中日との契約を破棄してメジャーに移籍した短いイニング投球で覚醒したセットアッパーとは!?【プロ野球助っ人外国人列伝】

助っ人外国人列伝/中日ドラゴンズ編

日本球界を彩ってきた助っ人外国人選手たち。「ラブすぽ」が独自に選んだ選手を紹介する。

中日との契約を破棄してメジャーに移籍!ジャリエル・ロドリゲス

【投手番外編】ジャリエル・ロドリゲス

〈NPB通算データベース〉
・勝利 10勝
・敗戦 10敗
・ホールド 39
・防御率 3.03

多くのキューバ人助っ人が誕生した中日

これまで紹介した選手を見てもわかるように、中日にはアメリカ以外にも活路を求め、台湾や韓国など多くの国から助っ人外国人選手が入団した。また、2000年代以降はキューバ出身の選手を積極的に獲得しているのが特徴だ。

2002年には中日の球団調査役がキューバ政府と交渉を重ね、同国の英雄であり超大物のオマール・リナレスが入団。それ以降も2007年にライデル・マルティネス、2013年に本塁打王に輝いたアレックス・ゲレーロ、そして2016年に入団以降、現在まで打線の中核を担ってきたダヤン・ビシエドなど、セ・パ12球団のなかでもっとも多くのキューバ人助っ人が活躍している球団である。

2020年に入団して大化けしたジャリエル・ロドリゲスもそんなキューバ人助っ人の一人である。幼いころから野球選手を夢見ていたロドリゲスは、高校卒業後にキューバリーグのカマグエイでプレー。ストレートが平均150キロ代と力強い投球をウリとしていたが、制球難に苦しむ荒削りな投手でもあった。

2019年、韓国で行われたWBSCプレミア12にロドリゲスが出場する。そこで好投したロドリゲスに与田剛監督が興味を持ち、年俸1500万円、背番号「212」で育成契約を結んだ。ロドリゲスには海外の球団からのオファーが届いていたが、中日の移籍は本人の強い希望だったという。

短いイニングなら完璧のセットアッパーに

来日1年目のロドリゲスは8月に支配下登録され、NPBの一軍初登板となった巨人戦では6回までノーヒットノーランの快投を見せ、最終的に11試合に先発登板して3勝4敗、防御率4.12とまずまずの成績を残す。

投球フォームが威圧的で最速161キロの速球を投げる一方で、カーブやチェンジアップを器用に操る腕のしなやかさも併せ持ち、右打者には内側をえぐり、左打者なら中から外に逃げるようなスライダーはすでにNPBで十分に通用する説得力があった。

2021年も主に先発で登板したロドリゲス。だが、長いイニングを投げると突然制球難となって崩れるケースが目立ち、2022年のシーズンから中継ぎに配置展開される。

するとこの起用法がずばりはまった。前年まで中継ぎとして長年活躍していた又吉克樹が移籍し、祖父江大輔も出遅れたことで中継ぎが手薄になっていたが、ロドリゲスはセットアッパーとして安心して任せられる投球を披露する。

数ある球種のなかでスライダーは以前よりもキレ味が増し、短いイニングを全力で投げるストレートとのコンビネーションは、強打者でも簡単にとらえられるものではなかった。

同じくキューバ人助っ人で守護神を務めたライデル・マルティネスにつなぐ強力ストッパーとして6勝2敗、39ホールド、防御率1.15と大きく飛躍するシーズンを送っている。

なお、2022年の中日は最下位に終わっているが、ロドリゲスとマルティネスによる勝利の方程式は12球団でもっとも安定感のあるリレーだった。この活躍により、ロドリゲスは中日と2023年から2年契約を結んでいる。

中日との契約を破棄してメジャーに移籍

2023年、この年は第5回WBCが開催され、日本代表の大谷翔平やラーズ・ヌートバーらの活躍でお祭り騒ぎとなったことは記憶に新しい。強豪国のキューバも第2ラウンド準決勝まで進み、ロドリゲスは先発で2試合登板し、高パフォーマンスが世界中に中継されている。大会終了後、ロドリゲスは一度キューバに戻り、中日に合流する予定……だったのだが、現れたのは日本ではなくアメリカだった。

そして、全米記者協会に所属する記者がツイッターでロドリゲスのメジャー挑戦を報じると、ロドリゲス本人が海外メディアのインタビューで「MLBでプレーする夢があり、それを実現させたかった」と語ったことでメジャー球団の争奪戦が始まった。

気の毒だったのは蚊帳の外に置かれた中日。ロドリゲスとコンタクトを取ることができず、当てにしていた中継ぎがいなくなったことで2年連続で最下位に終わっている。

2024年1月、ロドリゲスがブルージェイズと4年総額3200万ドルで契約したことを海外メディアが報じた。紆余曲折あり、中日で年俸1500万円だったロドリゲスはメジャーで大型契約を結び、来季は菊地雄星らと先発ローテーションを争うことになりそうだ。

さて、なぜロドリゲスは亡命という強硬手段に出たのか。それはプロ野球選手の待遇面の悪さが指摘されている。キューバ政府は海外でプレーする選手の年俸の取り分について、選手8割、残り2割を国が徴収すると発表している。だが、実際の配分はその逆という説がある。

真偽は不明ではあるが、過去に多くのキューバ選手が亡命していることを考えると、キューバ国籍の選手であることに多大なデメリットがあるのだろう。

それにしても日本でのプレーがもう少し見たかった助っ人外国人だった。

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