“犬映画”はなぜ人気? 『ペット』『クイール』『僕のワンダフル・ライフ』などから探る

2月16日の日本テレビ系『金曜ロードショー』で放送される『ペット』(2016年)。飼い主が出かけている間のペットたちの秘密の生活を描いた本作は、『ミニオンズ』シリーズなどでも知られるイルミネーションの名作だ。デフォルメされた犬や猫、インコやハムスターなどの姿がかわいらしく、人気も高い。こうした動物映画はいつの時代も人々に愛され、多くの作品が作られつづけている。

なかでも約1万5000年前から人間のパートナーとしてともに暮らすようになったと言われている犬は、今でもペットとして高い人気を誇り、彼らを題材にした映画も多い。

本稿では、そんな犬映画のオススメ作品を紹介しよう。感動の実話からコメディまで、バラエティ豊かな作品を楽しんでほしい。

■犬と人間の絆を描く感動作

犬映画といえば、『僕のワンダフル・ライフ』(2017年)がよく知られている。何度も転生し、さまざまな一生を送る犬を、犬の視点から描き出す本作は、犬にとっての幸せや、人間の勝手さに振り回される悲しみをありありと映し出す。何度も生まれ変わり、呼び名や境遇が変わっても、犬の喜びは飼い主とともにあること、飼い主を幸せにすることだという。本当にそうなのかはわからないが、犬を飼う人たちは、そのような実感があるのだろう。

犬の寿命は人間よりも短く、亡くなった犬に生まれ変わってまた会いに来てほしいと願うのも人間だ。犬も同じように思っていると感じられると、胸が締め付けられるような、嬉しいような、なんとも言えない感情になる。

■実話ベースの泣ける作品が多い日本

一方で、日本の犬映画には、実話ベースの感動作が多い。渋谷駅前の銅像で知られる『ハチ公物語』(1987年)や南極観測隊とそり犬の苦難を描いた『南極物語』(1983年)など、その例は枚挙にいとまがない。

2004年の『クイール』は、秋元良平と石黒謙吾による『盲導犬クイールの一生』を原作に、実在した盲導犬の一生を描く。生まれてから盲導犬候補としてパピーウォーカーに育てられ、厳しい訓練の末に立派な盲導犬となったクイールは、頑固で偏屈な男の相棒として充実した日々を送る。何度かの別れをくり返し、クイールがその愛に満ちた生涯を閉じるまでが描かれ、普通の犬以上に多くの別れを経験する盲導犬の一生とはどういうものなのかを知ることもできる。また視覚障がいのある人と盲導犬とは、本当に強い絆で結ばれているのだと思わされる。

『ひまわりと子犬の7日間』(2012年)も宮崎県の中央動物保護管理局で起こった実際の出来事をベースに、野良犬の母子と管理所職員の絆を描いたドラマだ。保健所に勤める動物好きの神崎彰司(堺雅人)は、保護犬たちの里親を探しつつ、同時に収容期限を過ぎた犬たちを殺処分しなければならない現実にも苦しんでいた。そんなある日、彼は山中で3匹の子犬を育てる母犬と遭遇。人間からひどい仕打ちを受けてきたらしい母犬は気性が荒く、里親を見つけるのは不可能と思われていた。かなりシビアなテーマだが、子犬のかわいらしさ、母犬の子犬たちを守ろうとする行動、そして犬たちを救おうと奮闘する神崎の姿に胸を打たれる。

■犬と人間のコンビが作り出すコメディ

人間と犬の絆を描く物語は、なにも涙を禁じえない感動作ばかりではない。1989年の『ターナー&フーチ/すてきな相棒』では、刑事のスコット・ターナー(トム・ハンクス)が殺人事件の目撃者として、しつけの悪い犬フーチを引き取ることになり、悪戦苦闘しながらともに事件を追うストーリーだ。「超」がつくほどの潔癖症のターナーに対し、フーチはよだれを垂れ流しながら走り回り、彼の家や捜査やロマンスをことごとく台無しにしていく。しかし次第に1人と1匹はかけがえのない相棒になり、ともに事件解決を目指す。彼らが良好な関係を築くまでには、どちらかといえばターナーが考えを変える必要があった。フーチのほうはいつでも彼の相棒となる準備ができていたのだ。人間と犬がバディを組むためには、いつも人間のほうに覚悟や準備が必要になる。

強い絆といえば、『でっかくなっちゃった赤い子犬 僕はクリフォード』(2021年)も少女と赤い巨大な犬の絆の物語だ。アメリカの児童文学作家ノーマン・ブリッドウェルの名作絵本『クリフォード おおきな おおきな あかい いぬ』を実写映画化した本作。

少女エミリー(ダービー・キャンプ)は不思議な男の店で赤い子犬を貰い受ける。多くの映画で、不思議な生き物というのは、正体不明の謎の人物の店で手に入れられるものだ。学校でいじめられているエミリーは、ある晩「大きく強くなれたらいいのに」と願う。翌朝目が覚めると、クリフォードが巨大化していた。困り果てたエミリーは例の店の主人を探そうとするが見当たらない。そんななかクリフォードは遺伝学会社の社長に目をつけられてしまう。実験体にされそうになるクリフォードを救うため、エミリーと叔父のケイシー(ジャック・ホワイトホール)や同級生のオーウェン(アイザック・ワン)は、変わり者の隣人たちと力を合わせて困難に立ち向かう。

クリフォードは、成犬ではなく子犬の姿のまま巨大化し、そのかわいらしさがなんとも言えない。また本作のクリフォードはここで紹介したほかの作品に登場する犬たちと違い、フルCGで作られている点にも注目だ。リアルに寄せすぎないながらも、現実味のある表情と動きに感心するだろう。近年では、CGの技術も進み、こうしたリアルなCG犬や部分的にCGを用いた犬が活躍する映画も多い。

古くから人間のパートナーとして暮らすようになった犬との関係は、家族や友人との関係と同じように人々の心を揺さぶる。言葉が通じなくても、ときに通じないからこそ、ペットと人間の関係は特別なものに感じられるだろう。犬と人間は、ともに豊かな人生を送るための相棒として、寄り添うのかもしれない。

(文=瀧川かおり)

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