被災地で小学生の学習支援担った教員が語る 「子どもたちは環境変化に戸惑い」 能登半島地震

テレビ愛知

能登半島地震では医療・介護施設だけでなく、教育現場も大きな影響を受けました。被災地では現在、学校の再開が進んでいますが、その生活は普段通りではありません。

名古屋市から被災地支援に派遣された教員は「子どもたちは学校生活の違いに戸惑っている」と話します。震災が子供たちに与えている影響を、名古屋市教育センターの指導主事・副田知里さんに聞きました。

おにぎりやデザートに「おいしい」

給食

――普段の学校生活とは違った点について教えてください。

教室に避難者の方がいたことや、授業が難しい状況であったことです。体育館が主に避難所ですが、支援物資が校内のあちこちに置かれている状況でした。中学校の教室を間借りしていた期間だったため、小学1年生のお子さんには、机や椅子が体の大きさに合いません。椅子に座ると足が床に着かなかったり、机で何かを書くときは椅子から立って机に書いて置いたりする必要がありました。

――影響は給食にもあったとのこと。普段とは大きく違う献立でしたが、子どもたちは喜んでいたそうですね。

調理をするのが難しく、私が食べたのはおにぎりとパンでした。おにぎりはコンビニのおにぎりが配られました。紙パックの牛乳とデザートは子どもたちの好きなゼリーやクレープが出ていました。器によそわれて箸やスプーンで食べるものではありませんでした。

私が訪れた日は給食が始まった日でしたが、みんなと食べるのがうれしそうでした。おにぎりやデザートが配られると本当にうれしそうで。「いただきます」のあとは「おいしい」と言って食べていました。時々、「あったかいシチューが食べたい」といった声も聞かれました。

ふと地震のことを思い出す

――能登半島地震によって、子どもたちにどのような変化が生まれていましたか。

地震の揺れがあるたびに、子どもたちがすごい速さで机の下に潜るようになりました。また、私と一緒に勉強しているときや何か活動しているときに、「ふと地震のことを思い出すことがある」と話してくれることもありました。何かのきっかけで思い出していると思いました。

――特別な教育的支援が必要な、落ち着きや集中力がないという特徴がある子どもたちも、震災や環境の変化でより大きな影響を受けたと思います。

いつもと違うものを使ったり、いつもと違う流れだったりする環境に対して、戸惑いを感じていました。行動を起こすまでに時間がかかったり、「まだやりたくないな」という気持ちで現れたりしていました。

元の生活に戻ることができないジレンマ

副田知里さん

――実際に副田さんが訪れた学校で、そのような状況はありましたか。

体を動かすのが大好きな子がいましたが、それがままならないので、少し落ち着きがないことはありました。

――どのようにフォローしていましたか。

少し教室から出て、静かなところで過ごしたり、外を眺めたり。近くを1周歩いてみることはありました。

――子どもたちに触れて、なかなか元の生活に戻してあげられないもどかしさは感じましたか。

学校の教職員の方がとてもがんばっていて、「できるだけいつも通りの学校生活を」と努力していました。しかし、学校だけの努力だけではうまく進まないこともあります。

給食の問題や避難所の問題、あとは通学路が少し危ないと思う場所もありました。そこは、学校だけではどうにもならないので、とても難しいです。子どもたちはみんながんばっています。一生懸命勉強をしようとするし、お友達と遊ぼうとする。すぐに元の生活に戻ることができないというジレンマは感じました。

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