<北朝鮮内部>農場現地からの最新報告(6) 収穫終わるや大検閲 幹部連行し不正調査 反発も

畑でトウモロコシを収穫中の農場員たち。2023年9月下旬に平安北道の朔州郡を中国側から撮影(アジアプレス)

<北朝鮮内部>農場現地からの最新報告(1) 収穫は昨年より好転も不作か 深刻な営農資材不足で限界 (最新写真4枚)

◆検察と警察を派遣して大々的に調査

北朝鮮当局が、収穫を終えた北部の協働農場に「検閲グルパ」(監察チーム)を送り、初級幹部に対する調査を大々的に進めていることが分かった。拘留される幹部も出て騒動になっているという。咸鏡北道(ハムギョンプクド)に住む取材協力が10月下旬に伝えてきた。(カン・ジウォン

取材協力者が調査したのは、主にトウモロコシを生産する平均的な協働農場。収穫作業が9月末頃までに終了した後、主に生産物管理の不正について多くの幹部が、派遣されてきた検察と安全部(警察)の調査を受けているという。不法行為が摘発された場合、幹部職の解任の他、「労働鍛錬刑」を科すと、検閲チームは脅しているという。

※「労働鍛錬刑」 社会秩序を乱したり軽微な罪を犯したりした者を、司法手続きなしで収容して1年以下の強制労働に就かせる。警察が管理する。

◆メモ書かせて不正を密告させる「申告」とは

取材協力者は検閲の概要を次のように伝えてきた。

「検閲チームは農場員に、幹部らの不正をメモに書いて投函させる『申告』と、個別に聞き取りを実施している。1日に検察と警察の両方から、別々に『申告』や聞き取りをさせられる農民もいる。生産物管理と、肥料など営農資材購入に関連する不正について聞かれたそうだ。名前の上がった分組長、作業班長らは個別に呼び出されて調査を受けている」

※協同農場には、稲作やトウモロコシ、野菜など、担当する品目別に作業班があり、その下に生産単位の分組がある。

「今年は、生産物管理は国家に対する忠誠心の尺度だと強調している。収穫物を流出させないよう管理を徹底しろという要求だ。賄賂を受け取る行為は、特に厳しく処罰するそうで、ビビった幹部らは頭も上げられない有様だ。

個人の『トンチュ』(新興富裕層)らが、分組長たちと結託して食糧を農村で買いだめするのを摘発するのが調査の目的の一つだ。

10月中旬に、分組長の一人が検閲チームに呼び出された。農場でトラクターの装備品や部品を収穫後の後払いの約束で購入したが、その精算のためにトウモロコシ500キロを販売したことが分かり、作業班長が2人拘留されたそうだ」

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一方、業務上仕方なく食糧を販売するケースもあり、反発が出ているという。

農場でも人民軍への食事支援のノルマが課せられるが、ある分組長が、自宅で豚を飼育する農民から、秋の収穫後に後払いする約束で支援用の豚肉を購入した。その精算分として一部トウモロコシを現物で渡したが、支援する豚肉の量とトウモロコシの価格が合わないとして分組長が呼び出されて調査を受けた。

軍隊への支援は上部の命令だ。腹を立てた分組長は、「もうやめてやる」と大声を出して抗議したが、それが問題にされて拘留されてしまったという。

「この件で農場は大騒ぎになっていた」と協力者は言う。

また、この農場では、収穫後の分配がまだ行われておらず、国家計画量を超過した生産分に対する支給もまだ決まっていないそうだ。農場員たちの不満は強く、また、本当に支給が実施されるのか、不安を募らせているという。

※アジアプレスでは中国の携帯電話を北朝鮮に搬入して連絡を取り合っている。( 続く7へ >>

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