【死後離婚】姑介護中、55歳夫が脳梗塞で急死。「死後離婚」を選んだ妻の脳裏をよぎる一抹の後悔とは

「夫の死後、姑の面倒みれますか?」

いつの時代も、多くの人が悩み続ける「嫁姑問題」。

みなさんの中にも、子育てや介護などをきっかけに嫁姑問題に悩み「姑と縁を切りたい!」と考えている方は多いのではないでしょうか。

とはいえ、愛する夫のために自分の気持ちを押し殺して、姑との付き合いを継続している方も多くいらっしゃることでしょう。

この記事で紹介する「姻族関係終了届」という届け出をすると、姑との姻族関係を法律的に解消することができます。

本記事では、嫁姑問題がもつれた結果、夫の死後に姻族関係終了届を提出して姑との縁を切った実際の事例を紹介します。

介護を家族に、とりわけ実子ではない「息子の嫁」などに依頼・依存していた場合、家族関係がどう変化し得るかを考えることで、みなさんに介護資金を準備することの重要性を、この事例を通じてお伝えできればと思います。

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【死後離婚】「姻族関係終了届」ってどんなもの?

姻族関係終了届とは、夫婦のどちらかが死亡した後、その亡くなった配偶者の血族(義理の両親、義理の兄弟姉妹など)との関係を終了させることができる届け出のことです。俗に「死後離婚」とも呼ばれています。

姻族関係終了届が受理されると義理の両親とは姻族でなくなり、介護などの扶養義務を負う必要がなくなります。

姻族関係終了届の書式例

俗にいう「死後離婚」 姻族関係終了届の書式、見たことはありますか?

相続診断士に聞いた「姻族関係終了届」を提出した実際の事例

相続診断士に聞いた姻族関係終了届を提出した実際の事例を紹介します。

A子さんは東京の郊外にあるマンションに住む55歳の会社員です。26歳の時に夫と結婚し、2人の子供を授かりました。

A子さん夫婦は共働き。また、A子さん自身の実家は地方ということもあり、子供が生まれてすぐ、夫の実家の近くに移り住みました。

姑のB代さんは気さくで明るい人柄でしたし、夫の実家は比較的裕福ということもあり、A子さんは夫の実家の近くに住むことに不安はなく、最初は「子育てを手伝ってもらって、ありがたい」と思っていたようです。

しかし、移り住んでからというものの、姑のB代さんは孫見たさに毎日A子さん宅を訪問するようになりました。

【嫁 vs 姑】子どもの教育方針の違い

「嫁 vs 姑」食い違う価値観

また、A子さんは教育熱心なタイプで子供には小さい頃から複数の習い事をさせていましたが、姑のB代さんは「子供はのびのび育てるべき」と考えるタイプであり、子育てに関する方針が違っていました。

姑のB代さんが時々、何気なく言う「小さいうちからそんなに熱心だと育児ノイローゼになるわよ」という言葉が、次第にA子さんの心を蝕むようになりました。

しかし、実家の近くに新築のマンションを購入する時、頭金として1000万円程度を贈与をしてもらったり、子供たちに学資保険をかけてもらっていたりと、金銭面で多額の援助を受けていたこともあって、A子さんは姑のB代さんに自分の本当の気持ちを伝えることができませんでした。

やがて姑の介護が始まった

さらに月日が流れ、A子さんは50歳・姑のB代さんは80歳に。足腰が弱り、介護が必要な状態になりました。

A子さんは管理職で忙しい夫に代わって、仕事を時短勤務に変更し、姑のB代さんを毎日見舞い、夕食の準備をしたり、入浴を助けたりと献身的に介護しました。

しかし、姑のB代さんはA子さんに感謝するどころか、「あなたたちのマンションや子供の成長は、資金援助をしてきた自分のおかげでしょ?感謝のしるしに介護くらいして当然」という、とても強気な発言をするようになったそうです。

しかし、A子さんは「身体が弱り、不安が募り強き発言をしているだけ。怒らずに可哀想と思ってあげなきゃ。

それに、資金援助をしてもらったのも事実だし」と考えるようにし、自分の本当の気持ちを押し殺して、姑のB代さんの介護を3年以上続けていました。

55歳の夫が突然、脳梗塞で帰らぬ人に

働き盛りの夫が、突然帰らぬ人に…。

そんなある日、55歳の夫が脳梗塞を起こし、会社で突然倒れ、帰らぬ人に。

あまりに突然なことにA子さんはショックを受けたのは当然ですが、夫の死をきっかけに姑のB代さんへの不の感情を抑えることができなくなったそう。

「夫が亡くなった今、私がお義母さんを介護する必要ってある?お義母さんには子育ての時も、介護の時もずっと傷つけられてきた。もう耐えられない。」と思うようになったのです。

そして、この想いを友人に話したところ、友人が相続診断士を紹介してくれ、相談することになりました。

その相談の中で、姻族関係終了届を提出することで、姑のB代さんとは姻族でなくなり、介護などの扶養義務を負う必要がなくなることを知り、A子さんは姻族関係終了届を提出することを決意したのです。

この話が姑のB代さんの耳に入ると、「この恩知らずが!贈与したマンションの頭金や学資保険の掛け金を返せ!それにマンションは息子(A子さんの夫)の名義だったはずだ。”死後離婚”なんてそんな届け出するなら、マンションから出ていけ!」とA子さんを怒鳴り散らしたとのことです。

しかし、姻族関係終了届を提出しても、相続した夫の遺産を返却する必要はありません。

そのためマンションの頭金や学資保険の掛け金を返す必要がないことももちろん、夫から相続したマンションを手放す必要もないのです。

現在、介護してくれる身寄りをなくした姑のB代さんは老人ホームで生活しています。

一方A子さんは介護から解放され、フルタイム勤務に戻り精力的に働いているのですが、心の片隅には、「嫁姑問題、どうしたらこんなにこじれなかったのだろう。」と思うなど、後悔の念があるようです。

まとめ

A子さんと姑のB代さんは姻族関係終了届を提出して、「まったくの他人」になるという悲しい結果となってしまいました。

しかし、もし介護をA子さんだけで抱え込まず、専門家に任せていれば、ここまで嫁姑関係がこじれることを防げたかもしれません。

介護は家族にとって、精神的・身体的に大きな負担となります。それまでは円満だった家族関係・なんとかなっていた嫁姑関係が崩れるきっかけにもなり得るのです。

介護資金を計画的に準備し、いざ介護が必要になったら介護のプロに対価を払ってお願いすることは、家族の円満な関係を作る近道の一つと言えるでしょう。

この記事が、みなさんが「介護とお金」そして「介護と家族」について意識を向けるきっかけになればと思います。

参考資料

  • e-GOV法令検索「昭和二十二年司法省令第九十四号 戸籍法施行規則」
  • 大阪市「姻族関係終了届」
  • 豊中市「各種戸籍届書様式」

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