能登半島地震/国交省が現行耐震基準の妥当性検証へ、被害原因分析で有識者委設置

国土交通省は能登半島地震で発生した建築物の構造被害の原因分析を行う有識者委員会を立ち上げ、14日に東京・霞が関の同省内で初会合を開いた=写真。建築構造の専門家に加え、建築設計や建築審査の実務者らが参画。国土技術政策総合研究所(国総研)や建築研究所(建研)が実施中の調査に加え、日本建築学会が今月始める建物被害の悉皆(しっかい)調査などを通じ基礎データを収集し、有識者委で被害原因を分析する。技術的見地から耐震安全性の確保などに関する検討成果を秋ごろまでにまとめる。
初会合では冒頭、今村敬住宅局建築指導課長が「現地の調査結果を踏まえ正確な被害状況を把握し、科学的にしっかり検証・分析する。皆さまの知恵を借りながら、必要な対策を考えていきたい」と述べ、既存の調査結果の説明に続き、今後の検討事項や分析方針を確認した。
検討事項は▽構造躯体などの耐震安全性の確保▽建築物の使用継続性や復旧・復興容易性-の2点。耐震安全性は低層木造やRC造など建物類型別に被害状況を把握。奥能登の地震地域係数が「0・9」と設定されていることと実際の被害の関係性も検証する。使用継続性は地震後の建築物の損傷状況を調査することで検証。天井や非構造壁の被害原因、耐震改修や免震化の効果についても調べる。
建築学会の悉皆調査は石川県輪島、穴水、珠洲の3市町の一定エリア内で3月ごろまで複数回行う。顕著な被害が出ている低層木造建築物を対象に、▽1981年5月以前に建設された旧耐震建築物▽81年6月~2000年5月に建設された新耐震建築物▽耐震基準が強化された00年6月以降に建設された建築物-の3パターンに分けて被害状況を確認する。RC造建築物は一部で沈下や転倒の被害が出ており、そのメカニズムを解明するため基礎ぐいや地盤の影響分析を行う。
特に新耐震建築物の被害の有無に焦点を当てて原因分析に当たることで「現行基準の妥当性を技術的に検証する」(前田亮住宅局参事官〈建築企画担当〉)ことが有識者委の狙いとなる。石川県内の住宅の耐震化率は18年時点で全国平均を下回る82%にとどまっており、旧耐震建築物の解消をどう後押ししていくかも課題となる。まずは建築学会の悉皆調査を踏まえ、春ごろに開く第2回会合で被害状況の詳細な分析結果を確認する予定だ。

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