TSMC、「日本モデル」で世界展開に備える―香港メディア

香港01は、台湾の半導体大手TSMCが熊本工場を柱とする世界戦略を展開する可能性を報じた。写真出典:Taiwan Semiconductor Manufacturing Co., Ltd.

香港メディア・香港01は、台湾の半導体製造大手TSMCが熊本に建設した工場が年内に量産を開始し「日本モデル」を柱とする世界戦略を展開すると報じた。

記事は、TSMCの熊本工場が今月24日に竣工式を行い、今年10〜12月期に12nm、16nm、22nm、28nmプロセス半導体の量産を開始する予定だと紹介。半導体業界の専門家からは熊本工場がTSMCにとって顧客の地政学やサプライチェーンに関するニーズに対応するグローバル拠点として重要な存在になるとの声が出ていると伝えた。

そして、TSMCが米アリゾナ州で20年5月より4nmプロセスの量産工場を建設する計画を進めているほか、23年8月にはドイツの子会社に出資してドレスデンに工場を建設する方針を示す中、熊本工場はTSMCの新たな海外戦略で最初に稼働する海外工場になると紹介している。

その上で、台湾工業技術研究院の楊瑞臨(ヤン・ルイリン)院長がTSMC熊本工場の急速な進展について、国や現地行政による補助の進捗や規模、サプライチェーンの充実度や支援の度合い、そして人件費などの運営コストという3つのポイントにおいて優位性を持っていることに関係していると指摘したことを伝えた。また、台湾の陳良基(チェン・リアンジー)前科学技術部長も同様の見方を示し、「日本の半導体産業は依然として強固な基盤を持っており、設備と材料において大きな優位性を持っている。また、台湾と日本は常にサプライチェーンで深いつながりがある。そして、市場が近くスケールメリットが十分に得られる点も大きい」と分析したことを伝えた。

さらに、台湾メディアの報道として、TSMCが日本工場を完成させた意義について「海外戦略が成長を促進し、経営状態が安定する」「台日本産業連合が地域生産に相乗効果をもたらす」「日本工場はTSMCの越境経営の練習場となる」「ドイツと米国での工場建設の進展を促進する」「半導体ウエハー産業の成長に向けたビジネスチャンスを獲得する」という5点を挙げたことを紹介。楊氏が「米国はTSMCにとって最大の市場であり、日本よりも需要が大きい。もし米国の補助金額が期待通りでない場合、熊本工場は米国とドイツの顧客のニーズを満たすTSMC第2の供給源となり、TSMCの世界戦略上で重要な拠点になる可能性がある」と論じたことを伝えた。(翻訳・編集/川尻)

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