過去問がない「情報Ⅰ」 受験対策のカギは “AI” 大学入学共通テストの新科目「情報Ⅰ」とは 学校現場も試行錯誤

2025年以降の「大学入学共通テスト」には、新たな科目「情報Ⅰ」が加わります。その情報Ⅰ、受験生や教育現場はどのように備えているのでしょうか?

1月に実施された大学入学共通テスト。受験生が緊張した面持ちで会場に集まってきました。

受験生たち
「直前期は毎日10時間ぐらい勉強をしていた。全部、自分の力を出し切って、過去一、点を取ることです」
「緊張しているけど、自分の力を発揮できるようにがんばります。お守り、いっぱい付けてきました」

この日のために準備をしてきた受験生…。志望する大学に合わせて科目を選択する大学入学共通テストです。2日間の試験では、多くの受験生が5教科7科目を選択します。その共通テストに、2025年から新科目「情報Ⅰ」が加わります。

広島市安佐南区にある安古市高校で、1年生を対象にした情報Ⅰの授業をする 山﨑美香 さんは、情報科の専任教諭です。広島県内の公立高校では、情報科は非常勤講師が多く、専任としてはまだ珍しいそうです。

山崎さんは、「情報」の授業で学ぶ知識は今の社会で必要なものだといいます。

安古市高校 情報科 山﨑美香 さん
「プログラミングやデータ分析、情報モラル等のさまざまな内容は生涯、生きていくうえでとても重要なものになりますし、今の日本に必要なことではないかなというふうに思います」

授業は実践的で生活に身近なこともあり、好きな生徒も多いようです。

高校1年生たち
「ほかの教科は字を書いたり、教科書を読んだりばっかりだけど、情報はパソコンを使えて、違った感じで楽しい」
「これからも役に立つと思うし、とてもためになる授業だと思っています」
「勉強していく中でできるようになるのがすごく楽しくて好きです」

一方で、入試の新科目追加に戸惑う生徒も…

高校1年生
「授業は楽しいんですけど、情報はあんまり好きじゃないんですよ。(Q.共通テストへの不安ってある?)あります、めっちゃあります…」

これまでも共通テストには旧課程の「情報」科目がありましたが、必須ではありませんでした。しかし2025年からは、多くの国公立大学の受験に「情報Ⅰ」が必要となります。広島大学は、前期日程ではすべての学部で必須だと発表しています。

大学入試センターは、情報Ⅰの試作問題を公開していますが、試験時間に対して解く分量が多い印象だと山﨑さんは話します。

安古市高校 情報科 山﨑美香 さん
「生徒が試作問題にチャレンジしてみたところ、かなり問題量も多かったですし、思考力を問われる問題に対して驚いていました」

情報Ⅰに受験対策で定番の「過去問」はありません。これには教育現場でも苦労があるようです。

山﨑美香 さん
「どの学校も、多くて教員が1人というところであったりしますので、テスト問題をつくったときにみなさんで意見を出し合ったりということが難しい状況にあります。他校の先生方と横の連携をとって、いろんな問題に触れられるような形で研究もしていますし」

このような状況で受験生はどう対策すればよいのでしょうか。広島県内で30校以上展開する学習塾「鷗州塾」では、AIを使った情報Ⅰの教材を導入しています。学習塾でも情報科の講師が十分ではない中、最先端の指導法で受講生を支えます。

高校2年生たち
「過去問がないので普通の教科より学習がしづらいんで…、人に教えてもらうやつより、自分のペースでできるので、やりたいペースでできます。(Q.受験科目で1番不安なのは?)やっぱ情報です」

「頭を使うのでやっぱり疲れます。国語とか数学だったら実際に仕事で使うかなと思うんですけど、情報は、プログラミングとかインターネットのしくみとか、仕事に役に立つっていう面では情報が1番だと思います。将来の夢は公務員です」

鷗州塾で25年、受験指導をする 森山泰誉 さんは、対策のコツは「教科書などの教材に毎日触れること」だといいます。

AICエデュケーション 鷗州塾 高校部 森山泰誉 部長
「ある程度、知識で点数とれる部分も多いので、他の暗記科目と同じように毎日少しでも触れる時間をつくるようにするといいと思います。1日5分10分でもいいから教科書とか」

大学入試は、3年前に「センター試験」が「共通テスト」に替わり、思考力や判断力がより問われるようになっています。受験対策のプロは、このような変化は「良い傾向」ではないかと話します。

AICエデュケーション 鷗州塾 高校部 森山泰誉 部長
「知識があれば、それが評価されるという時代もありましたけど、今はもう知識だったらネットで調べれば誰でもすぐに手に入るので、そしたらあとはその先。知識をもとにどういうふうにとらえて、どういうふうに考えて、どういうふうに対応していくかっていうところが、これからの社会では必要とされる能力になってきますので、非常にいい方向に向かっているというふうに思います」

浪人を決める受験生は戸惑いもあるようです。ただ、浪人生への経過措置として、「旧情報」科目も選択可能。「『情報』があるだけで、浪人をするかしないかを決める必要はないのでは?」と、各教育現場での声も聞こえました。

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