2024年F1シーズンに向けて、各チームが新車発表会を行う時期を迎えた。プレシーズンテスト前のため、ニューマシンのカラーリング披露にとどまる場合もあるが、発表会において明かされる事実、首脳陣のビジョンなどから、見えてくるものは多い。この連載では、各チームの2024年発表会で披露されたニューマシンとチーム体制についてまとめる。今回はマクラーレンとその新車『MCL38』を特集する。
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ちょっと変わった形で新車を発表したのが、マクラーレンだった。
マクラーレンが2024年の新車『MCL38』をお披露目したのは、マクラーレンの本拠地イギリス時間でバレンタインデーの2月14日の朝8時38分だった。ただし、それは広報から配信されたEメールでのプレスリリースによって行われた。同時にマクラーレンはメディアに配信したものと同じものを自らのSNSで公開。ただし、公開された画像は3点だけ。しかも、カメラが車体に寄らずに、かなり引き気味で車体のディテールがわかりにくいという、あまりにも大人しい発表だった。
さらに、その3点の写真をアップにしてみると、ディテールが微妙に異なっているというトリックが隠されていた。真横からとらえた画像のフロアには、前輪と後輪の間あたりに湾曲した部分がボンヤリ見えるが、斜め前方から捉えた画像のフロアにはそれは確認できず、ほとんどフラットな形状をしていた。
マクラーレンは明らかに何かを隠していた。
画像の発表から約11時間後に行われたWeb会議による記者会見では、リリースされた画像についての質問が相次いだ。2人のドライバーとともに会見に出席していたアンドレア・ステラ代表は、こう説明した。
「F1はスポーツであると同時に、マーケティングや商業的な側面もある。F1は大きなビジネスであり、新車の発表には技術的な面だけでなく、さまざまな要求やアプローチを考慮する必要がある。しかし、技術者からみれば、新車の発表はできるだけ控えめに行いたい。だから、今年は控えめに行うこととなった。確かに画像の中には実車と異なる部分もあるが、かなり正確だ。ディテール以外の大物には手をつけていない」
ランド・ノリスも少し笑って、チームをこうフォローした。
「まあ、それもゲームの一種。できるだけディテールは見せたくない。むしろ、なぜ自分からひけらかす必要があるんだい。あと1週間したら、わかることだから、それまで少しだけ我慢してよ」
さらに、ノリスはこう続けた。
「レッドブルに勝てるのかと尋ねられれば、『イエス』と答えるよ。だって、僕たちは昨年のシーズン後半に彼らにとても接近し、レースによっては彼らを打ち負かしていた。だから、今年彼らを打ち負かせると信じたい」
新車のディテールは隠したが、本音は隠しきれなかった今年のマクラーレン。打倒レッドブルの最有力候補であることは間違いだろう。
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