角田裕毅も期待するVCARBとレッドブルの連係強化に物言い… マクラーレンCEOが「ファンが期待することではない」とFIAに対処を要求

2005年にコンストラクターとしてF1に参戦したレッドブルは同年11月に老舗チームのミナルディを買収してトロロッソを設立。以降、このイタリア読みのチームを「セカンドチーム」としてドライバーの育成に利用し、ここで経験と実績を積んだ逸材を昇格させることで、多くの勝利を築き上げてきた。
現在、絶対王者として君臨しているマックス・フェルスタッペンも、2015年に17歳でトロロッソに加入し、ここで1年強を過ごしてレッドブルに昇格し、現在の栄光に至っているが、彼のようにレッドブル・ジュニアチームで下部カテゴリーに参戦し、F1への階段を駆け上がった中には、角田裕毅も含まれている。

「姉妹チーム」としての関係性を保ちながら、トロロッソは2020年からレッドブルのファッションブランド名であるアルファタウリに名称を変え、さらに今季からはビザ・キャッシュアップRB(以下VCARB)という物議を醸すことになった新たなネーミングでスタートを切ることになった。

昨季より、このレッドブルのセカンドチームは、ここ数年の独自開発の路線が誤っていたことを認め、よりグループ内での連係を強めることを明言。レギュレーションの範囲内で、現在F1を席巻している王者チームから譲渡可能なコンポーネント(ギアボックス、クラッチ、サスペンション、リアインパクト構造など)を使用することで、過去2年間の低迷からの脱却を狙っている。

ローラン・メキーズ新チーム代表は、オランダのF1専門メディア『RN365』に対し、「これは新しいプロジェクトであり、他のチームのモデルをコピーしようとしているわけではない」として、独立した組織として独自のアプローチでシーズンに臨むことを強調しているが、技術面については「可能な限りレッドブルと共有していく」と語った。

角田も、「VCARBはこれまでよりも、密接にレッドブルと協力するでしょう。それは良いニュースです。レッドブルは過去数年間、レースを支配しており、我々は規則の範囲内でその経験を活かすための全ての機会を利用します」と、チームの方向性を好意的に受け止め、期待を寄せている。

しかし、以前からレッドブルによる2チーム体制には外部から疑問の声が上がっており、ましてやVCARBがレッドブルの育成機関の役割から、ともに勝利を狙う関係性に変化したとなれば、両チームの協力は双方に大きなメリットをもたらす一方で、ライバルにとっては小さくない障害となると指摘する意見も聞かれる。
そんな中でマクラーレンのザク・ブラウンCEOは、グリッド上にレッドブル系の2チームが存在することは、この「オーストリアの巨人」がこの競技において大きすぎるアドバンテージを得られるとして、統括機関のFIA(国際自動車連盟)に対して、規定の再検討を求めた(スポーツ専門チャンネル『Sky Sports』より)。
「スポーツは今や、公平な競技の場に移った。2つのチームが同じ所有者を持つことは、もはやファンが期待することではない。ゆえに、FIAはこの件について、何か対策を講じる必要がある。私はスポーツ全体の利益を代表している。他の全ての主要なスポーツを見ても、2つのチームを所有することは許されていない」

「15年前にはトップチームと下位チームの間には大きな格差があったため、所有者が同じの2つのチームが存在することは許されていたが、現在では予算上限が設定されており、全チームがほぼ同じ条件で運営している。これは公平な競技の場だ」

昨年12月にも、ブラウンCEOは「各チームの、コース内外での意思決定に影響を与えるため、それは健全ではない。多くのデータへのアクセス、コンポーネントや人員の共有、さらに戦略決定への影響があるとなれば、規則の趣旨には合致していない」とレッドブル・グループを批判している。

一方、これに対してVCARBのピーター・バイエルCEOは、「レギュレーションによって、チーム同士が得点の相乗効果を発揮することが認められている」と、正当なものであることを主張。ただ、それは非技術分野での協力であり、マーケティング、コミュニケーション、スポンサー獲得などでのものであると説明し、コンポーネントの共有についても「規定通りであり、フェラーリとハースのように、他のチームも同様の関係にある」と主張する。

果たして、この件が今後、どのように動いていくかが興味深いところだ。2月15日に新型マシン「VCARB01」のシェイクダウンを実施した新生チームが今季、高い戦闘力を発揮するようであれば、論争が激化していくことは間違いないだろう。

構成●THE DIGEST編集部

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