「マッコリ王に俺はなる!」韓国酒専門バーをオープン 地元の米でマッコリづくりに挑戦 背景には農家の抱える課題も…

島根県雲南市に、韓国のお酒しか扱ってないという一風変わったバーがオープンしました。
店を開いた韓国人男性がめざすのは、ズバリ「日本のマッコリ王」。
ソウル、東京、大阪など、都市圏をまわってきた彼が、田舎に店を構えた理由とは?

島根県雲南市に2ヵ月ほど前にオープンしたばかりの『OMONA BAR(オモナバー)』。
おしゃれな店内に入ってみると…

「オソオセヨー!」

出迎えてくれたのは、韓国出身のそん・さんひょんさん。この店のマスターです。

OMONA BAR そん・さんひょん さん
「うちは韓国のお酒しかありません。雲南市にはバーというのがないので、どうせやるなら変わった面白いことやりたいと思って」

こちらの店で扱っているのは韓国のお酒のみ。国内でも珍しいお店なんです。
かなりマイナーな韓国酒も多く揃えていますが…

OMONA BAR そん・さんひょん さん
「実はわたし、お酒飲めなくて。お酒は作るんですけど、飲めないんですよ」

バーのマスターなのにまさかのお酒が苦手とのこと。
でも、安心してください!
店には韓国酒のソムリエの資格を持つスタッフがいて、他では味わえないような個性的な商品を多く取り揃えているといいます。

なんとも珍しいこのお店、一体なぜ島根の雲南市にオープンしたのか聞いてみると、そこには深い理由がありました。

OMONA BAR そん・さんひょん さん
「これ、マッコリです。」

取り出したのは、韓国の代表的なお酒として知られる「マッコリ」。
この原材料となる「お米」こそが、雲南市に店を構えた理由でした。

OMONA BAR そん・さんひょん さん
「お米=炭水化物、おなかを満たすためのものとして、今までは安くて多いものを選んでたんですけど、雲南市に来てその考え方が覆ったんです」

そういって案内してくれたのは、バーから車で15分ほどの場所。

OMONA BAR そん・さんひょん さん
「ここがマッコリをつくる製造所になります」

雲南のお米に惚れ込んだそんさんは、雲南市産のマッコリの醸造を始めようと準備を進めていました。
3月をめどに醸造所を稼働させていく予定とのことですが、そこにあるのは「美味しいマッコリを作りたい」という思いだけではありませんでした。

OMONA BAR そん・さんひょん さん
「農業組合の方から話を聞くと、担い手がいないとか、灯油とかガソリンの値段が上がったのにお米の価格は下がる一方とか矛盾すること、大変なことがたくさんある」

韓国で生まれ育ったそんさんは、22歳の頃に語学を学ぶために来日し、東京・大阪・京都と、大都市で働いてきました。
たまたま求人サイトで見かけた島根県へやってきたのは6年ほど前のこと。そこで、おいしいお米をはじめ、豊かな食文化に魅了されたといいます。

OMONA BAR そん・さんひょん さん
「こういう美味しいものが、誰かが作り続けないと食べることができなくなる。継続してもらうために、私みたいな人が別のところで頑張って支援することで、お互いが助け合えると思うんです」

雲南市産の米を使ったマッコリで、地元の農家の力になりたい。
そんな熱い思いで作られたそんさんこだわりの一杯は、やはり一味違います。
特別に、試作品をいただきました。

清水栞太記者
「すごく甘い香りがしますね!」
そんさん
「みなさんが思われる普通のマッコリとは違って炭酸がないんですよね。アルコール度数15%、結構高めのアルコールです。」

韓国の友人にマッコリ作り体験に誘われたのをきっかけに醸造をマスター。
雲南の美味しいお米を使ったマッコリを楽しんでもらうために始めたわけですが、そんさんにはある目標があります。

OMONA BAR そん・さんひょん さん
「私が目指してるのは“マッコリ王”です。“マッコリ王に俺はなる!”ってキャッチフレーズでやってます!」

醸造所を完成させたあとは、東京での店舗展開も考えているとのこと。
雲南のマッコリ王から日本のマッコリ王となる日も、そう遠くないかもしれません。

OMONA BAR そん・さんひょん さん
「日本と韓国は、距離は近いのに色々問題がある。文化も言葉も似ているところがあるので、仲良くしていきたいと思っているんです。日本酒が韓国でもすごい人気なので、日本でも韓国の酒が人気になって、日本と韓国のお互いの酒で杯をかわすといいんじゃないかと思っています」

日本と韓国の懸け橋に!
そんさんの挑戦から、ますます目が離せません。

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