通学カバンが重くなった!タブレット端末など持参の負担減へ メーカーが商品開発 GIGAスクール構想に対応

パソコン(PC)やタブレット端末を学校に持参するようになったことで、通学カバンの「重さ」が増し、生徒の体への負担増が懸念されている。その対策となる商品開発をメーカー側も進めている中、 学校用水着開発の大手「フットマーク」(本社・東京都墨田区)が「重さを感じにくい構造」の通学カバンを新発売した。文部科学省の調査や現場の声などを踏まえ、開発担当者に話を聞いた。

同社は2017年から中高生を対象に通学カバンの軽量化を図った「RAKUSACK (以下、ラクサック)」と名付けた商品をシリーズ化して発売。今回の新商品は「RAKUSACK GROW(以下、グロウ)」という名称だ(色は黒のみ)。

担当者は同シリーズ全体のテーマについて「カバン自体の重さを軽くするのではなく、重たい教科書をしっかりと止められるブックストラップなどで重さを感じにくい構造をつくり出しているのが特徴」と説明。今回の「グロウ」(税込小売希望価格1万6500円)開発の背景には、文科省が2019年度に打ち出し、21年度に本格スタートした「GIGAスクール構想」がある。

同構想とは、義務教育段階にある小中学生に「1人1台のパソコンやタブレットの端末」を与え、「ICT環境」(※通信技術の教育現場への導入)を整備・活用するというもの。文科省初等中等教育局の「義務教育段階における1人1台端末の整備状況(令和4年度末時点)」によると、全自治体のうち99.9%に当たる1810自治体が22年度内に整備を完了。「端末利活用状況等の実態調査(令和3年7月末時点)」では、全国の公立小中学校の96%以上で「全学年または一部の学年」で端末の利用が既に始まっているという。

紙の教科書だけでなく、PCやタブレット端末が授業に導入されたことは時代の必然ともいえるが、持ち運びする教材の重量はこれまで以上に増えた。同社が行った調査では現場からさまざまな報告が寄せられた。

「現在の中学生の持つカバンは平均10キロで、カバンの重さによる体の不調を訴える生徒もいる」「部活動の荷物を含めると1人2個以上持つ風景も珍しくない」「教科書の『置き勉』(※教材を学校に置いて登下校すること)を許容する学校が増えてはいるが、実際は盗難の心配や宿題、塾で使うケースもあるため、持ち帰る量はさほど変わっていないのが現状」「現在は教科書からタブレット端末への移行期間でもあるため併用している生徒が多い。そのため以前より一時的に荷物が増えている学生もいる」

そういった声から、同社では「体への負担軽減の工夫」を掲げ、教科書とタブレット類の併用によってカバンの容量が必要とされていることを踏まえて「収納力アップ」を焦点に今回の新商品を開発。PCやタブレットを収納する専用ポケットのほかに「小物を収納できるポケット」や「カバン自体の耐久性」にも対応した。

具体的には、自転車や家の鍵、ハンカチ、ティッシュ、マスク、日焼け止め、目薬、リップクリーム、生徒手帳といった「小物」を定位置に収納できるポケットや、折り畳み傘などを収納できるサイドポケットを付けた。表面には撥水加工も施した生地を使い、縦長の底鋲付きで、底部分の耐久性もアップ。PCなどの機材を守る防水対策として、軽量で取り外し可能なレインカバーを背面下部に内蔵し、開口部には防水ファスナーを装着した。

1月25日の発売から利用者の反応も報告されている。同社の担当者は「収納ポケットが充実しているので、整理整頓が苦手な自分でも整理ができそう」「機能が充実してシンプルなデザインなので、通学以外の場面でも使用できそう」といった声を紹介した。

担当者は「一つ前に発売したモデルを使用した生徒の意見や要望を取り入れたのが今回の新商品。ご兄弟で使用している親御さんからは、最新モデルを弟や妹に購入してあげたいという方もいて、この商品シリーズが認知されつつあると実感しております。これからも商品を実際に使用される子供や生徒さんの声を聴いて『1/1の視点』、つまり『たった1人の言葉を大切にして商品開発をすること』の視点を持って商品開発を進めていきたい」と展望を語った。

ただ、「通学カバンの重量増」という現実は変わらない。モノ(教材)を収める〝器〟(カバン)に工夫を凝らしても、その〝モノ〟自体が減るわけではない。民間レベルではメーカーの企業努力によって対策商品が生み出されているが、いわば〝対症療法〟的なもの。根本的な問題解決に向け、例えば、実現困難となっている「置き勉」を新たな対策や条件付きで再検討するなど、生徒の負担軽減につながる具体案を模索していくことが今後の課題となっている。

(デイリースポーツ/よろず~ニュース・北村 泰介)

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