遺族年金含めて「月11万円」…夫の死後、生活苦となった70歳・おひとりさま女性「年金増額の封書」が届いていたが、5年分もらい損ね大後悔【CFPが解説】

(※写真はイメージです/PIXTA)

近年、光熱費や生鮮食品など、暮らしに欠かせないものを中心に大きく値上がりし、物価高は終わりが見えない状況が続いています。多くの人が苦労してやりくりしていますが、自ら稼ぐことができなくなって年金が頼りの高齢者ほど物価高の影響を受けています。本記事では、Aさんの事例とともに、年金生活者をサポートする「年金生活者支援給付金制度」についてCFPの伊藤貴徳氏が解説します。

「年金生活者支援給付金」とは?

年金生活者支援給付金とは、年金に上乗せされる給付金のことで、消費税率が引き上げとなった令和元年10月1日から始まりました。公的年金等の収入金額や所得が一定基準以下の方に、生活の支援を図ることを目的としています。

給付金の額は、年金保険料を納付した期間によりますが、満額の場合月額5,140円が上乗せとなります。

年金生活者支援給付金を受給するためには要件があります。以下の支給要件をすべて満たしている方は給付金を受け取ることができるので、忘れずに申請しましょう。

支給要件

また、年金には「老齢」「障害」「遺族」の3種類があります。自分がどの年金を受け取っているかを確認したうえで支給要件を確認しましょう。

■老齢年金を受給されている方の支給要件

・65歳以上の老齢基礎年金の受給者である

・同一世帯の全員が市町村民税非課税である

・前年の公的年金等の収入金額とその他所得との合計額が87万8,900円以下である (障害年金・遺族年金等は含まない)

■障害年金を受給されている方の支給要件

・障害基礎年金の受給者である

・前年の所得が472万1,000円以下である

給付金額:障害等級が2級の方は5,140円、障害等級が1級の方は6,425円

■遺族年金を受給されている方の支給要件

・遺族基礎年金の受給者である

・前年の所得が472万1,000円以下である

どのように申請する?

年金生活者支援給付金を受け取ることが見込まれる方に対して、日本年金機構から「年金生活者支援給付金請求書」が送られます。同封の請求書に氏名などを記入して投函することで申請は完了します。

[図表1]封書の見本:請求書が同封されている

[図表2]請求書:必要箇所に記入をして投函する

申請し忘れるとどうなる?

年金生活者支援給付金は請求することで受け取ることができますので、請求書を提出しないと受け取ることはできません。

もし請求をし忘れていても、請求書を提出することで、その月以降の給付金を受け取ることはできますが、これまで請求しなかった月の分の給付金は受け取れませんので、早めに提出しましょう。

申請しておらず、年金をもらい損ねたAさん

Aさん(70歳・女性)は、年金を受け取りながら生活をしています。65歳のときに夫に先立たれ、夫の遺族厚生年金と自分の老齢基礎年金の合計11万5,000円を受給しています。夫の生前と比べ、年金額が減っているため、夫一人分の生活費はなくなったとはいえ、生活は苦しくなっています。

初めて年金を受給した当時、年金生活者支援給付金という制度はなかったため、Aさんはこの制度の存在を知らずに5年間過ごしていました。ある日、自宅に届いた請求書の存在に気づき給付金のことを知ります。

請求は受理され給付金は支給となりましたが、これまで請求してこなかった過去およそ5年分の給付金を受け取ることはできませんでした。

「これまで請求書は届いていたのかもしれないですが、気づかず捨ててしまったり、こんな制度があることをよくわかっていなかったので気がいかなかったのかもしれません」とAさん。

[図表1][図表2]のような封筒やハガキが届いていたら、必ず内容を確認しましょう。

「自分は不該当かも」と申請しない人も

Aさんの年金額を例にすると、年間算で約140万円の年金を受給しています。

老齢年金の支給要件のなかに、「前年の公的年金の収入金額が年間87万8,900円以下」という条件があるので、Aさんは受給できないのではないか?とお考えの方もいらっしゃると思います。

結論からいうと、Aさんは自分の老齢基礎年金と夫の遺族厚生年金を受け取っており、そのうち遺族厚生年金は計算に含めないため、老齢基礎年金のみで年間87万8,900円以下の場合は年金生活者支援給付金を受け取ることができます。

支給要件に当てはまっているにも関わらず「自分は不該当だろう」と請求されない方もいらっしゃいますので、少しでも不明な点があれば給付金専用ダイヤルやお近くの年金事務所で相談してみましょう。

<参考>

厚生労働省 年金生活者支援給付金特設ページ

https://www.mhlw.go.jp/nenkinkyuufukin/

伊藤 貴徳

伊藤FPオフィス

代表

© 株式会社幻冬舎ゴールドオンライン