工事や火災で「アスベスト飛散あった」大阪市が発表訂正 中央卸売市場本場の西棟めぐる問題で

大阪市は中央卸売市場本場西棟で新たに吹き付けアスベスト(石綿)が見つかった問題をめぐり8月3日、過去の工事や火災で飛散し労働者らが吸った可能性があったことを認め、7月の発表を訂正した。(井部正之)

大阪市による訂正発表の一部。施設の労働者や利用者のアスベストばく露を説明していないなど、複数の箇所が訂正された

◆当初アスベスト飛散なしと主張

市は7月14日、中央卸売市場本場西棟(鉄筋鉄骨造6階建て、延べ床面積約5万3047平方メートル)のはりや天井の吹き付け材(耐火被覆材)から国の基準(重量の0.1%)を超える石綿が検出されたと発表した。 市は西野田労働基準監督署の指導により、石綿検出のきっかけとなった4月の火災や、相次いでいた吹き付け材の落下事故、過去の改修工事によって石綿が飛散し、施設の労働者や利用者がばく露した可能性があることを認識していた。ところが発表では労働者や利用者の石綿ばく露を一切説明せず、「空気中に健康リスクに影響を与えるアスベストは浮遊していない状況が確認されました」などと強調した。その結果、石綿飛散の事実が実質的に“隠ぺい”された。 上記の発表で労働者や利用者に石綿ばく露リスクが適切に説明されていないほか、事実と異なる内容が含まれていると筆者が指摘して裏付け資料も提供。発表の訂正を求めた。 今回、市は「一部内容に誤り等がありました」と認め、発表を訂正した。 訂正したのは労働者や利用者の石綿ばく露リスクに関する記載など5項目。 たとえば、施設の労働者や利用者の石綿ばく露を“隠ぺい”した件では、「今後の対応」に「結果的に火災によるアスベストの飛散や、火災ごみの清掃及びこれまで西棟の工事に関わった施工事業者の皆様がばく露した可能性がある」と明記し、「今後、当該事業者への丁寧な説明」や「従事者の特定調査」をおこなう方針を示した。また「労働基準監督署の行政指導にも従い」などと労働安全衛生法(安衛法)石綿障害予防規則(石綿則)に基づく指導を受けていることにも言及した。 また当初発表で「空気環境測定の結果」に関連し、〈また、世界保健機関(WHO)の環境保健クライテリアが、「空気中のアスベストが1~10本/リットルであれば健康リスクは検出できないほど低い」との記述と比較しても低い値です〉と記載していた箇所は削除した(注釈は省略)。

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じつは報告書の「原文には存在しない」うえ、「日本の行政が2つの文章を意図的とも思える誤訳とともに都合良くつなぎ合わせた“ねつ造”といってよい代物」で、環境省では同じ意味合いの記載を筆者の指摘を受け2015年以降の発表で削除している。 市は「関係省庁や各自治体において使用されていた」と自分だけではないと言い訳しつつも、「誤解を招く表現であるとの理由から、関係省庁において、この表現自体を使用していない方向にあります」と認めた。また「本市としても、この表現を使用することによる誤解を避けるため、本文から削除する」と説明した。 労働者の石綿ばく露については、訂正により追加されたのは「火災ごみの清掃」と「これまで西棟の工事」に従事した「施工事業者の皆様がばく露した可能性がある」との記載にとどまっており、不十分である。 ほかに石綿ばく露した可能性のある人として、 (1)吹き付け材の落下時の飛散で近くにいた人 (2)吹き付け材の落下時における片付けや清掃にたずさわった人やその際に近くにいた人 (3)「火災ごみの清掃」と「これまで西棟の工事」で近くにいた人 が挙げられる。直接作業に従事していなくても、たまたまその近くにいた別の作業をしている人や施設利用者も間接ばく露した可能性があり、きちんと網羅すべきだろう。 市に問い合わせると、「わざとではないですが、抜けてしまったかもしれない」と話す。改めて追加すべきではないかと指摘したところ、「上司に報告します」と答えた。 【関連写真】大阪市・中央卸売市場本場西棟でアスベスト含有吹き付け材が火災や落下ではく離したようす

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