中野新仲見世商店会(中野駅北口)に湯気がもうもうと立ち上っている一角がある。
「茶寮中野店」では肉まんやあんまん、焼売、ちまきを大きなセイロで蒸して販売しているのだ。
湯気の正体は、店先に並べた大きなセイロから吹き上がる蒸気だった。
じつは、本店はうどん県の高松市内にある。
コロナ前、仕事で高松へ出かけるたびに、茶寮の肉まんを買い食いしていた。
店頭のセイロから立ち上る湯気が、肉まん好きの胃袋をロックオン。
おいしそうな湯気の香りに誘われ、何度も肉まんを立ち食いしたっけ。
うどん県の茶寮が中野に上陸したと知り、さっそく肉まんに会いに出かけた。
ついたのは夕方5時頃。
セイロから立ち上る湯気にスポットライトがあたり、最高のシチュエーション。
肉まんのおいしそうな香りが、店のまわりをただよっていた。
肉まんを頼むと、セイロから取り出したアツアツの肉まんを三角形の紙袋に入れてくれた。
ふかふかの肉まんを握った瞬間がなによりも嬉しい。
肉まん一個の幸せ。
けれど、自分でも肉まんを作る肉まん好きとしては、軽いか、重たいかで肉まんを評価すべきだと思っている。
軽い肉まんなど言語道断。だけど、ときどきあるんだよね、軽いのが。
肉まんは「ずしり」に限る。
茶寮の肉まんは、ずしりと重たいのが嬉しいなあ。
かじる前に餡の内容を確認すべし
そしてもうひとつ。
肉まんをおいしく食べるための鉄則がある。
肉まんを持ってもすぐに食べてはいけない。
かぶりつきたい気持ちを抑え、半分に割る。
なぜなら、肉まんは大きく分けて2種類あるからだ(私見です)。
肉団子を生地で包んだ肉まんと、とろみのある餡を包んだ肉まんだ。
「この子はどっちかなあ」と思いつつ、かじる前に確認する。
茶寮の肉まんは後者だ。(ちなみに、大阪の有名な肉まんは前者)。
手で割った瞬間、セイロで蒸されてトロトロになった餡が顔を出す。
ここで、はじめて肉まんをかじる。
餡が口のなかに流れこみ、口中がトロトロであふれかえる。
ああ、幸せ。
舌と歯で受けとめたトロトロの餡を噛みしめる。
カリカリコリコリの筍。
しっかりと煮込まれ、フニャッとなった豚肉。
やや大きめにカットされたタマネギ。
これらを舌が確認するやいなや、肉まんではまず出会う機会がない、ツルンとした食感を舌がとらえた。
キクラゲであった。キクラゲが入った肉まんは極めて珍しいと思う。
肉まんにキクラゲを使うところは茶寮だけだ(たぶん)。
キクラゲ特有のツルンに加え、フニャッとした噛み心地も愉快だ。
カリコリ。シャキシャキ。ツルン。フニャッ。
いろいろな食材と遭遇した舌は大忙し。大繁盛ともいう。
肉団子を包んだ肉まんとは、ひと味もふた味も異なる食感と味わいがこたえられない。
若くて可愛らしい女性が肉まんを作っていました
後日再訪。肉まんを作っているところを取材させていただいた。
厨房で肉まんを作っているのは、20歳の女性3人。
ミキサーにかけた生地を発酵させる。
それを1個1個綿棒でのばし、皮を作る。
その皮で餡を包んでいく。
最後に指先でつまみ、口をしっかり閉じ合わせる。
ギュッと口をつまんで、きれいに仕上げるのが至難の業。
とてもじゃないが、自分ではできない。職人芸。
包み終わった肉まんをセイロに並べ、二次発酵させた後、蒸し上げる。
アツアツの肉まんをいただいた。
セイロで蒸したアツアツの焼売とちまきも!
「肉焼売と叉焼(チャーシュー)ちまきも食べてください」
店長の野田智恵子さんにすすめられ、肉焼売と叉焼ちまきもいただくことにした。
じつは、はじめて来たとき肉焼売をテイクアウトしたので、その味を確認済み。
ここの肉焼売は大粒で肉も多く、ショウガの香りがしっかりときいている。
タレがついているけど、そのままが一番うまいと思う。
この店の叉焼ちまきは初体験。
笹の葉をはずすと、もち米のなかからチャーシューが顔を出した。
トロトロに煮込んだチャーシューが美味。
ふはふは言いながら叉焼ちまきをいただいた。
肉まんも焼売も自宅で作れないことはないけど、ちまきは無理。
買い食いもいいけど、テイクアウトもおすすめ
ここで食べて帰るか、テイクアウトするのが賢いと思う。
ちまきだけでなく、茶寮で販売している点心はすべてテイクアウト可能。
持ち帰ったら、できればセイロで蒸して温め直したい。
とくに肉まんは。
彼女たちが丁寧に、一生懸命作った肉まんは食べる価値があると思う。
だってマジでうまいから。
【茶寮 中野店】店舗概要
住所/東京都中野区中野5-55-9
営業時間/12時~翌1時
無休
「肉まん」、「あんまん」(共に350円)、「肉焼売」(5個850円)、「エビ焼売」(5個950円)、「叉焼(チャーシュー)ちまき」、「海鮮ちまき」(共に450円)
(うまい肉/ 中島 茂信)