼の使命がある。道隆(井浦新)とお前が表の道を行くには、泥をかぶる奴がおらねばならぬ」。

そんなある日、道長は、ともに四条宮で学ぶ藤原行成(ゆきなり/渡辺大知)から、仲間である藤原公任(きんとう/町田啓太)と藤原斉信(ただのぶ/金田哲)が花山天皇(本郷奏多)の叔父・藤原義懐(よしちか/高橋光臣)から屋敷に招かれたと聞く。自分たち右大臣家を排除する動きを察した道長は、長兄・道隆に報告。道隆は、力で抑えつけるのではない懐柔策をと考え、妻・高階貴子(板谷由夏)の助言で、若者たちを招いて漢詩の会を開くことに。

この会の講師として招かれたのが、まひろの父・為時。出席者に道長の名がないことを確認して、まひろも供をすることにした。そこに為時とともに講師を務める清原元輔(もとすけ/大森博史)と一緒にやってきたのが、娘のききょう、のちの清少納言なのだった。

公任のみごとな漢詩に対するまひろの評に、明るく闊達に「私はそうは思いません」と言って、独自の見解を述べるききょう。現在も平安期の二大女流文学者として比べられることの多いこの二人が今後どうなっていくのか、またひとつ新たな楽しみが加わった。

大河ドラマ「光る君へ」第6回より ©️NHK

そして一方、その会場には、来ないはずの道長も遅れてやってきたのだった。目をそらすまひろをじっと見つめる道長。その夜、まひろに道長から文が届いた。
「ちはやぶる 神の斎垣(いがき)も 越えぬべし 恋しき人の みまく欲しさに」
〈私は、越えてはならない神社の垣根も踏み越えてしまいそうです。恋しいあなたにお会いしたくて〉

二人を隔てる壁がいくつも立ちはだかっていくなか、互いの思いはどこへ向かうのか。

うーん、もう次の日曜日が待ち遠しい! 次は6時からBSも見よう。


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