「本当に監督だけが悪いのか」クリンスマン解任、卓球事件で思い出される韓国人記者の言葉。ソン・フンミンらへの批判が“タブー視”される理由

64年間ぶりの戴冠を目ざしてアジアカップに臨んだ韓国代表は、準決勝で格下のヨルダンに0-2で完敗。ファイナルを前にまさかの敗退を喫した。

大会後には、このヨルダン戦の前日に、食事時間中の卓球を巡って、イ・ガンインら若手グループと主将のソン・フンミンらが衝突する揉め事が発生していた事実が発覚。また、最大の戦犯として批判を浴びていたユルゲン・クリンスマン監督は解任の憂き目にあった。

こうした一連の騒動を聞き、カタールでアジアカップを取材していたある韓国人記者の言葉を思い出した。

「本当に監督だけが悪いのか」

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その熟練記者は、「個の能力の高い選手を並べているだけで戦術がない」とクリンスマン監督の手腕を酷評したうえで、指揮官だけに批判が集中する韓国の世論を疑問視していた。

「(敗退直後は)選手はできる限りよく頑張った。結果が出なかったのは100%監督の責任という見方です。でも、プレーするのは選手であり、責任の60%は選手にあると思います」

同記者は、「ヨルダン戦で相手より走っていたか。ワールドカップの時と同じように走っていたか。なぜワールドカップでは走るのに、アジアカップではそうしないのか」と、選手の姿勢を指弾。そのうえで、国内では、とくにソン・フンミン、加えて海外で活躍するイ・ガンイン、ファン・ヒチャン、キム・ミンジェらがファンから批判されるケースはほとんどなく、“タブー視”されていると指摘した。

「その4人らを、自分の息子のように思っているファンは少なくありません。息子の成績がよくなかったのは、教え方の悪い先生(監督)のせい、となるんですよ。そのため、メディアも表立っての批判はあまりしないんです」

さすがに“卓球事件”以降は、主将のソン・フンミンに歯向かったイ・ガンインが非難の声に晒されているが、たしかにそれまでは、ほぼクリンスマン一人に批判の矛先が向いているような印象だった。

こうした風潮があるなかで、内紛のあったチームをどう再建するのか。クリンスマンの後任には、難しい仕事が待っている。

文●江國森(サッカーダイジェストWeb編集部)

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