『ファンタスティック・フォー』の舞台は1960年代!? マーベルの立役者がついにMCU合流

こんにちは、杉山すぴ豊です。ここ最近のアメコミヒーロー映画まわりのニュースや気になった噂をセレクト、解説付きでお届けします! 先日リリースされた『デッドプール&ウルヴァリン』の予告編(なんと24時間で3億6500万回再生され、歴代最高記録!)の興奮冷めやらぬ中、今度は『ファンタスティック・フォー(原題)』のキャストとロゴ、そしてコンセプトアートがマーベル・スタジオからリリースされました。米国時間の2月14日。ヒーロー映画ファンにとって最高のプレゼントとなりました!

■キャスト4人が正式に発表

“ファンタスティック・フォー”とはなんぞやというのはこの後ご説明しますので、まずは正式発表になったキャスティングを。“フォー”というぐらいですから、4人組のヒーローチームです。

伸縮自在の体を持つ天才科学者、ミスター・ファンタスティックことリード・リチャーズ役に『マンダロリアン』『THE LAST OF US』のペドロ・パスカル、不可視光線や透明バリアを操るインビジブル・ウーマンことスー・ストーム役に『ザ・クラウン』、『ミッション:インポッシブル』シリーズのホワイト・ウィドウ役で知られるヴァネッサ・カービー、全身に炎を纏って空を飛ぶヒューマン・トーチことジョニー・ストーム役に『ストレンジャー・シングス 未知の世界』でエディ役を演じたジョセフ・クイン、岩石のような体を持つザ・シングことベン・グリム役にドラマ版『パニッシャ―』『一流シェフのファミリーレストラン』のエボン・モス=バクラックが決定しました。

監督は、MCUドラマ『ワンダヴィジョン』のマット・シャックマン。全米公開日は2025年7月25日で、今年の夏から本格的に撮影開始です。

■マーベルがブレイクするきっかけを作ったヒーロー

では改めて、ファンタスティック・フォーとはなにか? 宇宙線を浴びスーパーパワーを得た4人の男女が、その力を人々のために役立てようとヒーローチームを結成したのが、「ファンタスティック・フォー」です。

原作コミックは、1961年にマーベルから出版されました。このコミックの大ヒットによりマーベルは注目され、以後ハルクやソー、スパイダーマン、X-MENなどを発表します。つまり、マーベルがブレイクするきっかけを作ったヒーローたちなんです。なお、音楽史においては1960年にビートルズが生まれていますから、その後の音楽界・コミック界に影響を与える4人組がほぼ同時期にデビューしたというのも面白いですね。

ファンタスティック・フォーがウケた理由は、人間ドラマをヒーロー物に持ち込んだからとされています。この4人は夫婦、姉弟、親友同士という関係で成り立っており、要は家族なのです。そして、スケールの大きなSF冒険活劇でありながら、夫婦喧嘩などの家族のもめごとが描かれたりする。

海外の研究書では、スーパーヒーロー×ソープオペラ(家族ドラマ、メロドラマ)という組み合わせが画期的だったと書かれています。人間臭いヒーロードラマというのは、その後に続くマーベルの持ち味になっていくわけです、例えば、スパイダーマンがスーパーヒーロー×青春ドラマだったように。

というわけで、マーベルの歴史を語る上でとても重要なヒーローたちなのですが、なぜ今頃映画化されるのでしょうか。または「え? ファンタスティック・フォーの映画ってすでにあったよね?」と思う方もいるかもしれません。

実は、マーベルの映画部門マーベル・スタジオが、MCUが立ち上がる前にこのヒーローたちの映画化権を20世紀フォックス(現・20世紀スタジオ)に渡していたため、MCU版ファンタスティック・フォーを作ることができなかったのです。

その間、20世紀フォックスは3つのファンタスティック・フォー映画をリリースしています。『ファンタスティック・フォー[超能力ユニット]』(2005年)、『ファンタスティック・フォー:銀河の危機』(2007年)、そして『ファンタスティック・フォー』(2015年)です。前2作はシリーズ、2015年版はそのリブートにあたります。2005年と2007年版でヒューマン・トーチを演じていたのがクリス・エヴァンスで、2015年版では同役をマイケル・B・ジョーダンが演じていました。

その後、デッドプール、X-MEN同様、20世紀フォックス自体がディズニー(現在のマーベルの親会社)傘下になったため、マーベル・スタジオがファンタスティック・フォーの映画化権を取り戻し、晴れてMCU版にGOサインが出たというわけです。

ですが、すでにMCUではファンタスティック・フォーがデビューしています。『ドクター・ストレンジ/マルチバース・オブ・マッドネス』において、ドクター・ストレンジが別バースで会うヒーローの1人としてミスター・ファンタスティック/リード・リチャーズが登場しているのです。この時演じていたのは『クワイエット・プレイス』のジョン・クラシンスキーでした。ジョン・クラシンスキーは、ファンの中でリードを演じてほしい役者の候補として常に名前があがっていましたから、マーベルもそれを意識してのキャスティングだったのかもしれません。僕はこのままジョン・クラシンスキーが続投かと思ったのですが、役者を変えたようです。

■舞台は1960年代!?

今回お披露目になったロゴとコンセプトアートですが、ちょっとレトロな感じです。そして、コンセプトアートのほうでザ・シング(オレンジ色の岩のような肌の怪人)が読んでいる雑誌。これがどうやら、『LIFE』誌の1963年12月号(表紙がジョンソン大統領)っぽいとの指摘があるのです。つまり、MCU版『ファンタスティック・フォー』はコミックがデビューした1961年に近い、1960年代が舞台の可能性があります。

もしそうだとすれば、1960年代のヒーローである彼らがどうやって現代のMCUに参加するのでしょうか? 2つの可能性があります。1つは別バースの、1960年代の世界から今のMCUにやってくるパターン。この場合、いまのMCUにはもともとファンタスティック・フォーなるヒーローたちはいなかったことになります。前述の『ドクター・ストレンジ/マルチバース・オブ・マッドネス』において、ドクター・ストレンジは別バースでミスター・ファンタスティック/リード・リチャーズに会うまでファンタスティック・フォーの存在を知らなかったので辻褄が合いますよね。

もう1つは、キャプテン・アメリカ同様、過去に活躍していたがなんらかの理由で行方不明になり、その存在が忘れられていたパターン。また、キャプテン・アメリカ以外にもMCUにおいては初代アントマンやワスプが1980年代に、キャプテン・マーベルが1995年頃に活躍していたが、その存在を公には知られていなかったし、エターナルズにいたっては誰も気づいていなかった。彼らは過去に生まれているのに関わらず、続々と“現代”のMCUに登場しているわけです。このどちらかのパターンで、1960年代のファンタスティック・フォーが2025年のMCUにやってくるのではないかと考えられます。

また、コンセプトアートにはかわいらしいロボットも描かれていますが、これはH.E.R.B.I.E. the robotというキャラ。もともと諸般の事情で1978年のTVアニメ版『ファンタスティック・フォー』にヒューマン・トーチを登場させられなかったので、急遽4人目のメンバーとして考案されたロボットです。後にコミックのほうにも登場しました。

■ヴィランが気になる! カーンとの関係は?

とにかくファンタスティック・フォーのMCU参戦は本当に嬉しいですが、もう一つ気になるのは、登場するヴィランは誰で、誰が演じるかです。

ファンタスティック・フォーのコミックは、魅力的なヴィランの宝庫! その中でもダース・ベイダーの元ネタの一つと言われたドクター・ドゥームは大人気で、このキャラが登場するのではないかと予想されています。噂ではマッツ・ミケルセン、キリアン・マーフィーの名前が挙がっています。

また、シルバーサーファーという宇宙を駆ける超人の設定を女性に変え、アニャ・テイラー=ジョイが演じるというすごい噂も。今度の映画は、MCUにすごいヴィランを登場させる役割も担っていると思われます。コミックでは、カーンの事実上のデビュー作(この時はラマ・タトという名)は『ファンタスティック・フォー』誌なので、MCUの重要ヴィラン、カーンとの関係もどう描かれるか注目です。

今回、全米公開日が2025年7月25日とアナウンスされましたが、もともとこの日はMCUの『サンダーボルツ(原題)』の公開日でした。これに伴い、『サンダーボルツ』は2025年5月2日公開に変更されるとのことです。となると、2025年のMCUは、2月14日に『キャプテン・アメリカ:ブレイヴ・ニュー・ワールド(原題)』、5月2日に『サンダーボルツ』、7月25日に『ファンタスティック・フォー』が待機していることになります。期待作のラッシュで、今から待ちきれません!

(文=杉山すぴ豊)

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