ノザワが肥料「マインマグ」のアスベスト含有ついに認める 一方で「基準超ではない」と新主張 “検証”報告書は非公表

大手建材メーカー・ノザワ(神戸市)が製造し、全国展開していた肥料「マインマグ」のアスベスト(石綿)問題について、2023年12月13日、同社は1年近くにわたる“検証”の結果、基準超の含有は「確認されませんでした」と発表。一部メディアはそのままたれ流した。同社の“安全宣言”にどの程度の信頼性があるのか、この間の取材から3回にわけて報告する。(井部正之)

ノザワの発表資料の一部。マインマグに「法令の基準を超える石綿が含有されていることは確認されませんでした」と主張

◆石綿含有を初めて公表

マインマグは、同社の石綿鉱山で過去にクリソタイル(白石綿)を採掘した際に発生する石綿混じりの廃棄物「鉱さい」を高温で焼成処理し、同社の説明によれば「完全無害化」した肥料とされる。2010年から販売。口コミで販売を伸ばし、2021年度には推計2100トン超(売り上げ額から逆算)を出荷した。

ところが筆者が2022年3月にマインマグC、miniの2製品を購入して、石綿の有無を調べる国際標準の定性分析法「JISA1481-1」により3社で分析してもらったところ、いずれも白石綿を検出。石綿繊維の分布などから含有率を推計する「目視定量」でも3社とも「間違いなく0.1%は超える」と断言した。実際に1社でマインマグCを国際標準の「JISA1481-4」で定量分析してもらったところ、石綿の含有率は0.8%だった。労働安全衛生法(安衛法)施行令で石綿の使用や製造、販売などを禁止する基準である重量の0.1%を超えるため、法違反の可能性があるとして同社のコメントも含めて2023年1月4日に報じた。

その後同社は一部の製品に基準超の石綿を含む「おそれが高い」として同1月30日、自主回収に踏み切った。 それから1年近くが経った12月13日の同社発表で注目すべきは、これまでマインマグに石綿が含まれる「おそれが高い」と説明してきたのに対し、「当該製品に法令の基準を超える石綿が含有されていることは確認されませんでした」と変わったことだ。

ここで重要なのは、石綿を「含有していない」あるいは「不検出」とするのではなく、「基準を超える石綿」の含有について、「確認されませんでした」としていることだ。つまり、暗にマインマグの石綿含有を認めている。

当初同社はマインマグへの石綿混入との指摘に対し、こう反論していた。

〈ノザワは「製造1時間ごとに焼成後の原料について検査を実施し、肥料造粒のバッチ処理毎に再度検査を実施しておりますが、現在までに、石綿が検出された事例はありません」(リスク対策部法務室)などと回答。筆者が購入した2製品の同ロット(1回の製造単位。約200キロと2022年3月に回答)についても「社内及び外部機関にて分析し、石綿は検出されておりません」(同)などと全否定した〉(2023年1月4日の拙稿)

それが同1月12日に一転する。筆者が購入したのと同じ時期の2022年3~4月ごろに製造・販売したマインマグCとminiの「一部」に「法令の基準を超える石綿」が含まれている「おそれが高いことが判明」と発表した。同社は「これまでの弊社及び第三者機関の検査において石綿が検出されたことはありませんでした」としつつも、念のため、すべての関連製品について使用を中止するよう求めた。自主回収を知らせる同1月30日の発表でも同様の説明だった。

これまで同社は当初の石綿「不検出」との主張から、筆者が購入したのと同じ時期のマインマグC、mini「だけ」基準超の「おそれが高い」との見解に変更したものの、石綿を含有していることは認めていなかった。 そもそも同社の「検証」で石綿がすべて「不検出」だったのであれば、間違いなくそう発表するはずだ。

それが今回初めて認めた。つまり、同社の「検証」でも石綿含有を否定できなかったということだろう。

◆石綿含有だが「基準内」と新主張

同社は今回初めて石綿含有を認める一方、基準超は「確認されませんでした」と新たに主張した。

発表によれば、同社は「マインマグ製品の石綿含有率を正確に分析するにあたって、専門機関による指導を仰ぎ、多方面から検証を繰り返し行いました」としている。その結果、マインマグに基準超の石綿が含有されているとの「事実は確認されない」との結論にいたったというのだ。

同社はすでに厚生労働省など関連省庁に「報告」したとも明らかにしている。 興味深い記載として、同社の「検証」では、建材などの石綿分析で使う「既存の検査方法ではその石綿の含有を正確に測定することができない」と主張。そのために分析結果が得られるまでに時間がかかったと釈明している。

ふつうの分析方法では適切に分析できないとの主張は具体的にどういうことなのか。しかし発表にはそれ以上の記載や裏付けは示されておらず、同社は「検証」したという報告書も公表していない。

発表当日、筆者は技術のわかる担当者も交えて話を聞きたいと同社に取材を申し込んだ。しかし同社は拒否。電子メールで質問を送るよう求められたのでその日のうちに、検証結果報告書の提供・公表をはじめ、検証の詳細や科学的根拠、今後の販売再開など計9項目を送った(その後1項目追加し計10項目)。ところが10日経っても返答がなかったので改めて連絡したところ、「対応を控えさせていただく」(リスク対策部法務室)と回答を拒否した。

通常、製品に重大な問題があり、自主回収までするような事態になった場合、検証結果を公表するのが当たり前だ。たとえば2018年3月、津田駒工業(石川県金沢市)は基準超の石綿を含有する部品を織機に使用していたことを発表。弁護士や社外取締役による特別調査委員会を設置し、5月に報告書を公表した。また石綿関連ではないが、認証不正問題が起きたダイハツ工業は第三者委員会による調査を実施し、その結果を公表している。これがふつうの対応だろう。

ところがノザワの場合、「専門機関による指導」のもとで、「多方面からの検証を繰り返し行いました」とあるだけで、具体的な体制や手法、内容には一切触れてない。検証過程が明かされないまま、「基準である0.1%を超える石綿が含有されているとの事実は確認されない、との結論」が一方的に提示されただけだ。同社の主張の根拠を示すはずの報告書は公表されず、取材も拒否。1年近くかかったという「検証」は完全に“ブラックボックス”だ。これでは信用などできようがない。

同社はマインマグの自主回収は「在庫数のほぼ全数を回収」済み(実数は非公表)としつつも、「混乱を回避」するために継続すると発表。販売再開については「現時点で決定した事実はありません」としたが、「公表すべき事項を決定した場合には、改めてお知らせいたします」との書き振りからはいつでも製造・販売を再開できるとの自信すら垣間見える。

だが、同社が今回発表した裏付けのない「主張」において少なくとも石綿含有を認めた以上、製品の有害性は明らかだ。あるいは製造・販売禁止などの規制には引っかからない基準内だから、石綿を含有していても販売するのに問題ないとでもいうのだろうか。同社はきちんと説明すべきだ。

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