藤原紀香はコメディでこそ輝く 『離婚しない男』『翔んで埼玉』で発揮する“ノリの良さ”

妻が浮気していることを偶然知ってしまい、一人娘の親権を獲得するべく、浮気の証拠集めと養育実績を作るために奮闘する男を描く『離婚しない男―サレ夫と悪嫁の騙し愛―』(テレビ朝日系)。本作の第5話に藤原紀香が出演する。

藤原が演じるのは、“サレ夫”の渉(伊藤淳史)と妻・綾香(篠田麻里子)の部屋の隣に引っ越ししてくる謎多き美女・竹場ナオミ。その部屋は以前、綾香との逢引きをより刺激的にするべく、不倫相手のマサト(小池徹平)が借りていたもの。マサトはそこで綾香との情事を楽しんでいたのだが、なぜか早々に出て行ってしまう。そこに、間髪入れずに入居してくるのがナオミである。引っ越しの挨拶で渉と初対面を果たすが、上品な関西弁を話すはんなりとした雰囲気と相反し、露出の大胆な服装で、渉もその魅力に翻弄されていく。

本人も上品なイメージのある藤原だが、高校時代は落語研究会に所属していたり、ブレイク前には関西でバラエティ番組にレギュラー出演していた経験もあり、実はコミカルな演技も得意としている。

それが遺憾無く発揮されているのが、夫・片岡愛之助との共演も話題となった映画『翔んで埼玉 ~琵琶湖より愛をこめて~』だ。藤原は、妖艶な神戸市長として出演。特に派手なメイクなども施さないまま、“神戸マダム”をイメージしたのであろう、黒のドレスに大ぶりのアクセサリーという出立ちで、やや高飛車な女性を演じていた。それがなんともしっくりきてしまい、笑いを誘うものとなっているのだ。しかも、大阪府知事・嘉祥寺晃(片岡愛之助)と夫婦でありながら、京都市長(川崎麻世)とは愛人関係であり、自分の利益のために男を利用する悪女の面も見せていた。この1作だけでも、面白キャラも進んでやる藤原のノリの良さが伝わることだろう。

「~ございやす」「まぐわっている」という強烈ワードとキャラクターで、相談に行った渉を戸惑わせる離婚弁護士・財田トキ子(水野美紀)や、渉と異様に距離が近く、「裕って呼んで! ね!?」と詰め寄ってくる三砂裕(佐藤大樹)など、本作には癖が強すぎるキャラクターばかりが揃っている。しかも、綾香とマサトは毎回、もはや笑えてきてしまうような体当たりすぎる濡れ場を見せてくる。“謎多き美女”のナオミも大きなインパクトが必要である。

藤原は、ナオミをより魅力的なキャラクターにするために台本に肉付けし、最終的には脚本にも原作にも書かれていなかった関西弁を用いたキャラクターにしたことを明かしている(※)。きっと藤原だからこそ演じられる、ミステリアスだがかわいらしく、面白みのあるナオミが観られるに違いない。ナオミが物語にどのように影響してくるのか、そして藤原がどんな演技を見せてくるのかに期待したい。

参考
※ https://realsound.jp/movie/2024/02/post-1570304.html

(文=久保田ひかる)

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