止まらない「世界的な株高」…いまから〈大型成長株〉に投資しても間に合う?→マクロストラテジストの回答は

(※写真はイメージです/PIXTA)

堅調な米国景気を背景に、世界的な株高が続いています。新NISAのスタートにより投資に関心をもつ人も増えるなか、気になるのが「いまから投資をはじめても儲かるのか?」というところでしょう。そこで、フィデリティ・インスティテュート主席研究員でマクロストラテジストの重見吉徳氏が、足元注目される「米国・大型成長株」に焦点をあてて解説します。

雇用者数約35万人増加…米国景気は依然として「堅調」

2月に公表された米国の経済指標は、米国景気が依然として堅調である、もしくは現在、回復途上である状況を示唆しました。

まず、[図表1]に示すとおり、1月分の雇用統計では、非農業部門の雇用者数が前月から35万3,000人の堅調な増加となり、「米国景気が依然として力強く成長している」ことが確認されました。

[図表1]米国の非農業部門雇用者数(前月からの増減)

さらに、[図表2]に示すとおり、平均時給は、前月比で+0.55%と高い伸びを示し、「米国のインフレ圧力が残っている」ことが示唆されました。

[図表2]米国の民間部門平均時給(前月比)

また、[図表3]に示すとおり、1月分のISM製造業景気指数では、総合指数が前月から2.0ポイント上昇の49.1、これに先行する傾向がある新規受注指数は同5.5ポイント上昇して52.5となりました。

米国景気は「停滞」ではなく「回復」に向かう

OECD景気先行指数でも確認されているとおり、「『これから停滞が来る』のではなく、『いままでが停滞』であり、『これから回復』に向かう」可能性も考えられます。

[図表3]ISM製造業景気指数

「ソフト・ランディング」をメインシナリオとして考える方も、「上振れ」や「下振れ」のリスクに備えて分散投資が求められる環境でしょう。

再び、「大型成長株式」の割高感に注目が集まる

経済指標が良くても悪くても株価が上昇する状況が続くなか、金融市場ではふたたび、『マグニフィセント7』を中心とする米国・大型成長株式の割高感に注目が集まっています。

[図表4]に示すとおり、直近1月末時点のデータによれば、米国・大型成長株式の12ヵ月先予想PER(株価収益率)は28.8倍を超え、過去対比・他の市場対比でふたたび、割高感が高まっています。

[図表4]主要な株式指数の予想12ヵ月PER(株価収益率)

また、[図表5]に示すとおり、米国・大型成長株式のバリュエーションを金利対比で考えると、米国・大型成長株式の益回り(=PERの逆数≒期待リターン)は約3.5%と、米3ヵ月物国債利回りの約5.4%を大きく下回っています。

[図表5]米国・大型成長株式の益回り(期待リターン)と米国3ヵ月物国債利回り

割高のいま、「大型成長株式」への投資はNG

[図表6]に示すとおり、「各時点における益回り」と「その時点から10年間の実績リターン」は連動する傾向があります。

言い換えれば、「期待リターン(益回り)が低いときは株価が割高であるときであり、そうしたタイミングで投資をするとリターンは低くなる」ということです。

これに従うと、(現在の株価が割高なために)今後、10年間の実績リターンは0%~5%程度にとどまると目算されます。

[図表6]米国・大型成長株式の益回りと実績リターン

また、[図表7]に示すとおり、「各時点におけるPER(株価収益率)」と「その時点から10年間の実績リターン」には「右肩下がり」の傾向があります。

これは[図表6]を異なる角度から眺めたにすぎず、①株価が割高であるときに投資をするとリターンは低くなる、②(現在の株価が割高なために)今後、10年間の実績リターンは0%~5%程度にとどまると目算される点は同じです。

[図表7]米国・大型成長株式のPER(株価収益率)と実績リターン

[図表7]米国・大型成長株式のPER(株価収益率)と実績リターン

重見 吉徳

フィデリティ・インスティテュート

首席研究員/マクロストラテジスト

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