<北朝鮮内部>外貨不足で中国元が急騰 前週比10%高で初の1400ウォン台 地方の対中貿易「カネなくて輸入できない」と不振

(参考写真)中国の1元札のお釣りを渡そうとする商売人の女性。外貨が堂々と街中で使われていたが、現在は没収までする強硬な取り締まりで表立っては使えなくなっている。2013年10月両江道にて撮影アジアプレス

北朝鮮国内で中国元の実勢交換レートが急騰している。2月7、8日に咸鏡北道(ハムギョンプクド)と両江道(リャンガンド)の非公式の外貨市場で調査したところ、1中国元が前週から10%超も高い1400ウォンに上がった。アジアプレスの調査では、1400ウォン台になったのは、2018年3月以来ほぼ6年ぶりのことだ。

調査した両江道に住む取材協力者は、10日からの旧正月直前の一時的な上昇の可能性はあるかもしれないとしながらも「国内の外貨不足が深刻なのが原因だと思う」と述べた。

◆資金不足で中国からの輸入停滞

金正恩政権は、昨年ゼロコロナ政策を撤廃して国境封鎖を緩和。中国との貿易はパンデミック前の2019年の水準近くまで回復した。一方で、昨年の対中貿易赤字は17億1161万ドルに膨らんだ(グラフ1参照)。

過去8年間の朝中間の貿易額の推移。中国税関総署の発表値を整理した。製作アジアプレス

「貿易会社の外貨不足が深刻だ。中国に水産物や鉱物を売ってこそ利益になるのに、制裁のために簡単ではない。最近輸出されているのは『賃加工』品くらいだろう。それも材料を中国から先に輸入しなければならないので、先立つお金が要るのだ」

両江道の協力者はこのように現状を説明する。「賃加工」とは、中国から材料を輸入し加工して付加価値を高めたうえで輸出する形態のことで、かつらや付けまつげ、木工品などが最近の主なアイテムだ。

中国吉林省で長く北朝鮮貿易の仲介をしてきたビジネスマンは、アジアプレスの問い合わせに対し次のように述べた。

「昨年夏以降に豆満江側と恵山(ヘサン)市で貿易が再開されたが、最近は低調。北朝鮮の貿易会社にお金がないので、中国産品を売りたくてもできない。中国の貿易会社の意欲もすっかり低調になった」

2023年度の月別の朝中間の貿易額の推移。中国税関総署の発表値を整理した。製作アジアプレス

◆脱北者の家族に資金融通頼む貿易会社

両江道の協力者によれば、資金難に苦しむ両江道の貿易会社は、脱北して韓国や日本、米国に住む家族や親戚がいる家を訪ね、貿易資金への融資や共同投資を勧誘しているという。海外の親族から地下送金を受けているのを知っているのだ。保衛局(秘密警察)が韓国との繋がりを厳しく取り締まっているため、貿易会社の中には、資金を融通してくれた場合、入社させるなどして当局の調査が及びにくいよう便宜も図ってくれる会社もあるという。

現在北朝鮮の貿易は、輸出入する品目を国家が管理統制し、輸入した物品の国内流通もほとんどが国営流通機関で行っている。貿易会社の裁量はコロナ前と比べて大きく減じられた。ゼロコロナ政策が撤廃されて以降、貿易が活発なのは西海岸の新義州(シニジュ)と南浦(ナムポ)に限られており、地方都市の対中貿易は低調なままのようである。(カン・ジウォン

※アジアプレスでは中国の携帯電話を北朝鮮に搬入して連絡を取り合っている。

北朝鮮地図 製作アジアプレス

あわせて読みたい記事- <北朝鮮内部>「脱北は銃殺か懲役」と当局が明言 国境付近は雪の足跡だけで大捜索 「何万ドル出しても脱北不可能」と住民

© アジアプレス・インターナショナル