最後の「蘇民祭」、準備万全 奥州・黒石寺、きょう開催

最後の黒石寺蘇民祭に向け、参加者が使う小屋を組み立てる菊地敏明さん=奥州市水沢黒石町

 奥州市水沢黒石町の「黒石寺蘇民祭」は、17日の開催を最後に千年以上続くとされる長い歴史に幕を下ろす。地元で生まれ育ち、運営に長年携わってきた同祭保存協力会青年部長の菊地敏明さん(49)は、万全の準備を整えて当日を迎える。伝統を守る意味、関係者の負担の大きさ、同寺の決断の重さは十分に理解している。大切なものが失われる悲しさ、痛みを感じながらも祭りの成功に全力を尽くす覚悟だ。希望の火は消さない。「自分が生きているうちには、復活させたい」。

 特別な蘇民祭を前に、青年部員ら約30人が、男衆が身を清める瑠璃壺(るりつぼ)川(山内川)に土のうを積み、境内の清掃、小屋作りなど準備を進めた。菊地さんは「最後という実感はない。作業をしていると、『祭りが始まる』という喜びを感じる」と励んだ。

 17日は裸参りや4年ぶりの蘇民袋争奪戦を行う。今年は特に大勢の人出が見込まれるが「まずは無事に終わらせることが大事。みんなで笑って振り返れる、記憶に残る祭りにしたい」と気を引き締める。

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