80代が受け取る平均年金「21万円」だが…「高すぎる老人ホームの請求額」に落胆

(※写真はイメージです/PIXTA)

私たちの所得、そして年金はどうなるのか。老人ホームに入所することになれば、いくら払うことになるのか…? 厚生労働省『2022(令和4)年 国民生活基礎調査』などをもとに見ていきます。

80代が受け取る年金「おおよそ21万円」だが…

現首相は総裁選時から「令和版所得倍増」を掲げてきました。しかし政権発足早々、経済再生担当大臣の「文字通りの『所得倍増』というものを指し示しているものではない」という言葉が世間を騒がせます。

また、所得倍増のため「企業に従業員の賃上げを促す」「医療・保育などの現場で働く人たちの所得増のため委員会を設置」といった策を検討するということでしたが、今では「資産所得倍増」という言葉が使われ、もっぱら投資による資産形成が促されています。

さて、そこで気になるのが現在の日本人の平均所得です。厚生労働省『2022(令和4)年 国民生活基礎調査』より所得分布を見ると、「200~300万円未満」が14.6%、「100~200万円未満」が13.0%、「300~400万円未満」が12.7%と、所得300万円未満の世帯が最も多くなっています。中央値は423万円。

「全世帯」の平均所得金額は545万7,000円であり、平均額以下の割合は61.6%と、過半数を大幅に超えています。

自身の所得を顧みて、改めて「所得倍増」を夢物語と感じてしまう人もいるかもしれません。特に現役を引退した高齢者の方にとっては、現在の月の所得といえば年金が主たるものになるわけですから、余計に現実を「直視しすぎて落胆する」事態に陥りかねないでしょう。

厚生労働省『令和4年度 厚生年金保険・国民年金事業の概況』によると、80~84歳の高齢者が受け取っている平均年金額は、厚生年金が月15万4,860円、国民年金が月5万6,139円。85~89歳では、厚生年金が月15万9,957円、国民年金が5万6,044円です。

日本の年金は3階建てですから、サラリーマンとして勤め上げた方の場合、おおよそ21万円ほどの年金を受け取る計算になります。ローンを完済した持ち家に住んでいれば、この収入は安定した生活をもたらすかもしれません。しかし、現実はそうはいかないものです。

老人ホームが広く知られるようになった今、ゆくゆくの入居を考えている人も少なくないでしょう。では、実際のところいくらかかるのか?

思わず絶句する「老人ホーム請求額」

介護施設には、半数以上が80代で入居すると言われています。

介護施設代はいくらか。老人ホームには入居形態が様々ありますが、概算でかかる請求額としては、『人生を破滅に導く「介護破産」』に詳しく書かれています。

“介護施設の中でも、とくに安く入所できるといわれる特別養護老人ホーム(特養)の場合、利用料金は入所者本人の要介護度と所得によって決まります。 親が一般的な会社員で定年まで勤め上げ、平均的な額の厚生年金を受給している場合で、要介護3になり特別養護老人ホームへ入所したとすると、ユニット型個室利用で月額18万円程度の費用がかかります。厚生年金の平均受給額は14万円程度であるため、年金以外に年間約50万円程度の負担が必要です。” 『人生を破滅に導く「介護破産」』

貯蓄があれば切り崩して生活できますが、もし、厚生年金の納付状況に穴があったら。そもそも十分なお金がなかったら。あまりにも厳しい数字であることは明らかです。

実際にかかる費用はこれだけではありません。入居一時金、生活用品等月々の諸経費を考えれば、惨憺たる思いがしてしまうところです。

一方、家族による在宅介護を選択した場合はどうなるのか。少し古いデータになりますが、家計経済研究所『在宅介護のお金と負担 2016年調査』によると、在宅介護で1ヵ月あたりにかかる費用は、全体平均で5.0万円、要介護5認定だと7.5万円になります(介護サービスにかかる金額の平均は1.6万円)。

……「お金が増える」ということ。輝かしい高度経済成長期は既に「過去の歴史」として括られ、教科書で教えられている今、日本が豊かだった時代を知らない世代が、労働者としての大部分を占めつつあります。一方、彼らの親世代の方々は、凄まじい時勢の変化を生き抜いたなかで、老後の不安を日々募らせています。

日本人全体で金融リテラシーを向上させれば、投資による「資産所得倍増」ははたして実現するものなのでしょうか。

© 株式会社幻冬舎ゴールドオンライン