『おっさんずラブ』井浦新「俺を殺す気かよ。罪人め!」 田中圭の相変わらずのあざとさ

『おっさんずラブ-リターンズ-』(テレビ朝日系)第7話は最終回がもうすぐ迫っていることをどことなく感じさせる回だ。

それが武蔵(吉田鋼太郎)の余命宣告。春田(田中圭)と牧(林遣都)が幸せに満ちた結婚式を開く裏で、武蔵は人知れず深紅の血を吐き出していた。病院での診察の結果は「ストレス性の吐血」。納得できない武蔵は蝶子(大塚寧々)が付き添った上でセカンドオピニオンを受けた結果、今度は「余命一か月」と診断されてしまう。

第7話の「君たちはどう生きるのかい」に続き、第8話のタイトルは「余命一か月の家政夫」。「はるたんと~したい」で埋め尽くされたエンディングノートや最期のホームパーティーなど、予告の時点ですでに切なくなってしまう内容だ。「余命一か月」の方が誤診であることを祈りたい。

また、秋斗(田中圭)の死を巡っての和泉(井浦新)と菊之助(三浦翔平)の復讐劇が完結。菊之助は肩に銃弾をかすめ負傷するも、秋斗を殺した犯人を捕まえたことを和泉に報告する。「そうか。はあ……終わったか」と空を見上げる和泉。しかし、その代償として菊之助が傷を負ってしまった。複雑な表情を浮かべる和泉に、菊之助は「あなたはもう自由に生きていいんです」と告げる。「そんなこと急に言われてもな。この先、どうやって生きていけばいいか」と儚げな顔の和泉に、菊之助はそっと近づき、袖を掴む。そして、優しくそっと口づけをする。

驚いて目を見開く和泉。菊之助は和泉にとって「弟」のような存在であり、秋斗、そして春田の存在によって、和泉は菊之助からの好意に気づいてはいなかった。後ろめたさからか菊之助の口から咄嗟に出たのは「すいません……」という一言。伏せた視線からまっすぐ和泉を見つめ、菊之助は和泉に「ずっと好きでした」と告白する。その後の2人の様子は断片的にしか描かれていないが、返事はしないまま別れたのだろう。夕暮れを見つめる菊之助の表情には後悔が滲んでいるようにも見える。

春田と牧は、入院することになったちず(内田理央)の息子・吾郎(佐藤大空)を預かることに。痛感する子育ての大変さ。以前は子供がほしいと思っていた春田だったが、今は牧との結婚生活を大切にしたいと考えが変わっていた。第7話で描かれるのはそれぞれの家族の形。春田と牧も2人だけの家族をこれから形作っていこうとしている。「お互い健康で」と話していた矢先、ふと目にした自動販売機におしるこを見つけては買おうとする春田を「最近甘いものばっかり飲み過ぎ」と咄嗟に止める牧。その姿は、吾郎よりも手がかかるアラフォーの“ジャイアントベイビー”、春田創一くん39歳だ。

過去には菊之助が春田に言い放った「アラフォーのくせにあざとい」というセリフがあったが、第7話でもそのあざとさは無意識のうちに炸裂している。その犠牲になるのは和泉。目の前に突如現れた春田に「うひい~!」と悲鳴をあげたり、ハイタッチを求めてくる春田、サンドイッチマン看板で顔を近づけてくる春田、コピー機の詰まりで密着してくる春田。「ああー! もう! あんたさ、ダメだって! そういうの!」と声を荒げる和泉は、「俺を殺す気かよ。罪人め!」と天を仰ぐ。和泉の思い、菊之助の思いはそれぞれどこへ向かっていくのだろうか。

(文=渡辺彰浩)

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