絶滅から復活した野生馬『モウコノウマ』ってどんな馬?

こんにちは! 馬が大好きなライターのやりゆきこです。EQUIA読者の皆さんは「モウコノウマ(学名:Equus przewalskii)」という馬を知っていますか? モウコノウマは1879 年にロシアの探検家ニコライ・プルツェワルスキーによって中央アジアで発見されたノウマです。

ロシアの探検家によるモウコノウマの発見

В.Класен, Public domain, Wikimedia commons

モウコノウマは、1879 年にロシアの探検家ニコライ・プルツェワルスキーによって中央アジアで発見されました。そのため「プルツェワルスキーウマ」または「プシバルスキーウマ」とも呼ばれています。(他に、現地ではタヒと呼ばれるなども!)

かつては、現存するノウマとしては唯一の野生馬と考えられており、モンゴルからヨーロッパの広い範囲に生息していました。しかし乱獲などにより個体数が激減。1969年頃に野生のモウコノウマは一度絶滅したと考えられています。

絶滅前にヨーロッパの動物園に送られていた53頭のモウコノウマのうち、子孫を残すことができた13頭(創設個体)から各国の動物園がさらに繁殖に励み、現在はモンゴルの国立公園を中心にモウコノウマを復活させるプロジェクトが進行しています。

※2018年には、モウコノウマは家畜馬が再野生化した子孫だという説が唱えられていたが、2021年の再調査ではモウコノウマが家畜化されたことはないという結論になっている。

モウコノウマってどんな馬? 家畜馬との違いは?

モウコノウマは体高1.2m~1.4m、体長2.2~2.6m、体重200~300kgといった小柄な馬です。毛色は茶褐色および灰褐色といわれますが、中には濃い茶色の個体もいるようです。タテガミは短く直立していて、人間でいうとモヒカンヘアのようなところが特徴的。鼻先は白が目立ちますが、その先端は黒に近い色。そのほか、タテガミやしっぽの先、足先も黒に近い色をしています。

モウコノウマの性格は臆病で、(これは私の主観も入りますが)動物園でモウコノウマを観察していると、家畜馬よりも神経質で用心深いように感じます。また家畜馬が再野生化したアメリカのマスタングなどとは違い、モウコノウマの家畜化は難しいともいわれています。遺伝子レベルでもモウコノウマと家畜馬には違いがあり、モウコノウマは家畜馬よりも染色体が2本多い66本となっています。

野生環境下でのモウコノウマのくらし

現在は復活プロジェクトに関わる方々の努力が実を結び、ホスタイ国立公園をはじめとするモンゴル国内3か所の再導入地域で、800頭を超えるモウコノウマが生活しています。家畜馬同様に、完全な草食性で草原の草を食べながら小規模の群れで移動します。

彼らはボスである一頭の雄が複数の雌を率いる「ハレム」と呼ばれる形の群れをつくります。ハレムのなかで生まれた若い雄は4~5歳になると、その群れを離れなければなりません。ただし若い雄がボスと決闘し、勝つことができればハレムを離れることなく、群れを丸ごと奪うことができます。負けてしまったボスの子どもは、新しいボスに殺されてしまうこともあるそうです。

また、現在問題となっているのが「近親交配」と「交雑」です。今、地球上にいるモウコノウマは、前述した13頭の血縁にあたります。そのため、近親交配が起こりやすくなってしまうのです。これを防ぐため、復活プロジェクトのスタッフの手によって遺伝子が確認され、飛行機で別の再導入地域に移動させるなどの対策がとられているそうです。またモンゴルには皆さんもご存じの遊牧民が暮らしています。彼らが所有している家畜馬がモウコノウマの群れにまざっているシーンも確認されており、交雑の可能性が心配されています(染色体の数が異なっても繁殖は可能だそう)。

モウコノウマに会いに行ってみよう!

ここまで読んでくださった方のなかには、「モウコノウマを見てみたい!」と思った方も多いのではないでしょうか。モウコノウマは多摩動物公園やよこはま動物園ズーラシア(以下、よこはま動物園)で見ることができます。

よこはま動物園では、2023年1月11日に初めてモウコノウマを導入し、2頭の展示を行ってきました。昨年末には当初から導入を予定していた残り1頭も無事来園。2024年2月10日より、3頭がそろったことを記念した特別写真展も行われています(写真展は2024年2月26日まで開催)。モウコノウマの復活プロジェクトに従事された獣医師の實方剛さんによる素晴らしい写真を見ることができます。ぜひ足を運んでみてはいかがでしょうか。

<参考>

・よこはま動物園ズーラシア モウコノウマ(2024年2月閲覧)
・東京都報道発表資料 都立動物園・水族園からのお知らせ【第15号】(2022年12月発表)
・Horses of the World (Princeton Field Guides) / lise Rousseau (著), Teresa Lavender Fagan (翻訳)(2017年5月出版)
・世界で一番美しい馬の図鑑 / タムシン・ピッケラル (著), 川岸 史 (翻訳)(2017年9月出版)
・図説馬と人の歴史全書 / キャロライン デイヴィス (著), 別宮 貞徳 (翻訳)(2005年1月出版)
・図説馬と人の文化史 / J. クラットン‐ブロック (著), 桜井 清彦 (翻訳), 清水 雄次郎 (翻訳)(1996年12月出版)
・ウマの博物図鑑 / デビー・バズビー (著), カトリン・ラトランド (著), 小林 朋則 (翻訳)(2021年1月出版)
・世界の馬 伝統と文化 / スサンナ・コッティカ (著), ルカ・パパレッリ (著), 末崎真澄 (監修)(2019年5月出版)
・「知」のビジュアル百科 49 馬の百科 / ジュリエット クラットン=ブロック (著),(2008年11月出版)
・ウマ大図鑑 びっくり能力と種類、歴史がよくわかる! (楽しい調べ学習シリーズ) / 日本ウマ科学会 (監修)(2013年12月出版)

この記事を書いた人

やりゆきこ
WEBコンテンツの企画編集、時々ライター。馬について調べることをライフワークに活動しています。乗馬は永遠の初心者ですが、毎週乗っています!【 note / Instagram / blog

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