「胸をえぐられるような迫真のノンフィクション」中瀬ゆかり太鼓判、科学捜査のリアルを描いた「異常殺人―科学捜査官が追い詰めたシリアルキラーたち―」

TOKYO MX(地上波9ch)の情報バラエティ生番組「5時に夢中!」(毎週月~金曜 17:00~)。1月25日(木)放送の「中瀬親方のエンタメ番付」のコーナーでは、新潮社出版部部長の中瀬ゆかりさんがおすすめのエンタメ作品を番付形式で紹介しました。

【"中瀬親方”による2024年1月のおすすめ作品】

◆関脇
コミック「いつか死ぬなら絵を売ってから」
著 ぱらり(秋田書店)第2巻まで発売中!

物語の主人公は、ネカフェ暮らしの清掃員・一希(かずき)。その日暮らしをしている一希にとって、唯一の趣味は絵を描くこと。ある日、彼の描いた絵を見た謎の青年・透(とおる)が絵の購入を名乗り出る。実は透の正体は、画家に金銭援助をしたり人脈を繋げたりするアーティストパトロンだった。

画家になることを決意した一希とパトロンの透は、価値のある絵を作り上げることができるのか……アート×ビジネスの世界に切り込んだ話題作。

中瀬親方のコメント「現代アートって謎の値付けというか、0円みたいなものでも億もする絵などいろいろな絵がありますけど、一体どういうふうに(価格が)ついているのか、美術界の裏側をユニークな視点で描いたすごく面白い漫画です。

実は、絵を高く売るために必要なのは、情熱でも上手さでもなくて、どれだけ優秀なパトロンに見出されるかということなんです。

今作では、そんなパトロンの透に見出されたことで、一希の秘められた才能が少しずつ開花していく、ヒューマンドラマとしての奥深さもありますし、画家とパトロンがタッグを組むことで、これまで0円だったアートが瞬く間に金になるマネーゲームのような疾走感と爽快感がたまらない一作になっています。

従来の美術系漫画とはまた一味違う角度で狂喜的なアートの裏側が描かれているので、ぜひその世界に触れてみてください。今、2巻まで出ているんですけど、すごく面白いところで終わっていて、次が待ち遠しいです!」

◆大関
映画「落下の解剖学」
2月23日(金・祝)より全国ロードショー

物語の舞台は、人里離れた雪積もるフランスの山荘。ある日、この家の住人・サミュエルが転落死してしまう。はじめは事故と思われていたが、次第に殺害の疑いはサミュエルの妻・サンドラへ。裁判で明らかになる夫婦の確執や死の前日の激しい言い争い。

裁判は大詰めを迎え、唯一現場にいた盲目の息子・ダニエルが証人として出廷。無実を証明しようとするが、果たして真実とは……夫の死をきっかけに、仲睦まじい夫婦の真の姿を暴く。昨年のカンヌ国際映画祭で最高賞のパルムドールを受賞したジュスティーヌ・トリエ監督が織りなす至高のヒューマンサスペンス。

中瀬親方のコメント「(本作の注目ポイントは)人間心理の複雑さで魅せる手に汗握る裁判劇ということで、事件の詳細を描き出すよりも、人間のエゴや嫉妬、嘘とかとても複雑な人間心理を描き出すことに重点を置いた作品になっています。

物語は中盤から法廷劇に変わっていくんですけど、実はこの映画はほぼ回想シーンがないんです。この演出によって証言者たちの言葉だけを頼りに真実を考察するということで観ている側も(情報源が)それしかないのでどんどん引き込まれていくような、大人の法廷ドラマに仕上がっています。

個人的には被告人側の弁護士を演じる俳優がマジでイケオジで萌えました(笑)」

◆横綱
ノンフィクション「異常殺人―科学捜査官が追い詰めたシリアルキラーたち―」
著 ポール・ホールズ、ロビン・ギャビー・フィッシャー/訳 濱野大道(新潮社)

不気味で凄惨な未解決事件と対峙し続けた科学捜査官のポール・ホールズ。彼は密かに「連続性的暴行・殺人事件」の犯人を追っていた。それこそが、十数人を殺害し、50人以上に性的暴行をしたシリアルキラー「黄金州の殺人鬼」。

およそ40年間、警察を出し抜いてきたサディストをどう炙り出したのか。DNA解析の最新技術や犯罪捜査の複雑な力学も明かす驚愕のドキュメント。

中瀬親方のコメント「科学捜査の事件現場というのは、実際は無数のハエに覆われたり、虫が出てきたり、悲惨な状態で……特に撲殺体はここではとても語れないような、生々しい悲惨な状況なんですけれども、(著者の)ポール・ホールズはそんな場面を臭いや感触まで脚色することなく、この本のなかで明かしています。

目を覆いたくなるような描写・シーンがあるんですけど、我々がまだ知らないアメリカ犯罪の底知れぬ恐ろしさと、それに立ち向かう捜査官の執念に触れることのできる未解決事件の捜査実録になっています。

著者が捜査に専念するあまり、自分の家庭自体も崩壊させていくさまも同時にリアルに描かれていて、そうした捜査官のプライベートまで犠牲を払った執念の捜査がひとつでも多くの残酷な事件を解決に導いているということを再認識すると同時に、発生する事件の3分1ぐらいは未解決で、国内で約2,000人ものシリアルキラーが活動中だという統計もあるアメリカの闇に胸をえぐられるような迫真のノンフィクションになっています。

作品の最後にデーブ・スペクターさんが7ページぐらいにわたって事件のことを解説しているんですけど、逆にそちらから先に読んでみても、どういうことなのか、全体をすごくわかりやすく紹介されています。ネットでも公開されていますので、それを読まれてみてから本編に入るのもいいかもしれません」

中瀬さんが推す3作品、ぜひチェックしてみてください! 毎月最終木曜日に発表するこのコーナー、次回2月のエンタメ番付は、2月29日(木)にお届けする予定です。お楽しみに。

※この番組の記事一覧を見る

<番組概要>
番組名:5時に夢中!
放送日時:毎週月~金 17:00~18:00 <TOKYO MX1>
「エムキャス」でも同時配信(地上波放送エリアを除く)
メインMC:垣花正(月~金)
アシスタントMC:大橋未歩(月~木)、ミッツ・マングローブ(金)
番組Webサイト: https://s.mxtv.jp/goji/
番組X(旧Twitter): @gojimu
番組Facebook:https://www.facebook.com/5jinimuchuu

© TOKYO MX