F1の超大口径を実現!フォクトレンダー「NOKTON 50mm F1 Aspherical」レビュー

近年、矢継ぎ早に製品投入を続けるコシナから、フォクトレンダーブランドとしては2021年4月に発売された「APO-LANTHAR 35mm F2 Aspherical」以来、約3年ぶりとなるソニーEマウント用レンズが発表された。それが今回紹介する「NOKTON 50mm F1 Aspherical E-mount」だ。

NOKTON 50mm F1 Aspherical E-mount

SPEC ●焦点距離:50mm ●絞り値:F/1-F/16 ●最短撮影距離:0.45m ●フィルター径:φ67mm ●外形寸法:φ79.3mm×69.3mm ●質量:590g ●対応センサーサイズ:フルサイズ ●対応マウント:ソニーE ●価格:¥264,000(税込)●発売日:2024年3月発売予定

フォクトレンダーのソニーEマウント用レンズ群は、2016年4月に発売された「SUPER WIDE-HELIAR 15mm F4.5 Aspherical III」を皮切りに、本レンズの登場で15本目。焦点距離では超広角10mmから中望遠110mmのマクロレンズまで、レンズファンを楽しませる個性派が出揃う。

もちろん、すべてがマニュアルフォーカス専用レンズで、撮影プロセスまで含めてじっくりと被写体と向き合う仕様となるが、本レンズも同様、単に装着可能なだけでなく、電子接点や距離エンコーダーを搭載し、カメラボディとの電気的な連携はしっかりと確保されている。

ソニー「α7 IV」に装着した様子。電子接点や距離エンコーダーを搭載しており、フォーカスリングの操作によるファインダーの拡大表示や、被写体までの距離情報を使用する5軸ボディ内手ブレ補正にも対応

また、開放F値「F1」という、一瞬、見紛うばかりの数値も心揺さぶられる。モデル名に冠した“ノクトン”はラテン語の夜“ノクト(Noct)”を語源とし、夜でも撮れる明るさがあるレンズとして、フォクトレンダーレンズの中でもF1.5以下の大口径レンズのみに与えられる称号だ。耽美で優雅な響きを持つ“夜想曲(ノクターン)”もこのノクトが由来とされている。

レトロ調な趣を残す精緻な質感の本体を手にすると、金属から伝わる冷たさと適度な重みで背筋が伸びる。重量は590g。軽いとは言わないが、ソニーのフルサイズボディとのバランスはよく、高級感もあり見た目も負けてはいない。

遠景から近接まで、クリアで安定した描写

■遠景から近接まで、クリアで安定した描写

ちまたの50mmと比べるとボリューミーに感じるかもしれないが、本レンズは、フォクトレンダーのフルサイズ用レンズとして最も明るく、一般的に大口径単焦点レンズの代名詞的な開放F値である「F1.4」と比べて2倍の明るさを実現している。そう考えれば、ミラーレス化以降、各社大口径レンズの大型化が顕著な中、MF専用レンズであることを差し引いても、かなりコンパクトであると言えるだろう。

そして、そのコンパクトさの一翼を担っているのが、レンズ第一面に採用された研削非球面レンズだ。今でこそ非球面レンズはポピュラーだが、そのほとんどはモールド製法。一方、本レンズに使われている非球面レンズは、研削工法で手間やコストがかかる代わりに、モールド製法では使用できないガラス材料を使うなど、より高性能や個性的なモノづくりをできるのが特長だ。

実際に撮影してみると、日中、適度に絞り込んだシーンでは、極めてシャープで繊細な描写が楽しめる。一方、夕刻以降はノクトンの本領を発揮。見た目はレトロでも、中身は最新鋭。ピントリングをゆっくり廻せば、順に姿を見せるピントピークとボケの共演に気持ちが高ぶる。

再生画像を眺めてもクリアで、遠景から近接まで安定した描写。単なるオールドレンズのそれとは世界が違い、浮き立つボケと最新デジタルカメラの能力を引き立てる両方の顔を持つ。夜の散歩がこれほど楽しくなるレンズは数少なく、スタンダードレンズのひとつのあるべき姿として、記憶に残る1本だ。

(提供:株式会社コシナ)

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