〈不動産価格暴騰〉「都心部タワマン住まい夫婦 vs. 郊外戸建て住まい夫婦」それぞれの離婚に降りかかる、不動産の問題【弁護士が解説】

(※写真はイメージです/PIXTA)

夫婦になっても、3組に1組は離婚するといわれる現代。せっかくマイホーム購入したのに、その後、高額な住宅ローンを残したまま離婚になったら大変です。不動産問題にくわしい山村暢彦弁護士が、昨今の夫婦に多く見られる、不動産トラブルについて解説します。

離婚を複雑化させる「自宅不動産」の問題

不動産トラブルに注力している筆者は、離婚事件自体はほとんど対応していませんが、「離婚時の不動産問題」については、多数の相談を受けています。

家族の明るい将来を思い描いて購入した不動産も、離婚時には、財産分与の対象として清算する必要が生じます。ほとんどの場合、不動産は融資を受けて購入しており、また近年では、名義も夫婦の共有になっていることも少なくありません。このような経緯から、離婚時の不動産トラブルだけでも一定数の相談があるのが現状です。

もしも不動産が「オーバーローン状態」だったなら…?

離婚時の財産分与の場面では「不動産がアンダーローンの状態にあるのか、オーバーローンにあるのか」について、不動産会社の方に相談して目途を付けておくことが重要です。

ちなみにアンダーローンとは、住宅ローンの残高よりも家の売却金額が上回っている状態、オーバーローンとは、その逆で、住宅ローンの残高よりも家の売却金額が下回っている状態をいいます。

アンダーローンの場合は、売却諸費用の問題はあるものの、売却した場合にお金が手残りするため、売って残ったお金をわければよく、シンプルです。

しかし、オーバーローンの場合は、売却すれば住む家がなくなるうえに借金が残るため、事実上、処分が難しい状況になります。結婚生活の継続が困難であり、離婚したとしても、不動産のために関係性がきっちりと清算できない、という問題も起こるのです。

離婚する夫婦がオーバーローンの状況にある場合は、売却しても借金が残るうえ、少なくとも片方の住居として利用できる不動産もなくなるという厳しい状況から、「売却はせず、そのまま住宅ローンを払っていく」ことが多いように思います。たとえば、元妻が自宅に残って子どもと生活を続け、その上で、養育費と住宅ローンを元夫が支払うといったケースです。

この状況を法的に見ると、不動産名義を元妻へ移転したえうえで、元妻名義で住宅ローンを支払うほうが正しいのですが、元妻単独では住宅ローンの与信が足りず、住宅ローンの名義の組み換えまでできないので、実務上、このようにしてお茶を濁している方が多いというのが現場の感覚です。

離婚時の財産分与、不動産の種類で「あからさまな差」

このように、離婚に伴う財産分与にはむずかしい問題がありますが、一方で、不動産の種類によってはあからさまな明暗が生じるという、所有者にはやりきれない実情もあります。

その一例が「都内タワマン」と「郊外の戸建て」のケースです。都心の駅近マンション物件は、少なくともここ数年、価格上昇傾向が続いています。そのため、数年前に購入したマンションが値上がりしてアンダーローン状態になっているマンションも多く、場合によってはかなりの手残りが出るケースもあります。同じ立地のマンションを買い直すのは難しいかもしれませんが、住宅ローンの借金が消えるので、やや郊外の賃貸マンションに引っ越すなどすれば、双方とも綺麗に新生活が始められます。

一方、オーバーローンになりやすい傾向にあるのが郊外の戸建て住宅です。郊外戸建ての物件の特徴として、仮に土地建物あわせて5,000万円の物件であれば、土地2,000万~3,000万円、建物2,000万~3,000万円といった予算配分で建てられることが多く、戸建て建物の占める割合が多くなります。

また、居住者の自由に間取りや内装を決められるのが戸建ての魅力ですが、反面、所有者の好みが色濃く反映されるほど買い手はつきにくくなります。つまり、カスタマイズできるという魅力も、売却の場面ではデメリットになり得るということです。例えば、オーナーが趣向を凝らした高額な注文住宅などは、売却が困難になりがちです。

一方のマンションは、カスタマイズしづらい一方、画一的な間取りであることから、次の買い手も見つかりやすいといえます。

安易なマイホーム購入は、禍根を残す場合も

結婚に憧れたり、夢を持っている方の気持ちへ水を差したいわけではありませんが、いまや3組に1組が離婚するといわれる時代です。自宅不動産という高額な買い物をしたあとで離婚が決まれば、その後の人生にも多くの成約や負担が生じることは必至です。

せっかく結婚したカップルも、不動産を購入したあとで万一離婚になれば、深刻なトラブルとなるリスクがあることを、まず知っておいてください。それを踏まえたうえで、自分たちは不動産を購入するのかどうか、購入する場合はどのエリアの、どのような物件を選ぶのか、慎重に検討していただきたいと思います。

「賃貸・持ち家論争」なども永遠のテーマではありますが、もし結婚された場合でも、自宅不動産の購入は焦らず、子育てが始まり学区などの選択が始まるまで、フレキシブルに方針を変更できる賃貸で様子を見るというのも、無難な選択肢ではないかと思います。

山村 暢彦
山村法律事務所 代表弁護士

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